免疫療法薬ニボルマブはハイリスク尿路上皮がんの無病生存期間を倍増させる

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解
「筋層浸潤尿路上皮がんは、現在の標準治療である外科手術を行っても術前化学療法の有無にかかわらず再発リスクが高いがんです。これらの新しい知見は、再発リスクが最も高い患者では手術後に免疫療法を行うことにより、疾患が再発するまでの時間を延ばす助けになることを示しています」と、理学系修士(MS)、米国内科学会マスター(MACP)、米国臨床腫瘍学会フェロー(FASCO)、米国臨床腫瘍学会の泌尿生殖器がん専門医であるRobert Dreicer医師は述べた。

シスプラチンをベースとした化学療法の有無にかかわらず、根治手術後に免疫療法薬ニボルマブ(販売名:オプジーボ)で治療することにより筋層浸潤尿路上皮がん患者の無病生存期間が有意に改善されたとする研究が、2月11日から13日にオンライン開催される2021米国臨床腫瘍学会泌尿生殖器がんシンポジウムで発表される予定である。

この結果は、根治手術(すべての病変組織を除去することを目指した手術)を受けた膀胱、尿管あるいは腎盂にハイリスク筋層浸潤尿路上皮がんを持つ患者における術後補助療法としてのニボルマブに関する第3相臨床試験CheckMate 274により明らかとなった。

【研究の概要】
注目点:術前化学療法の有無にかかわらず、外科手術後にニボルマブ(オプジーボ)治療を行った場合の効果

研究対象:術前化学療法の有無にかかわらず外科手術後も再発リスクの高い筋層浸潤尿路上皮がんを有する患者709人

結果:無作為に割り付けられたすべての患者において、外科手術後にニボルマブで治療された患者はプラセボ治療を受けた患者と比べて無病生存期間が改善した(ニボルマブ治療群の無病生存期間中央値21カ月 vs. プラセボ治療群の無病生存期間中央値10.9カ月)

結果の意義:根治目的の外科手術を受けたハイリスク筋層浸潤尿路上皮がん患者では、ニボルマブによる術後補助療法によりPD-L1の状態にかかわらず臨床的に意味のある無病生存期間改善がもたらされる

【主な結果】
無病生存期間(一次治療終了からがんの兆候または症状が再び現れるまでの期間)中央値は、ニボルマブによる術後治療を受けた患者(中央値21カ月)がプラセボによる治療を受けた患者(中央値10.9カ月)と比較して有意に長かった。ある種のタンパク質(PD-L1)陽性の腫瘍を持つ患者サブセットの無病生存期間も、ニボルマブにより改善された(中央値、ただし解析時点では未到達)。

「ニボルマブは、根治目的の外科手術を受けたハイリスク筋層浸潤尿路上皮がん患者において、PD-L1の状態にかかわらず統計学的に有意であるとともに臨床的に有意義な無病生存期間の改善をもたらす補助療法としては初めての免疫療法です」と、筆頭著者でありスローンケタリング記念がんセンター(ニューヨーク)の腫瘍内科医であるDean F. Bajorin医師は述べた。

【試験について】
この試験には、シスプラチンをベースとした術前化学療法の有無にかかわらず根治手術を受けた膀胱、尿管あるいは腎盂に筋層浸潤尿路上皮がんを有する患者709人が参加した。手術時のがんステージに基づき再発リスクは高いと判断された。患者は、ニボルマブあるいはプラセボを2週間ごとに1年にわたり投与されるよう無作為に割り付けられた。

ニボルマブは、免疫系の一部であるT細胞に発現するタンパク質(PD-1)に、PD-L1タンパクが結合することを阻害することで作用する免疫療法薬である。PD-L1とPD-1が結合すると、T細胞はがん細胞を殺すことができなくなる。PD-L1をブロックすることで、ニボルマブはT細胞ががん細胞を殺すことを可能にする。

筋層浸潤尿路上皮がんの標準治療は、シスプラチンをベースとした術前療法と根治手術(膀胱摘出術)である。しかし、患者の中には、腎機能が不十分であるなどの要因でシスプラチンの投与が受けられない患者もいる。術後補助療法としてのニボルマブは、これらの患者においてがんの再発と死亡のリスクを減らす治療選択肢となる可能性がある。

ニボルマブを投与された患者(17.9%)では、プラセボを投与された患者(7.2%)よりも重篤な治療関連の副作用(グレード3~4)が多く認められた。最も一般的なグレード3以上の治療関連副作用は、ニボルマブ治療群では下痢、大腸炎と肺炎であり、プラセボ投与群では大腸炎、下痢、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)増加と肝炎であった。

【次のステップ】
全生存期間とがん特異的生存期間に対するニボルマブの影響を検討するためには、より長期間の追跡調査が必要である。

資金提供 この試験は、ブリストル マイヤーズ スクイブからの資金提供を受け、小野薬品工業と共同して実施された

翻訳担当者 伊藤彰

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)

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