転座腎細胞がんの新たな患者協働プロジェクトが始動

腎臓がんの中でも希少で侵攻性の高い転座腎細胞がん(tRCC[translocation renal cell carcinoma])に焦点を当てた新たな患者協働型研究プロジェクト、Count Me In (カウント・ミー・イン、「私を参加させて」の意味)が始動する。本プロジェクトは、ダナファーバーがん研究所と、マサチューセッツ工科大学(MIT)/ハーバード大学の共同研究施設であるブロード研究所が主導する。この取り組みでは、転座腎細胞がん患者と連携して、転座腎細胞がんに関する研究を加速させるために患者独自の健康データを研究者と共有できるようにする。

転座腎細胞がんは、転座と呼ばれる、染色体の一部が入れ替わったり並べ替えられたりする特定の遺伝的変化によって引き起こされるユニークなタイプの腎臓がんである。転座腎細胞がんはあらゆる年齢層に罹患するが、最も一般的に診断されるのは子供と若年成人である。その希少性から、転座腎細胞がんに関する研究は歴史的に限られており、患者や家族には治療の選択肢が少なく、多くの未解決の疑問が残されている。

転座腎細胞がんプロジェクトは、患者、介護者、支援者と直接提携し、このまれな疾患に対する理解を深め、新たな治療法につながる可能性のある新たな洞察を生み出すことで、こうした課題に取り組むことを目的としている。

参加者は、Count Me Inの安全なオンラインネットワークを通じて、病歴、個人的な経験、生物学的サンプルを共有することができる。参加者のプライバシーと安全性を確保するため、すべてのデータは研究者と共有される前に非特定化される。ブロード研究所とのつながりを活用し、研究チームはブロード臨床研究所の最先端のゲノム配列決定と高度なツールを利用して、転座腎細胞がんを分子レベルで研究し、意義のある発見を推進する。

「私たちの使命は、すべての患者に研究プロセスにおいて自らの声を共有する機会を提供することで、転座腎細胞がんのような希少がんの研究方法を再定義することです」と、Count Me Inの研究業務責任者であるDiane Diehl氏は語る。「転座腎細胞がん患者の方々、および専門家である医師や他の人々と直接協力し、Count Me Inのユニークな患者参加型アプローチを適用することで、この困難な病気に罹患している人々のために、より良い治療とより良いケアへの道を開く重要な洞察を明らかにしたいと考えています」。

「転座腎細胞がんは、腎臓がんの中でも希少で侵攻性が高く、治療に大きな困難をもたらします」と、ダナファーバーがん研究所の医師であり、ハーバード大学医学部助教授のSrinivas Viswanathan氏は述べる。「Count Me Inと協同することで、十分に研究されていないこのがんの影響を受けている患者や家族と直接関わることができるまたとない機会を得ました。このコラボレーションは、この病気に対する理解を深め、罹患者の転帰を改善する可能性のある、より効果的な新しい治療法への道を開く助けとなるでしょう」。

「Count Me Inの患者主導型研究モデルにより、転座腎細胞がんのような希少がんへのアプローチ方法を変革することができます」と、ダナファーバー/ボストン小児血液疾患・がんセンターの研究所医師兼プログラムリーダー(腎臓領域)であり、ハーバード大学医学部小児科助教授のElizabeth Mullen氏は語る。「遺伝学的、臨床的洞察を含む多様な患者データへのアクセスが増えることは、このまれな疾患をより深く理解しようとする研究コミュニティにとって非常に貴重なことです。患者データは、転座腎細胞がんの生理学をよりよく理解し、個々の患者さんに合わせて治療法を調整し、新しい治療法を模索するのに役立ちます。この困難ながんに罹患している人々に、科学的進歩と新たな希望の両方をもたらします」。

転座腎細胞がんプロジェクトは、米国およびカナダで転座腎細胞がんと診断された人なら誰でも利用可能である。患者またはその介護者は、tRCCProject.org にアクセスして詳細を確認し、登録することで、研究を前進させる取り組みに参加することができる。

  • 監訳 高光恵美(生化学、遺伝子解析)
  • 記事担当者 加藤千恵
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  • 原文掲載日 2025/3/11

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