マルチキナーゼ阻害薬カボザンチニブが腎臓がん脳転移巣に活性を示す
・腎臓がん脳転移の患者に対して抗がん剤はほとんど効果がない
・腫瘍にある複数の標的を攻撃する薬剤であるカボザンチニブ(販売名:カボメティクス)は腎臓がん脳転移巣に高い活性を示すことが研究により明らかになった
分子標的薬は腎臓がんに由来する脳転移巣に対して有望な活性を示し、奏効率50%を達成している。予後不良であるために、医療ニーズが満たされていない状況が深刻なこれらの患者集団を対象として分子標的薬の研究が推進されている。
カボザンチニブは、チロシンキナーゼ阻害薬であり、がん細胞にある複数の標的を攻撃する。進行腎細胞(腎臓)がんの治療薬として承認されているが、脳転移を有する患者ではほとんど検証されていない。歴史的に見て、これらの患者は余命が短く介入に対する忍容性も低いという懸念があるため、臨床試験から通常は除外される。JAMA Oncology誌に掲載された新たな論文で、カボザンチニブは血液脳関門を通過して転移巣に到達する可能性が示唆され、転移巣が顕著に縮小した例もあったと統括著者のToni Choueiri医師は述べた。Choueiri医師はダナファーバーがん研究所泌尿生殖器腫瘍ランクセンターのセンター長を務めている。
腎臓がん脳転移を有する患者88人を対象とする2つのコホートで本剤の忍容性が良好であることが明らかになった。手術や放射線による局所治療を受けた患者もいるが、受けていない患者もいた。一方のコホートの生存期間中央値は15カ月であったのに対し、もう一方のコホートでは16カ月であった。
Choueiri医師によると、腎臓がんは患者の2~10%で脳に転移して深刻な病態と死亡が生じる。また、転移したがんは手術や放射線で治療されるのが一般的である。今まではスニチニブ(販売名:スーテント)のような分子標的薬による全身療法は有効性が比較的低く、免疫療法薬もあまり有効でないとされてきた。「脳以外ではよく効く薬の多くが脳転移巣ではあまり効かないのです」とChoueiri医師は言及した。
脳転移を有する腎臓がん患者の数件の症例報告でカボザンチニブが有効である可能性が示されていたため、新たな試験が推進されている。「文献があまりないことと臨床からのニーズが高いことを考慮し、国際的な多施設共同研究を活用して、腎臓がんからの脳転移を有する患者に対するカボザンチニブの活性と安全性の評価を探究しました」と研究者は説明した。
カボザンチニブによる治療後、「脳転移巣の大きさを測定したところ、通常期待される以上の奏効率が達成され、実際に転移巣が縮小した素晴らしい例もいくつかありました」とChoueiri医師は述べた。しかし、効果が持続せず、数カ月後には腫瘍が耐性を獲得したものもあると、警告した。
本試験は後ろ向き研究であった。Choueiri医師によると、カボザンチニブの前向き第2相試験がフランスで進行中で、「これではっきりしてくれればいいのですが」と述べた。
手術と放射線治療が腎臓がん脳転移巣に対する現在の標準治療であるが、Choueiri医師によると、これらの方法は必ずしもうまくいくわけではなく、脳の部位によっては使用できない場合もある。「これらの患者に全身療法という選択肢があればよい」とChoueiri医師は述べた。
脳転移を有する腎臓がん患者は他の臓器にも転移している場合がほとんどである。カボザンチニブの奏効率は頭蓋外転移巣と脳転移巣とでほとんど同じであったことが、この新たな研究によって示された。
動画はこちら: 腎臓がん:脳転移巣に活性を示す薬剤(英語)
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