腎細胞癌の治療におけるス―テント®およびネクサバール® の心毒性が報告された

キャンサーコンサルタンツ
2008年11月

ウィーン医科大学の研究者らは、ス―テント(スニチニブ)およびネクサバール(ソラフェニブ)が心毒性を引き起こすことを報告したが、これは生存に影響を及ぼすものではない。本試験の結果は、Journal of Clinical Oncology誌の2008年11月10日号に掲載された。[1]

ス―テントとネクサバールは、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であり、腎細胞癌および他の癌腫の治療に用いられている。これらの製剤は、経口標的製剤であり、癌細胞の成長、増殖、浸潤に関与する複数の生物学的経路を阻害する作用を持つ。チロシンキナーゼ阻害剤に関連する心疾患の可能性は、これまでの試験から提起されてきた。ハーバード大学の研究者らは、ス―テントの治療が、イマチニブ耐性の転移性消化管間質腫瘍(GIST)患者における心疾患の発現に関係していることを報告した。

今回の報告は、TKI製剤で治療されている74人の患者を対象に、心臓の副作用を分析するための、観察的な単一施設試験であった。研究者らは、3つの目標を設けた。

1)TKI製剤を処方されている患者における心臓 障害の徴候を調査する。

2)伝統的な心臓血管治療による心疾患イベントの可逆性を調べる。

3)心疾患イベントの発症後もTKI治療を継続出来るかどうかの可能性を測定する。

TKI製剤での治療を開始する前に、全ての患者は、冠動脈疾患(CAD)の危険因子とCADや高血圧、 調律異常、心不全などの病歴や徴候を分析する。選定された患者は治療前に心エコー検査(ECG)を実施した。(心血管イベントは、酵素のベースライン時正常値から増加、治療を要する症候性不整脈、左心室機能障害、急性冠症候群などの発現として定義されている)。

治療中、33.8%の患者が心血管イベントを発症させ、40.5%にECGの変化が見られた。また、18%は、症候性であった。全ての症候性患者は、適切な心血管治療を行うため、TKI治療を中断した。これらの患者のうち7人(9.4%)は、深刻な障害が起き、中間治療や集中治療を要するものであった。心血管治療実施後、これらの患者はTKI治療を再開し、2週間の入院を要する持続的心血管モニタリングを行った。

心血管管理後、全ての患者は回復しTKI治療の継続の適切性が認められた。研究者らは、TKI治療による心臓障害は、概して過小評価されている事象であるが、注意深く心血管モニタリングを行い、心筋障害の初発症候時に心臓治療を行うことができれば、管理可能である」と結論づけた。彼らは、治療プロトコルに心血管治療を取り込むことの重要性を強く主張している。

コメント:

本試験は、患者のモニタリングの有用な情報を提供している。

参考文献:

[1] Schmidinger M, Zielinski CC, Vogl UM, et al. Cardiac toxicity of Sunitinib and Sorafenib in patients with metastatic renal cell carcinoma. Journal of Clinical Oncology. 2008;26:5204-5212.


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翻訳担当者 高杉友紀子

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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