スニチニブのFDA承認
原文 2011/05/24更新
商標名:Sutent®
・膵神経内分泌腫瘍への承認(2011/05/20)
・腎臓癌(2007/02/05)
・消化管間質腫瘍への承認(2006/01/26)
臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報はFull prescribing information(英文) で参照できます。
膵神経内分泌腫瘍
米国食品医薬品局(FDA)は2011年5月20日、切除不能な局所進行性または転移性の進行性高分化型膵神経内分泌腫瘍(pNET)患者の治療薬としてスニチニブ(スーテント®カプセル、ファイザー社製造)を承認しました。
この承認は、切除不能な局所進行性または転移性の高分化型膵神経内分泌腫瘍(pNET)患者を対象としてスニチニブ37.5mg/日を連日経口投与する群(n=86)とプラセボ群(n=85)を比較した無作為化対照試験に基づくものでした。試験ではソマトスタチンアナログによる治療が認められました。患者の平均年齢は57歳で、そのうち59%が白人、48%が男性でした。
試験の主要評価項目は、試験責任医師によって評価された無増悪生存期間(PFS)でした。放射線学的進行が確認された後、プラセボ群の患者はスニチニブの投与を受けることを許可されました。プラセボ群の患者85人のうち69%が、引き続きスニチニブの投与を受けました。副次的評価項目には、全生存期間(OS)および全奏効率(ORR)などがありました。事前に設定された中間解析の前に、独立データ評価委員会によって試験の中止が推奨されました。
無増悪生存期間中央値はスニチニブ群で10.2カ月であったのに対し、プラセボ群では5.4カ月でした(HR 0.427 (95 %CI: 0.271、0.673)、 p 0.001)。ソマトスタチンアナログによる治療をこれまでに受けた患者をはじめ、さまざまなサブグループで無増悪生存期間の延長がみられました。全生存期間データは解析時に十分ではなく、完全奏効はみられませんでした。
二重盲検試験の段階でスニチニブの投与を受けた患者83人を対象として安全性が評価されました。最も頻繁に(少なくとも30%に)みられたグレード1~4の有害事象には下痢、悪心、無力感、嘔吐および疲労感などがありました。最も頻繁に(少なくとも5%に)みられたグレード3~4の有害事象には好中球減少症、高血圧、手掌足底紅斑異感覚症候群および白血球減少症などがありました。
スニチニブ群の患者5人とプラセボ群の患者9人が試験期間中に死亡しました。試験中に死亡したスニチニブ群の患者5人のうち1人は心不全のため、4人は疾患進行のため死亡しました。スニチニブ群に新たに追加された患者の1人が心不全のため試験対象から外され、2カ月後に死亡しました。
有害事象によって、スニチニブ群の22%およびプラセボ群の17%で治療を永久的に中止しました。スニチニブ群の61%およびプラセボ群の23%で投与の遅延や投与量の減量が必要になりました。
スニチニブの推奨投与量および投与スケジュールは、37.5mg/日の連日経口投与です。重篤な、または耐えられない有害事象がみられる患者では、一時的に投与量を25mg/日にまで減量するか投与を中断する必要があります。
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寺本瑞樹 訳
榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)監修
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進行性腎臓癌
2006年1月26日、FDAは、部分奏功率および反応持続期間に基づき、進行性(転移)腎細胞癌(腎臓癌)の治療について、スニチニブ(スーテント®カプセル、ファイザー社製造)を迅速承認規制下で承認しました。2007年2月2日、FDAは進行性腎臓癌について、無増悪生存の改善が確認されたことを受け、スニチニブの承認を迅速承認から通常の承認に変更しました。
多施設ランダム化国際試験により、進行性腎臓癌の患者において有効性が示されました。当該試験には未治療の転移性腎細胞癌患者750人が登録されました。患者はスニチニブあるいはインターフェロン-α(IFN-α)のいずれかの投与に無作為化されました。
スニチニブは開始用量50mgで1日1回4週間経口投与し、続く2週間を無治療期間としました。IFN-αは1週間中に連続しない3日間の皮下投与とし、第1週は1投与につき開始用量3 MU、第2週は1投与につき6 MU、以降は1投与につき9 MUとしました。
両投与群のベースライン時における患者背景均衡していました。患者は組織型が明細胞型であることが求められました。90%の患者は以前に腎摘出術を受けていました。疾患部位数の中央値は2でした。多くみられた転移部位は肺、リンパ節、骨および肝臓でした。
有効性データは、独立データ評価員会による無増悪生存の中間解析に基づくものでした。スニチニブ投与群では増悪/死亡が96人(25.6%)、対してIFN-α投与群では154人(41.1%)でした。無増悪生存の中央値はスニチニブ投与群で47.3週間(95%CI 42.6、50.7)、およびIFN-α投与群では22.0週間(95%CI 16.4、24.0)でした。ハザード比は0.415(95%CI 0.320、0.539、p< 0.000001)でした。
客観的奏功率は、スニチニブ群において27.5%(95%CI 23.0%、32.3%)であり、比較してIFN-α投与群では5.3%(95%CI 3.3%、8.1%)でした。第2回中間解析の時点では、全生存のデータは十分ではありませんでした。
治療下で発現した、スニチニブ群でより頻繁に認められた有害事象は、胃腸に関連する事象(下痢、悪心、粘膜炎、嘔吐、消化不良、腹痛、胃食道逆流、口腔痛、舌痛、鼓腸)、出血、高血圧、皮膚事象(発疹、皮膚変色、皮膚乾燥および毛髪変色)、手足症候群、下肢痛、心駆出率低下および末梢浮腫などでした。また、スニチニブ投与群の患者に、治療下で発現した甲状腺機能低下がより高頻度でみられました。
グレード3/4の有害事象はスニチニブ群においてより頻繁に認められ、高血圧、下痢、手足症候群、悪心、嘔吐、粘膜炎、出血などでした。
スニチニブ群においてより高頻度で認められたグレード3/4の検査異常は、血液学的異常(好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症)、リパーゼ増加、アミラーゼ増加、低ナトリウム血症、高尿酸血症、高ビリルビン血症などでした。
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下村郁子 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修
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消化管間質腫瘍
2006年1月26日、米国食品医薬品局(FDA)はメシル酸イマチニブ(グリベック®)投与中に病勢が進行した、あるいはメシル酸イマチニブに不耐性の患者の消化管間質腫瘍(GIST)に対する治療として、スニチニブ(スーテント®カプセル、ファイザー社製造)を承認しました。
イマチニブ同様、スニチニブは、癌の増殖や血液供給に関係するチロシンキナーゼに結合して阻害する、分子標的治療剤です。しかし、スニチニブはイマチニブとは異なった、より多くのキナーゼに結合します。
スニチニブのGIST患者に対する臨床効果と安全性は、イマチニブ投与中に増悪が認められたか、イマチニブに不耐性を示した患者を対象に、プラセボ対照無作為化二重盲検試験で検証されました。主要評価項目は無進行期間でした。
治療への無作為化は2:1に行われました。すなわち、スニチニブ治療群が207人、プラセボ群が105人でした。両群において、治療開始前の年齢、性別、人種、一般状態(Performance Status, PS)に差はありませんでした。登録された多くの患者(両群とも96%)は、イマチニブによる治療中あるいは終了後6ヶ月以内に病勢が進行していました。登録患者のうち、約30%が65歳以上、98%上がECOG(米国東海岸癌臨床試験グループ)によるPSスコアが0か1でした。
試験計画で設定された臨床効果と安全性の中間解析が、149人の無進行期間が求められた時点で行われました。スニチニブ治療群において有意な無進行期間の延長(中央値スニチニブ群27週間対プラセボ群6週間、p<0.0001、ハザード比0.33)と無病生存の改善(中央値スニチニブ群24週間対プラセボ群6週間、p<0.0001、ハザード比0.33)が観察されました。延命効果は、まだまとまっていません。
また、イマチニブ投与中に増悪が認められたか、イマチニブに不耐性を示したGIST患者を対象にした単独治療群の臨床試験が、第2相試験における推奨レジメンが確定した後に55人を登録して行われました。この試験では、5人の患者に部分奏功が認められました(奏功率9.1%、95%CI 3.0-20.0)。
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こばやし 訳
榎本 裕(泌尿器科)監修
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。 FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。 |
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