FDAが進行腎臓がんの治療薬としてニボルマブを承認

速報

米国食品医薬品局(FDA)は本日、前治療歴を有する進行(転移性)腎細胞がん(腎臓がんの一種)患者への治療薬として、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)を承認した。

「ニボルマブは、腎細胞がんの治療において生存期間延長が実証された希少な薬剤の一つであり、このがんの患者にとって重要な治療の選択肢となります」とFDA医薬品評価・研究センター血液腫瘍製品室長のRichard Pazdur医師は述べる。腎細胞がんにおいてニボルマブ以外に全生存期間の延長を示しFDAから承認された治療薬は2007年承認のテムシロリムス(商品名:トーリセル)のみである。

腎細胞がんは、成人の腎臓がんの中でもっとも多いがん種であり、尿を作る腎臓組織に発生する。米国国立がん研究所の推計によれば、2015年米国において腎細胞がん、腎盂がんと新たに診断される患者数は6万1560人、死亡患者数は1万4080人に上るとされる。

「また、ニボルマブの適応が悪性黒色腫(メラノーマ)、非小細胞肺がんから腎細胞がんへと拡大されたことにより、免疫療法薬が広範囲にわたるがん種の患者さんに対して、どのような仕組みで治療効果をもたらすのかが確認されました」とPazdur医師は続ける。

ニボルマブは、体の免疫細胞と一部のがん細胞上に発現するタンパク質であるPD-1とPD-L1との経路を標的として作用する。この経路を遮断することで、体の免疫システムががん細胞と闘えるよう補助することがニボルマブに期待されているのである。ニボルマブは、血管新生阻害剤(がん細胞の増殖に関与する血管を阻害する治療薬)による治療歴を有する腎細胞がんの患者を投与対象としている。

本適応におけるニボルマブの安全性および有効性は、血管新生阻害剤による治療中あるいはその後に病勢が進行した進行腎細胞がんの患者821人を対象としたランダム化非盲検試験において実証された。これらの患者はニボルマブか、エベロリムス(販売名アフィニトール)と呼ばれる腎臓がん治療薬のいずれかの投与を受けた。投与開始後の平均生存期間は、ニボルマブ投与群では25カ月で、それに対しエベロリムス群では19.6カ月であった。ニボルマブによるこのような生存期間延長効果は、患者の腎細胞がんにおけるPD-L1の発現レベルに関わらず確認された。さらに、ニボルマブ群患者の21.5%において腫瘍の消失あるいは部分的縮小がみとめられ、これらの効果が平均23カ月持続した。他方エベロリムス群で認められた腫瘍の消失あるいは部分的縮小は3.9%の患者においてであり、平均持続期間は13.7カ月であった。

ニボルマブによる腎細胞がん治療において最も多くみとめられた副作用は、異常虚弱あるいはエネルギー損失(無力症)に関連する病態、咳、嘔気、発疹、呼吸困難、下痢、便秘、食欲減退、背部痛、関節痛であった。

ニボルマブはまた、「免疫性副作用」として知られる、免疫システムへの作用に起因する重篤な副作用を引き起こす可能性もある。重度の免疫性副作用には、肺、大腸、肝臓、腎臓、ホルモン分泌腺、脳などの健康な臓器への障害があげられる。

FDAはニボルマブの承認申請について、”breakthrough therapy designation”(画期的治療薬指定)、”fast track designation”(優先承認審査薬指定)、”priority review status”(優先審査認定)の適用を認めた。これらはそれぞれ、重篤または生命を脅かす病態にある患者への有益性が見込まれるという観点から、特定の新薬の開発・審査に対し促進・迅速化を図る制度である。

ニボルマブはニュージャージー州プリンストンを本拠とするブリストル・マイヤーズスクイブ社、テムシロリムスはニューヨーク州ニューヨークを本拠とするファイザー社、エベロリムスはニュージャージー州イーストハノーバーのノバルティスファーマ社が販売している。

翻訳担当者 八木佐和子

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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