NCIの研究から、スニチニブが腎細胞癌に有効であることが判明

NCIニュースメモ

転移性腎細胞癌(頻度の高い腎癌)の患者を対象とした臨床試験によると、スニチニブ(スーテント)投与後も腫瘍増殖は早まらないことが分かり、いくつかの動物実験でみられた結果とは異なった。スニチニブは血管増殖の抑制を目的とした数種類の薬剤(市販後、試験段階を問わず)のうちの1つである。これまで、このような薬剤により誘発された腫瘍血管の変化は腫瘍増殖の促進や癌の進展につながるのか、という議論が動物実験をもとになされていた。本研究はTito Fojo医学博士(NCI腫瘍内科部門、実験治療室長)の研究班が行い、それが事実と違うことが分かった。研究結果は2013年2月7日付のCell Reports誌に掲載されている。

サイズが小さく比較的早期の癌を調べるマウスモデルを使用することは、腫瘍が数センチ規模にまで大きくなることの多い人体で調べるよりもはるかに難しいと考えられる。研究班はスニチニブにより腫瘍増殖が早まるのかを調べるため、腎癌患者を対象としたスニチニブとインターフェロンαを比較検討するランダム化第3相試験のデータを分析した。新しい有効性評価法を使用したところ、スニチニブにより腫瘍の増殖速度が低下するのと同時に生存率も改善し、投薬終了後も腫瘍動態に悪影響を与える様子も見られないことが分かった。研究結果から、動物モデルから考えられた懸念はスニチニブ投与中の患者には当てはまらず、また類似薬を投与中の患者にも当てはまらないであろうと考えられるが、同時にさらなる研究が必要であることも言える。

(キャプション)スニチニブの分子モデル

翻訳担当者 渋谷武道

監修 榎本 裕(泌尿器科/東京大学医学部付属病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

腎臓がんに関連する記事

個別化がんワクチンNeoVaxはステージIIIおよびIVの腎臓がんに有望の画像

個別化がんワクチンNeoVaxはステージIIIおよびIVの腎臓がんに有望

ダナファーバーがん研究所の研究者らは、ステージIIIまたはIVの淡明細胞型腎細胞がん(腎臓がんの一種)の治療を受けている臨床試験の患者9人全員が、個別化がんワクチン投与開始後に抗がん免...
米FDAがニボルマブ+ヒアルロニダーゼ-nvhy皮下注を承認の画像

米FDAがニボルマブ+ヒアルロニダーゼ-nvhy皮下注を承認

2024年12月27日、米国食品医薬品局(FDA)は、ニボルマブ(販売名:オプジーボ、Bristol Myers Squibb社)の承認済みの成人固形がん適応症に対して、単独療法、ニボ...
進行腎がんの一次治療にベルズチファン新併用療法が引き続き検討されるの画像

進行腎がんの一次治療にベルズチファン新併用療法が引き続き検討される

研究概要研究タイトル:進行淡明細胞型腎細胞がん患者に対する一次治療としてのbelzutifan[ベルズチファン]+カボザンチニブ併用療法(LITESPARK-003試験):非盲...
進行腎がんに対するベルズチファンの承認を支持する極めて重要な試験結果の画像

進行腎がんに対するベルズチファンの承認を支持する極めて重要な試験結果

研究タイトル進行腎細胞がんに対するベルズチファンとエベロリムスの比較掲載紙New England Journal of Medicine誌 2024年8月22日...