ニボルマブが進行腎臓がん患者の全生存期間を延長-CheckMate-025試験結果
議題:泌尿生殖器がん/腫瘍免疫学
分子標的薬であるニボルマブが初回治療後に増悪した進行腎臓がん患者の生存期間を有意に延長したことが、9月26日(土)の欧州がん学会2015[1]での発表と、同時に掲載されたNew England Journal of Medicine誌 [2]の結果から示された。
CheckMate-025第3相臨床試験は、淡明細胞型腎臓がん(多く見られるタイプの腎臓がん)患者において、ニボルマブを標準的治療薬エベロリムスと比較する試験であり、免疫チェックポイント阻害剤(腫瘍を認識・攻撃する免疫系の能力に対して重要な役割を果たす分子を標的とする薬剤)によってこうした患者の全生存期間が延長したことを示す最初の試験である。ニボルマブは、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)ともう1つの分子であるプログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)との間の相互作用を阻害する。しかし、生存期間の利益は腫瘍内のPD-L1発現レベルとは無関係に認められた。
腎臓がん患者の治療法を変えると予測される2つの研究の最新発表の1つにおいて、Padmanee Sharma氏(免疫療法プラットフォーム科学部門長兼テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター(米国)泌尿生殖器内科腫瘍学・免疫学部門教授)は、欧州がん学会2015のプレジデンシャル・セッションでこのように発表した。「CheckMate-025試験は、前治療が奏効しなくなった後に免疫チェックポイント阻害剤を使用する免疫療法が、現時点で治療選択肢が限られている進行腎臓がん患者の全生存期間を延長させた最初にして唯一の臨床試験です」。ニボルマブ投与患者の全生存期間中央値は25.0カ月で、エベロリムス投与患者では19.6カ月であることが本解析結果から示された。
「重要なことですが、エベロリムスより多くの患者で、ニボルマブに反応して腫瘍が縮小したことが本解析データから示されました。客観的奏効率はニボルマブ投与患者で25.0%、エベロリムス投与患者で5.4%でした。部分奏効率はニボルマブ投与患者で24.1%、エベロリムス投与患者で4.9%でした。完全奏効率はニボルマブ投与患者で1%、エベロリムス投与患者で0.5%でした。そして、他の多くの患者、すなわち、ニボルマブ投与患者の34.4%とエベロリムス投与患者の55.2%は安定(腫瘍が増殖しない)を示しました」[3]。
「本試験結果は重要であり、患者にとっても医療従事者にとっても臨床的に有意義であるため、その結果を見ることは刺激的です。本試験結果は前治療を受けている間に増悪した進行腎臓がん患者の治療法を変えるでしょう。私たちはニボルマブがいつ臨床現場で使用されるようになるのか、現時点で推測することはできませんが、本試験から、こうした患者に対する標準的治療としてニボルマブが迅速に承認されることを期待しています」。
ニボルマブ投与患者ではエベロリムスよりも重篤な(グレード3~4)副作用が少なかった(19%対37%)。最も頻度が高い副作用は、ニボルマブ投与患者で疲労(33%)、悪心(14%)、および重度のかゆみ(14%)であり、エベロリムス投与患者で疲労(34%)、口内炎(30%)、および貧血(24%)であった。治療関連死は、ニボルマブ投与患者で0人、エベロリムス投与患者で2人であった。
国際第3相臨床試験であるCheckMate-025試験には、2012年10月~2014年3月に、治療歴がある進行腎淡明細胞がん患者821人が登録された[4]。登録患者は、2週間間隔でのニボルマブ3 mg/kgの点滴静脈内投与(ニボルマブ投与患者)とエベロリムス1日1回10 mg経口投与(エベロリムス投与患者)にランダムに割り付けられた。登録患者は最低15カ月間追跡調査を受けた。また、欧州がん学会2015で発表された本解析におけるデータカットオフは2015年6月で、その時点でニボルマブ投与患者の17%とエベロリムス投与患者の7%が治療を継続していた。ニボルマブ投与患者の45%とエベロリムス投与患者の54%で死亡が確認され、あらゆる原因による死亡リスクはニボルマブ投与患者で27%減少した。
CheckMate-025試験は、ニボルマブ投与患者の全生存期間の延長が示されたことで、2015年7月に早期終了した。参加患者にはニボルマブ投与を続行する機会が与えられ、エベロリムス投与患者には、エベロリムスからニボルマブに変更する機会が与えられた。
Sharma教授は欧州がん学会2015で次のように述べた。「腎細胞がんは成人で最も頻度が高い腎臓がんで、毎年世界中で338,000人が腎細胞がんと新たに診断され、100,000人以上が死亡します。世界的には、進行腎臓がんと診断された患者の5年生存率は12.1%で、より効果的な治療法がこうした患者に心底必要とされています」。
「PD-L1の発現とは無関係に全生存期間がニボルマブ投与患者で延長したという結果から、PD-L1の発現はどの患者がニボルマブに反応するのか、また、ニボルマブを患者に投与するべきかどうかの判定に使用するべきではないことが示唆されます」とSharma氏は述べた。
「PD-L1は、進展する免疫応答の結果として時間とともに変化する動的バイオマーカーです。したがって、治療前の腫瘍標本内のPD-L1が実際のPD-L1発現量、および治療に対する反応との相関を示さないことは、当然のことです。治療中の患者から採取された腫瘍標本は治療前に採取されたものと異なり、PD-L1の発現が他の免疫応答のバイオマーカーと同様に、治療に対する反応と相関するだろうと私は期待します」。
欧州がん学会2015科学共同議長のPeter Naredi教授は、CheckMate-025試験に参加していないが、以下のようにコメントした。「私はSharma氏と同様、ウィーンでの本学会で耳にしているニュースに心躍ります。同じプレジデンシャル・セッションで、臨床を変えるランダム化第3相試験2件が発表されています。私たちは現在、早期治療を受けている間に増悪した進行腎臓がん患者に対する、いずれも作用機序が異なる2つの新規治療選択肢を得たのです。Sharma氏と世界各国の共同研究者はこの場でニボルマブ投与腎臓がん患者の生存期間が明らかに延長したことを示しています」。
本プレジデンシャル・セッションにおけるもう1つの最新発表はToni Choueiri教授によるもので、進行腎淡明細胞がんに対するcabozantinib[カボザンチニブ]とエベロリムスを比較するMETEORランダム化第3相試験の結果を発表する予定である。
抄録番号:LBA 3。「CheckMate-025試験:進行腎細胞がんに対し、ニボルマブとエベロリムスを比較するランダム化オープンラベル第3相試験」。 プレジデンシャル・セッションI,14:30~16:40(中央ヨーロッパ夏時間),D1ホール,(発表時間:16:10)。
[1]欧州がん学会(ECC)は、第18回欧州がん学会(ECCO)兼第40回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のことである。
[2]「Nivolumab versus everolimus in advanced renal cell carcinoma」, by Robert Motzer et al. doi: 10.1056/NEJMoa1510665。電子版:www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1510665
[3]客観的奏効率は、ランダム化済患者数で割られた治療に完全奏効または部分奏効した患者の数である。
[4]CheckMate-025試験には以下の国の患者が募集された。オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、英国、チェコ、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、ギリシャ、ルーマニア、ノルウェー、ロシア、米国、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、日本、およびオーストラリア。
[5]CheckMate-025試験は、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社による資金提供を受けた。
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