Temsirolimus(テムシロリムス・CCI-779)/スーテント[Sutent]およびテムシロリムス[Temsirolimus]を用いた第一選択治療により転移性腎細胞癌の治療成績に改善が認められた第3相試験
キャンサーコンサルタンツ
2006年6月
2006年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)総会で報告された2件の第3相臨床試験の結果によれば、Sutent(sunitinib malate)を用いた第一選択治療により転移性腎細胞癌(RCC)患者の無進行生存期間が有意に改善し、Temsirolimusを用いた第一選択治療により予後不良の転移性RCC患者の全生存期間および無進行期間が改善したことがわかった。この2件の結果は、転移性RCCの治療の大きな進展を告げるものとして歓迎を受けた。
Sutentは、fms様チロシンキナーゼ3(Fit3)、Kit、血管内皮増殖因子(VEGF)および血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に対する経口キナーゼ阻害剤である。血管新生の機序を標的とすることによって、抗血管新生作用のほか、癌細胞を直接死滅させるなどの抗癌作用を発揮する。
Temsirolimusは、細胞の生存や腫瘍増殖に関するいくつかの側面に不可欠の蛋白として知られている哺乳類のラパマイシン標的蛋白(mTOR)を阻害する小分子薬である。
第1の試験は、腎淡明細胞癌患者の第一選択薬としてSutentとインターフェロンα(IFN-α)とを比較するための国際多施設第3相試験であった[1]。患者はいずれも一般全身状態(PS)が良好で病変部が計測可能であり、全身療法による治療歴がない患者であった。Sutent群またはIFN-α群のいずれかに患者計750人を1:1の割合で無作為に割り付けた。Sutentは、4週間にわたり1日1回経口で50 mg服用した後、2週間休薬するというように6週間1サイクルで投与した。IFN-αは週3回9 MUを皮下投与し、これも6週間1サイクルとした。試験の主要エンドポイントは無進行生存期間とした。
Sutentによる治療を受けた患者の方が無進行期間が有意に優れ、奏効率が高いという結果が得られた(表1)。
表1 転移性RCCにSutentを用いたときの無進行生存期間および奏効率
Sutent | IFN-α | |
無進行生存期間 | 11ヵ月 | 5ヵ月 |
客観的奏効率(完全奏効率+部分奏効率)* | 37% | 9% |
*1人だけ患者に完全奏効が認められた。この患者はSutent群の患者であった。
全生存期間中央値が未だ得られていないが、有意ではないものの、Sutentの効果が示唆された(ハザード比= 0.65)。
Sutentには受け入れられる範囲内の安全性プロファイルが認められた。
研究者らは、Sutentは転移性腎細胞癌の第一選択治療に用いる新しい標準薬であるとの結論を下した。
第2の試験は、Temsirolimus群、IFN-α群および両者の併用群の3群を設定した第3相試験であった[2]。試験には予後不良の進行腎細胞癌患者626人を登録した。患者は過去に全身治療を受けておらず、ステージIVであるか再発を来し、予後不良を規定する6つの特徴のうち少なくとも3つを備えていた。予後を不良とする特徴は、診断後1年以内、Karnofsky performance status(KPS)が60または70、ヘモグロビン値が正常下限値未満、補正カルシウム値が10 mg/dL超、LDHが正常上限値の1.5倍超、転移部位が2個以上とした。試験の主要エンドポイントは全生存期間とした。
Temsirolimus単独群の患者ではIFN-α群に比して有意に優れた全生存期間が得られた。Temsirolimus単独群およびIFN-αとTemsirolimusの併用群ではともに無進行期間が改善した(表2)。
表2 転移性RCCでIFN-α単独群と比較したTemsirolimus単独群およびTemsirolimusとIFN-αの併用群
IFN-α N-207 | Temsirolimus N=209 | IFN-αとTemsirolimus | |
全生存期間 | 7.3ヵ月 | 10.9ヵ月 | 8.4ヵ月 |
無進行生存期間 | 1.9ヵ月 | 3.7ヵ月 | 3.7ヵ月 |
客観的奏効率(完全奏効率+部分奏効率) | 7% | 9% | 11% |
臨床的効果(完全奏効率+部分奏効率+16週間以上の病勢安定) | 29% | 46% | 41% |
用量減少 | 40% | 23% | 52% |
3回以上の治療延期 | 42% | 24% | 76% |
今回の試験2件により、転移性RCCの第一選択治療ではSutent、TemsirolimusがいずれもIFN-αより有効であることが示された。
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