体幹部定位放射線治療(SBRT)が早期腎臓がんの重要な治療法となる可能性
米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ
一部の腎臓がん患者にとって、体幹部定位放射線治療(SBRT)と呼ばれる治療法は、手術が選択できない場合に非常に有効な治療法と考えられることが臨床試験の最新知見からわかった。
FASTRACK IIと呼ばれるこの試験には、限局性腎臓がん、つまり腎臓に腫瘍を1つのみ有する人で、主に他の健康上の問題のために、その腫瘍を切除する手術を受けられない人のみが登録された。
試験に参加した70人全員がSBRTで腫瘍の治療を受け、その後、数年間、腫瘍が再発したと診断された人はおらず、腎臓がんで死亡した人もいなかった。1人の患者のみ、治療から3年後に体内の別の部位にがんが再発した。
10月1日、米国放射線腫瘍学会(ASTRO)年次総会で報告された結果によると、SBRTによる治療は安全と考えられ、特に患者の腎機能に特筆すべき影響はなかった。
FASTRACK IIの結果は、「極めて例外的で予想外でした」と、本試験の臨床試験責任医師であるShankar Siva医学博士(M.B.B.S)(オーストラリア、メルボルン、Peter MacCallum がんセンター)は述べる。
手術ができない限局性腎臓がん患者に対する他の治療法は、極度の熱や低温で腫瘍を死滅させる 「アブレーション」技術か、がんが悪化していないかを定期的に観察することだけであるとSiva博士はASTROのプレスブリーフィングで説明した。
しかし、アブレーションは4 cm以上の大きな腫瘍には効果がなく、本臨床試験では4cm以上の腫瘍の患者が多かった。また、小さな腫瘍に対しては、しばしばサーベイランスと呼ばれる定期的なモニタリングが勧められることもある。
一旦手術が除外されると、腫瘍が大きい人にとっては「他に根治的治療の選択肢はありません」と同氏は述べた。したがって、特に手術が受けられない人が大きな腫瘍を有する場合には、SBRTが選択されるべき治療法であることが、この試験結果から示唆されると続けた。
他の専門家も同意した。
広く採用されているがん治療のガイドラインには、手術を受けられない患者の選択肢としてSBRTがすでに含まれている、とのRohann Correa医師(カナダ、オンタリオ州London Regional Cancer Program)はブリーフィングで述べた。
この試験結果は「その推奨を裏付けるエビデンスの質を高めるものでしかない」とCorrea医師は述べた。
手術が不可能な場合の選択肢は何か
最も一般的な腎臓がんは、腎細胞がんと呼ばれる。この腎臓がんと診断される人の多くは、単発の腫瘍を有し、大きさは4 cm未満から10 cm程度である。
限局性腎臓がんに対する最も一般的な治療法は手術である、と腎臓がん治療を専門とするSaby George医師(ニューヨーク州バッファロー、ロズウェルパーク総合がんセンター)は説明する。手術によって多くの患者の疾患治癒が可能であるとGeorge医師は述べた。
腫瘍が小さい場合、位置などの要因にもよるが、通常、腎部分切除術と呼ばれる手術が行われ、腫瘍を含む腎臓の一部のみを切除する。腫瘍が小さくない場合は、根治的腎摘除術として知られる腎臓全摘出術が行われる。
しかし、限局性腎臓がんと診断された人の中には、手術を受けられない人も少数ながらいる。多くの場合、肥満、心臓病、慢性腎臓病など、他の健康状態によって手術が危険であったり、実施不可能であったりするためである。
2000年代初頭、SBRTは手術を受けられない人のための代替手段として登場した。
この技術では、医師が腎臓の腫瘍を正確にマッピングするために、患者はいくつかの画像診断を受ける必要がある。そのマッピングに基づいて放射線腫瘍医が治療計画を立て、複数の放射線ビームを腫瘍に直接照射する。すべての処置は非侵襲的である。
超高温または超低温で腫瘍を死滅させる方法(熱アブレーション)は、腫瘍が小さい場合には有効であるとSiva博士は述べた。しかし、SBRTとは異なり、アブレーションは侵襲的であり、プローブを皮膚の開口部から腫瘍に挿入する必要があると彼は指摘した。また、どちらのアブレーションも、より大きな腫瘍や腫瘍が腎臓の奥深くにある場合にはあまり有効ではない。
SBRTの小規模臨床試験では、手術が適応とならない人々に対する治療として、概ね良好な結果が得られているが、複数の施設で実施される大規模臨床試験(治療が実際にどの程度有効であるかについて、より明確なエビデンスを得ることができる)は、まだ実施されていなかった。
Siva博士らは、このギャップを埋める目的でFASTRACK II試験を開始した。
腎臓腫瘍を抑制し、安全性の懸念はない
FASTRACK II 試験は主にオーストラリアで実施された。参加した70人の平均年齢は77歳で、その多くは臨床的に肥満であり、他の疾患を有していた。約3分の1は4 cm以下の腫瘍を有し、それ以外の参加者は1人を除いて4〜9 cmの腫瘍を有していた(囲み内を参照)。
限局性腎臓がんの病期分類 限局性腎臓がんと診断された場合、腫瘍の大きさに基づいて病期分類を行なう。腫瘍ステージは、腫瘍医が治療選択肢を決定するのに役立つ。腫瘍ステージには以下のものがある。 T1a: 4cm以下 T1b: 4cm超かつ7cm以下 T2a: 7cm超かつ10cm以下 |
「(この試験の)腫瘍は、熱アブレーションで根治的に治療できるものよりも大きく、難治性でした」とSiva博士は述べた。
参加者は7つの医療機関のいずれかで治療を受け、患者が最も効果的な放射線量と質の高い治療を受けられるように措置が講じられたと彼は説明した。
腫瘍が小さい参加者は1回の治療で済んだとSiva博士は述べた。「治療時間は1時間程度で、自分で車を運転して来院することができました」。腫瘍が大きい人は2週間にわたって3回の治療を受けた。
試験参加者の追跡期間は中央値43カ月であった。試験中に腎臓腫瘍が再発したり、がんで死亡した参加者はいなかった(治療とは関連のない他の原因で数人が死亡した)。
SBRT治療後5年時点で、がんが体内の他の部位に転移再発した形跡があったのは2人のみであった。
SBRTやアブレーションで特に懸念される副作用は、腎機能の低下である。特に腎臓に基礎疾患のある人の場合、腎臓の機能が著しく低下すると、残りの人生を人工透析をして過ごさなければならなくなる可能性がある。
試験に参加したほぼすべての患者は、治療開始時点で腎機能が低下していた。しかし、1人を除いて、全員がそれ以上の低下はわずかであった。Siva博士によれば、1人は人工透析を受けなければならなかったが、腫瘍が特に大きく、腎機能不良の状態で試験に登録した患者であった。
次の臨床試験: SBRT対手術?
FASTRACK II 試験は「重要なマイルストーン(中間目標地点)です」と、SBRTなどの治療を専門とするCorrea医師は述べる。「この結果は、手術を受けられない限局性腎臓がん患者に対してSBRTを強く検討すべきことを示しています」。
非侵襲的であることに加え、その利便性、患者がSBRTを受けるために他のほとんどの薬剤の服用を中止する必要がないという事実を総合して考えれば、SBRTは非常に魅力的である。
「これらは私の患者にとって重要な要素です」と彼はプレスブリーフィングで述べた。
George医師は、この研究結果が患者の治療に影響を与えることに同意した。「この結果はすばらしい」と彼は述べた。
腫瘍が7 cm以下の人に関しては、腫瘍の再発抑制や腎機能への影響などの転帰の点で、試験結果は「すでに外科手術の数字に勝っています」と同氏は続けた。
しかし、FASTRACK IIは以前の試験より規模が大きいとはいえ、まだ比較的小規模であり、SBRTは他の治療法と直接比較されておらず、比較試験は通常、治療の有効性を判断するためのゴールドスタンダードと考えられている。したがって、よりエビデンスの高い試験を実施する必要があると同氏は述べた。
周辺臓器への長期的な損傷の有無など、この治療の安全性に関するデータをさらに検討することが重要だろうとGeorge医師は続けた。
また、SBRTと手術を比較する臨床試験を実施するべきというSiva博士の意見にも同意した。
Siva 博士によれば、彼らは現在、世界中のがんセンターが参加する可能性の高い、上記のような臨床試験をデザインしているという。
他の部位に転移した腎臓がんの治療にも、SBRTの可能性があるとGeorge医師は述べた。
たとえば、転移性腎臓がん患者の多くは、現在免疫療法を受けている。このような患者の中には、腎臓に腫瘍があり、手術で切除できるかもしれないが、手術が合併症を引き起こし、免疫療法や他の治療を受けることができなくなる可能性がある人がいる。
そのため、SBRTがこのような患者の選択肢になり得るかどうかを検討する試験を行うのはよいことだと同氏は述べた。
- 監訳 河村光栄(放射線科/京都桂病院)
- 翻訳担当者 吉田加奈子
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- 原文掲載日 2023/10/20
【この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】
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