ESMOバーチャル学会2021 腎がんハイライト(IKCC:国際腎がん連合)
<国際腎臓がん連合(IKCC)より許諾を得て日本語訳配信>
2021年9月16日から21日まで、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)バーチャル会議が開催された。この学会で行われた発表はESMOウェブサイトで公開されている(事前のログインが必要)。国際腎臓がん連合(IKCC)は、腎臓がん患者のケアおよび治療の最新の進歩を把握するためにバーチャル科学プログラムに参加した。
(ご注意:以下の要約は、世界中の腎臓がん患者団体のために患者支援者が作成したものです。この要約は医療監修 を受けていますが、ここで記載されている情報は、本会議で公開されたデータに基づいており、網羅的であることを意図してはおらず、また医師による診察に代わるものでもありません。ご自身のケアや治療については、必ず主治医にご相談ください。)
チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)および免疫療法の代替治療スケジュール
・ 進行/転移性腎臓がんに対するチロシンキナーゼ阻害薬治療の中断(STAR)
治療成績に影響を与えずに副作用を軽減することを目的とした「治療の中断」に関心が高まっている。この第3相試験(STAR)は、進行腎細胞がん(RCC)患者を対象に、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)治療を中断した場合、標準的な一次治療としてのチロシンキナーゼ阻害と比較して、副作用の数や生存率にどのような影響を与えるかについて調べるためにデザインされた。本試験の主要評価項目は、全生存期間と経済的評価(質調整生存年、QALY)だった。
本試験には、体の他の部位に転移した(進行あるいは転移性)腎細胞がん患者920人が参加した。患者はスニチニブ(販売名:スーテントカプセル、ファイザー社)またはパゾパニブ(販売名:ヴォトリエント錠、ノバルティスファーマ社)のいずれかを服用し、2つの治療群のいずれかに無作為に割り付けられた。
第1群の患者は、標準的なスケジュールに従って、スニチニブ(1日1錠を4週間服用、2週間休薬)またはパゾパニブ(1日1錠、休薬なし)で治療を受けた。治療効果がある限り、または患者が副作用に耐えられなくなるまで、治療を継続した。
第2群の患者は、スニチニブまたはパゾパニブを標準的な方法で24週間服用し、その後治療を中断した。この治療中断の間、定期的にコンピュータ断層撮影(CT)を行って経過を観察し、がんが再び増殖し始めた時点で治療を再開した。この場合、少なくともさらに24週間、スニチニブまたはパゾパニブによって治療し、がんが制御された状態であれば再び治療を中断することができた。治療効果がある限り、または患者が副作用に耐えられなくなるまで、治療を継続した。
全患者の半数以上(53%)が6カ月後も試験を継続していた。治療中断期間の平均は87日だった。標準的な治療を受けた患者と治療を中断した患者の全生存期間に大きな差は見られなかったが、両者にまったく差がないと言い切るには、今回のデータは十分ではない。標準的な治療を受けた患者の方が、約1カ月全生存期間が長かった。2年後の時点で、治療中断により、患者1人につき約6,954ポンド(約109万円)の経費削減につながった。治療失敗までの時間(死亡、病勢進行、または新たな全身治療の開始までの時間)、治療の効果がなくなりがんが再び増殖し始めるまでの時間(無増悪生存期間)といった副次評価項目は、いずれも治療を中断した患者群が有利だった。
全生存期間について、2つの治療群に差は見られなかった。治療の中断により副作用は減少し、患者や臨床医にとって容認できるものであった。また、標準治療と比較して大幅なコスト削減につながることが示された。
・進行腎細胞がんの一次治療におけるイピリムマブとニボルマブの代替治療スケジュール(PRISM試験)
免疫チェックポイント阻害薬であるイピリムマブ(販売名:ヤーボイ点滴静注液、ブリストル・マイヤーズスクイブ社)およびニボルマブ(販売名:オプジーボ、小野薬品工業)の併用療法は、治療歴のない、転移を有する中・高リスクの腎細胞がん(進行あるいは転移性腎細胞がん)に対する標準的な治療法(一次治療)である。この併用療法は、主にイピリムマブに起因する重大または致命的な副作用が生じる可能性がある。今回の第2相試験(PRISM試験)の目的は、この併用療法の治療スケジュールを変更することにより、患者の生存率に影響を与えることなく治療の忍容性を高めることができるかどうかを確認することである。
治療歴のない切除不能な腎細胞がん患者を2対1の割合で2つの治療群に無作為に割り当てた。第1群では、イピリムマブを12週ごとに4回投与し、併用投与の間2週ごとにニボルマブを注入する修正スケジュールで治療を行った。第2群では、イピリムマブは3週ごとに4回投与した後、ニボルマブを2週ごとに標準量投与するという標準的な治療スケジュールで治療した。病気が進行するか、患者が副作用に耐えられなくなるまで治療を受けた。
本試験には192人が参加し、そのうち3分の2以上(69%)が中・高リスクだった。イピリムマブの投与スケジュールを修正した群では、標準的なスケジュールの群と比較して重大または致命的な副作用は、有意に少なかった(それぞれ、32.8%対53.1%)。修正治療群の患者では、腸の炎症(大腸炎)、関節痛、肝機能障害、肺の炎症(肺臓炎)、下垂体の炎症(下垂体炎)が少なかった。両群の生存期間には違いがないようであったが、この点については今後の臨床試験で確認する必要があるだろう。
本試験は、ニボルマブとの併用療法でイピリムマブを3週間ごとではなく12週間ごとに投与した場合、治療に伴う重大または致命的な副作用の数が有意に減少することを示した。治療スケジュールの変更は、患者の生存期間に影響を与えなかったようにみえるが、この試験は規模が大変小さいので、この結果から確かな結論を導くことはできない。
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ニボルマブ・イピリムマブ併用試験CheckMate-214における各時点での生存率
2つの薬剤を併用すること(併用療法)は、治療歴のない、転移を有する腎細胞がん(進行あるいは転移性腎細胞がん)の患者に対する標準的な治療法である。CheckMate-214試験では、免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブとイピリムマブを中・高リスクの腎細胞がん患者に併用した場合、チロシンキナーゼ阻害薬スニチニブ単剤の治療を受けた患者よりも生存期間が長く、死亡リスクが32%減少することが明らかになった。
このポスターは、CheckMate-214試験における、治療開始後のさまざまな時点での生存率(例えば、3年経過した時点でさらに2年生存する確率)に着目した長期データを表示している。追跡期間は平均67.7カ月だった。
CheckMate-214試験では、進行した淡明細胞腎細胞がんの患者1,096人を対象に、ニボルマブ/イピリムマブ併用とスニチニブを比較した。
少なくとも5年間の追跡調査後も、ニボルマブ/イピリムマブの併用療法を受けた、進行淡明細胞腎細胞がんの患者の生存率は、スニチニブと比較して高いままだった。また、治療開始後3年生存している患者がその後の2年生存し続ける確率は、全患者で81%、中・高リスク患者で79%、低リスク患者で85%だった。この2年以内にがんが再発しない確率は、すべてのリスク群で85~90%だった。3年の時点でニボルマブ/イピリムマブ併用療法がまだ奏効している患者について、さらに2年間奏効が持続する確率は、すべての患者でやはり85~90%だった。
また、長期にわたる追跡調査期間中、新しい副作用は認められなかった。
本試験の長期追跡調査では、ニボルマブ/イピリムマブはスニチニブと比較して生存可能性が高く、この併用療法により、3年の時点で生存して治療が奏効している患者の長期生存率は増加した。
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術後補助療法としてのペムブロリズマブ
腎摘出術は腎細胞がんの標準治療であるが、腎摘出術後に再びがんが発生することがある(再発)。術後補助療法とは、手術後にがんの再発を防ぐために行う薬物療法である。
これまでに、腎細胞がんの術後補助療法として血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬やサイトカインの試験が行われたが、一貫した効果は認められなかった。
第3相KEYNOTE-564試験では、腎摘出術後の淡明細胞腎細胞がん患者の術後補助療法として、ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ、MSD社)の試験を行った。この試験では、患者を同等の患者背景の2つの群に無作為に割り振り、ペムブロリズマブまたはプラセボを約1年間投与した。治療中から治療後にわたり、がん再発について経過を観察した。
ペムブロリズマブによって、がん再発の相対リスクは有意に約3分の1(32%)減少した。2年経過後、プラセボを投与された患者の68.1%が無病だった。すなわち、プラセボ投与群の31.9%に手術後がん再発のリスクがあった。ペムブロリズマブを投与された群では77.3%が無病だったことから、術後のペムブロリズマブにより再発のリスクは約3分の1(32%)減少したことになる。全生存率に関して明確な結論を出すには、さらなる追跡調査が必要である。
少なくとも1回ペムブロリズマブまたはプラセボを投与された患者は、初回投与前、治療中数回、治療中止時、最終投与から30日後、そしてその後はがんの再発または新たな治療の開始まで年に1回、生活の質(QOL)に関する質問票に回答した。
ペムブロリズマブ投与群496人およびプラセボ投与群498人のうち、90%以上が初回のQOL質問票に回答し、1年後の時点では60%以上が回答した。
プラセボ群と比較して、ペムブロリズマブ投与群のQOLはわずかに悪化しただけであり、研究者らはこれを統計的に有意ではないと判断した。重要なのは、QOLが長期的に安定していた点である。患者からの報告によれば、ペムブロリズマブは患者にとって忍容性のある療法だった。
ペムブロリズマブは現在、進行腎細胞がん患者の最初の治療薬として、アキシチニブ(販売名:インライタ、ファイザー社)との併用が世界の複数の保健当局から承認されている。KEYNOTE-564試験の生存率データと合わせ、術後1年までペムブロリズマブの投与を受けてもQOLが大幅に低下しないことを示唆している。
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進行腎細胞がん治療のための単剤療法
・一次治療としてのペムブロリズマブ単剤療法(KEYNOTE-427)
KEYNOTE-427は、進行した淡明細胞(コホートA)および非淡明細胞(コホートB)腎細胞がんに対する一次治療としてのペムブロリズマブの有効性を検討する第2相試験である。
今回のポスター発表では、淡明細胞腎細胞がん(コホートA)患者を対象に、少なくとも41カ月(約3年半)の追跡調査を行った後の有効性と安全性の最新情報を報告した。
患者は3週間に1回ペムブロリズマブを投与され、35回投与するまで、またはがんが悪化するか、患者が副作用に耐えられなくなるまで続けられた。
本試験には110人が参加し、そのほとんどは中・高リスクの腎細胞がんだった(61.8%)。平均治療期間は8.5カ月で、試験は継続している。今回発表したデータは、患者が本試験に参加した時点から平均47カ月後に得られたものである。
3分の1以上の患者(36.4%)にペムブロリズマブによる治療が奏効し、がんが縮小した。奏効持続期間は平均19カ月で、効果を示した患者の43.5%は少なくとも2年間効果が持続したと判断された。全体では、3分の2以上(69%)の患者で腫瘍の総数が減少し、19.1%の患者で80%以上の減少が見られた。中・高リスクの患者の方が低リスク患者よりも奏効率が高いと思われた(それぞれ39.7%対31%)。
ペムブロリズマブの効果がなくなりがんが再び増殖し始めるまでの期間(無増悪生存期間)は平均7.1カ月、平均全生存期間は40.7カ月だった。患者の約20%で少なくとも30カ月の無増悪生存期間があり、約3分の2(62.6%)で全生存期間が30カ月であった。無増悪生存期間、全生存期間ともに、低リスク患者の方が、中・高リスク患者よりも良好であった。
・進行腎細胞がん患者を対象にしたカボザンチニブの実臨床(リアルワールド)研究
カボザンチニブ(カボメティクス)は、欧州において、中・高リスクの進行腎細胞がん(成人)への使用が承認されているチロシンキナーゼ阻害薬である。本剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)標的療法の治療歴がある患者または未治療の患者に使用することができる。このポスターでは、血管内皮増殖因子標的薬またはニボルマブによる治療歴を持つ進行腎細胞がん患者に対して実臨床で使用されるカボザンチニブについて、現在行われているCASSIOPE試験の中間データを紹介している。この中間解析は、50%の患者に対する3カ月以上の追跡調査を完了した時点で行われた。
本試験では、血管内皮増殖因子標的療法(主にスニチニブまたはパゾパニブ)またはニボルマブ(患者の約半数は、一次または二次治療としてニボルマブを投与されていた)による治療の後にカボザンチニブを投与された患者337人を対象とした。ほとんどの患者(約90%)は進行した淡明細胞腎細胞がんだった。
追跡調査の最初の3カ月間、ニボルマブによる治療後にカボザンチニブを投与された患者58人のうち、約40%が治療に対して部分奏効を示し、45%の病状が安定していた。残念なことに、患者の12%でがんが悪化した。ほとんどの患者(79%)は、中間追跡調査中に、カボザンチニブの用量を減らすか、しばらくの間カボザンチニブによる治療を中止するか、または治療を完全に中止するかのいずれかの方法で、カボザンチニブの用量を修正しなければならなかった。90%以上の患者が少なくとも1つは治療に伴う副作用を報告したが、いずれも対処可能だった。本治療に関連した死亡例はなかった。
本試験の中間解析により、カボザンチニブは実臨床において忍容性があること、および血管内皮増殖因子標的療法またはニボルマブによる治療歴のある患者の一部に対して有効である可能性が示唆された。
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稀な腎がんに対する有望な治療法
今年のESMOでは、非淡明細胞腎がんの治療について興味深い研究が2つ発表された。非淡明細胞腎細胞がんは腎細胞がん全体の約20〜25%を占め、一般的に淡明細胞腎細胞がんより生存期間が短い。カボザンチニブおよび免疫チェックポイント阻害薬はともに、非淡明細胞腎細胞がんの患者に有効であることが示されている。
・非淡明細胞腎細胞がんに対するペムブロリズマブ(KEYNOTE-427)
KEYNOTE-427は、淡明細胞(コホートA)および非淡明細胞(コホートB)腎細胞がんの患者を対象に、一次治療としてのペムブロリズマブを検討した第2相試験である。
このポスター発表では、非淡明細胞腎細胞がん(コホートB)を対象とした約3年間の追跡調査後の有効性と安全性の最新情報を報告した。
ペムブロリズマブは3週間ごとに投与され、35回投与されるまで、またはがんが悪化するか、患者が副作用に耐えられなくなるまで続けられた。
試験に参加した非淡明細胞腎細胞がん患者165人のうち、ほとんど(71.5%)は乳頭状腎細胞がんであり、嫌色素性腎細胞がんが 12.7%で、15.8%は分類不能型であった。平均治療期間は約7カ月、3分の1の患者が1年以上の治療を受け、15%がペムブロリズマブの35回の投与をすべて完了した。
4分の1の患者は、ペムブロリズマブによる治療が奏効し、がんが縮小した。奏効持続期間は平均29カ月だった。ペムブロリズマブの効果がなくなりがんが再び増殖し始めるまでの平均期間(無増悪生存期間)は4.2カ月、平均全生存期間は29.9カ月だった。ほとんどの患者(59.4%)で腫瘍の総数が減少し、16.4%の患者では80%以上の減少が見られた。
奏効率は組織型によって異なる。乳頭状腎細胞がん(奏効率28.8%)および分類不能型腎細胞がん(奏効率30.8%)は、嫌色素性腎細胞がん(奏効率9.5%)と比較して効果が高かった。無増悪生存期間および全生存期間の中央値は、乳頭状腎細胞がん(5.5カ月および31カ月)が、嫌色素性腎細胞がん(3.9カ月および23.5カ月)および分類不能型腎細胞がん(2.8カ月および17.6カ月)と比較して長かった。
ペムブロリズマブの新たな副作用は報告されず、患者の約70%が治療に関連した副作用を1つ以上報告した。そのうち17%は重大または致命的で、2人が治療関連の副作用で死亡した(肺炎および心停止)。
・集合管がん治療としてのカボザンチニブ(BONSAI試験)
転移のある集合管がんは、最も悪性度の高い腎細胞がんのひとつであり、研究や理解が進んでいない。有効な治療に対するニーズは満たされておらず、患者が参加できる臨床試験はほとんどない。
この単施設の第2相試験では、転移を有する集合管がんの未治療患者を対象にカボザンチニブの試験を行った。本試験では、生存期間とカボザンチニブの副作用が検討された。また、この組織型を決定づけるDNA変異の同定も試みた。
本試験には25人の患者が登録され、そのうち23人がカボザンチニブによる治療を受けた。男性が多く、平均年齢は66歳だった。転移部位はリンパ節、肺、および肝臓が多かった。平均8カ月の追跡調査が行われた。
35%の患者で治療が奏効し、がんが縮小した。完全奏効が1人、部分奏効が7人だった。治療の効果がなくなり、がんが再び増殖し始めるまでの期間(無増悪生存期間)は、平均6カ月だった。
すべての患者が少なくとも1つの軽度から中等度の副作用を報告しており、最も多かったのは、倦怠感、甲状腺活性の低下(甲状腺機能低下症)、口内炎、食欲不振、手足症候群、高血圧、下痢だった。治療に関連した重大な副作用は5人(血栓2人、高血圧2人、倦怠感1人)で、致命的な副作用や死亡例はなかった。また、患者の17%でカボザンチニブの用量を減らさなければならなかった。
DNA塩基配列決定法では、腫瘍遺伝子変異の数と カボザンチニブ の効果との関連性は認められなかった。しかし、治療効果の高い患者(無増悪生存期間が6カ月以上)には、腫瘍細胞内の特定のタンパク質の分解(脱ユビキチン化)、細胞間情報伝達、および腫瘍細胞内の増殖因子に影響を与える遺伝子変異が数多くみられた。このような手がかりによって、この型の腫瘍の増殖過程が解明できるかもしれず、新たな治療法につながる可能性がある。
本試験では、集合管がんに対するcabozantinibの中等度の有効性と受け入れられる程度の忍容性が示された。
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進行淡明細胞腎細胞がんに対するbelzutifan(MK-6482)とカボザンチニブの併用療法
腎臓がんでは、フォン・ヒッペル・リンドウ(Von Hippel-Lindau、VHL)遺伝子に変異が生じることが多く、これによって低酸素誘導因子(HIF-2α)というタンパク質が大量に生成される。その結果、がん細胞とその周辺環境に、腫瘍の成長を促進するいくつかの変化が生じる。新しいHIF-2α阻害薬、belzutifan[ベルズティファン](MK-6482)は、HIF-2αの作用を阻害する。
本発表では、現在進行中の小規模第2相試験の最新の結果が報告された。この試験では、免疫療法の治療歴がある(コホート2)または未治療の(コホート1)淡明細胞腎細胞がんを対象に、カボザンチニブと併用したbelzutifanの安全性と有効性が評価された。
コホート2には患者52人が参加し、今回の中間解析データが得られるまでの期間は平均9カ月だった。患者の半数強(54%)は1種類の免疫療法での治療歴があり、残りの46%は2種類の免疫療法で治療を受けたことがあった。がんの縮小率(奏効率)は部分奏効の9人を含めて22%だった。また、90%の患者でがんがコントロールされていた(完全奏効、部分奏効または病勢安定)。無増悪生存期間は16.8カ月で、81%の患者が1年以上生存した。
ほぼすべての患者(98%)が治療関連の副作用を経験したが、そのほとんど(92%)は軽度または中等度だった。重度の副作用としてよくみられたのは 高血圧、血中鉄分濃度の低下(貧血)、疲労感(倦怠感)だった。治療に関連した致命的な副作用や死亡例はなかった。belzutifanの副作用により治療を中止したのは6人(12%)のみ、カボザンチニブの副作用により治療を中止したのは8人(15%)だった。
結論として、belzutifanは、治療歴のある転移のある淡明細胞腎細胞がんに対してカボザンチニブとともに投与した場合、有望な抗がん作用を示した。belzutifanの有効性を詳細に把握し、腎細胞がんの治療法としてbelzutifanが果たせる役割を明確にするには、さらなる追跡データが必要である。
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低リスクの進行腎細胞がんに対する一次治療としての免疫療法とスニチニブとの比較
早い段階の腎細胞がん(病期IまたはII)では、約80~90%の人が5年以上生存するが、転移のある腎細胞がんで5年以上生存するのはわずか12%である。進行腎細胞がんの治療は困難である。これまでの研究により、免疫療法で生存期間が改善することがわかっている。
この発表では、低リスクの進行腎細胞がん患者に対する一次治療として、免疫療法とスニチニブとを比較した複数の臨床試験をまとめて分析(メタアナリシス)した結果を報告する。
評価の対象は、合計5,121人の患者が参加した6つのランダム化比較試験である。試験対象の併用免疫療法はさまざまだった。6つの試験すべてにおいて、全リスク群(低・中・高リスク)を総合するとスニチニブよりも免疫療法の生存率の方が高かった。しかし、低リスク患者では免疫療法とスニチニブの生存率に差がなかった。副作用は、これまで当該治療法で報告されたものと同様だった。
一次治療としての免疫療法は、進行腎細胞がん患者の全生存期間と無増悪生存期間を改善する。低リスクの進行腎細胞がん患者では、スニチニブと比較した場合の生存率改善はまだ確認されていない。低リスク群の患者についてより詳細に検討するためには、より多くの患者を対象に長期の追跡調査を行う試験が必要である。
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外科手術後に免疫チェックポイント阻害療法を受けた肉腫様/横紋筋肉腫様変化を伴う腎細胞がん
腫瘍量減量腎摘除術とは、がん細胞の数(腫瘍負荷)を減らし、腫瘍に起因する症状や免疫抑制を軽減し、合併症を予防することを目的として、腫瘍を外科的に摘出することである。最近の研究では、転移を有する腎細胞がん患者に対する腫瘍量減量腎摘除術を行うことに疑問を呈している。
肉腫様/横紋筋肉腫様変化を伴う転移性淡明細胞腎細胞がんは、免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)の奏効率が高い悪性度の高い腎細胞がんである。しかし、この型の腎細胞がんに対する腫瘍量減量腎摘除術の効果についてはこれまで研究されていない。このポスター発表では、肉腫様/横紋筋肉腫様変化を伴う転移性腎細胞がんに対して、腫瘍量減量腎摘除術を行った後に免疫チェックポイント阻害薬を投与した場合の生存成績を検討している。
アメリカの大規模がんセンターで、肉腫様/横紋筋肉腫様変化を伴う転移性腎細胞がんの患者の記録を調査した。患者のうち91人は、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けていた。多くの患者(79%)は、複数の部位にがんの転移があり、60%近くが中リスクだった。4分の3の患者が最初の治療として免疫チェックポイント阻害薬を投与されており、そのほとんどがニボルマブとイピリムマブ併用、または免疫チェックポイント(PD-1)阻害薬単剤による治療だった。免疫チェックポイント阻害薬治療の前または開始後に腫瘍量減量腎摘除術を受けた患者は、腎摘除術を受けていない患者に比べて、免疫チェックポイント阻害薬治療の全生存期間が長かった(それぞれ29カ月対14カ月)。
今回の調査では、腫瘍量減量腎摘除術が、免疫チェックポイント阻害薬治療を受ける肉腫様/横紋筋肉腫様変化を伴う腎細胞がん患者の生存率を向上させる可能性があり、患者によっては検討する価値があることが示唆された。本研究は後ろ向き研究であるため、結果の解釈は慎重に行う必要がある。
謝辞:Editors: Professor James Larkin (UK), Dr Andreas Schmitt (UK)
Medical Reviewers: Dr Rachel Giles (NL) , Dr Michael Jewett (CA), Dr Eric Jonasch (USA)
Medical Writer: Dr Sharon Deveson Kell (UK)
原文掲載日
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