進行膀胱がんにFGFR阻害薬エルダフィチニブが有効
MDアンダーソン主導の第2相試験で奏効率が40%であったことに基づき、同FGFR阻害薬がFDAの承認を得る
テキサス大学MDアンダーソンがんセンター主導の国際共同第2相試験では、FGFR3遺伝子変異を特徴とする転移膀胱がん患者において、FGFR阻害薬エルダフィチニブ(erdafitinib)による治療の奏効率(ORR)は40%という結果になり、忍容性良好であった。
この試験の結果は、New England Journal of Medicine誌で本日公開された。この結果により、エルダフィチニブは4月に米国食品医薬品局(FDA)に承認され、進行膀胱がん患者の治療に承認された初の分子標的薬となった。
エルダフィチニブによる経口標的療法は、過去に免疫療法が奏効しなかった患者についても、奏効率59%を達成した。このことは、エルダフィチニブが、代替治療が必要なこれらの患者にとって実行可能な選択肢となりうることを示している。この知見は、2018年米国臨床腫瘍学会年次総会で、臨床試験責任医師である、泌尿生殖器腫瘍学教授のArlene Siefker-Radtke医師によって初めて報告された。
「多数の患者らは、特に現在の標準的なケアに忍容不能である場合、代替治療を切実に欲しています」と、Siefker-Radtke氏は語った。「この臨床試験で治療を受けた患者らの奏効率が40%であったことに、われわれは非常に満足しました。リンパ節転移のある患者だけでなく、体積が大きく悪性度が非常に高い疾患を有する患者にも、エルダフィチニブにより奏効が認められました」
これらのがんの標準的なケアは、副作用が大きく侵襲性の高い治療計画であるシスプラチンベースの化学療法であって、数十年間ほとんど変わっていないと、Siefker-Radtke氏は説明した。近年では免疫チェックポイント阻害薬が進行膀胱がんの治療に承認されているが、15~20%の患者のみに免疫チェックポイント阻害薬によるなんらかの利益が認められると、同氏は語った。
「FGFR3変異を有する私の患者には、免疫チェックポイント阻害薬で顕著な奏効は認められなかったことに気づき、このことは有効な治療のない患者集団を反映するものではないかと考えるに至りました」と、Siefker-Radtke氏は語った。「われわれがこの経路を標的とする新薬について知ったとき、これらの新薬を膀胱がん患者において研究することに非常に興味をもちました」
FGFR3変異は、転移膀胱がん患者のおよそ15~20%と、腎盂がんや尿管がんなどの他の尿路上皮がん患者の最大35%に認められる。この国際共同試験では、転移または切除不能の尿路上皮がんを有し、FGFR3遺伝子の変化が確認された患者99人を組み入れた。
試験中、患者3人に完全奏効、すなわち腫瘍の消失が認められ、39%に病勢安定(*注:元論文による)が認められた。無増悪生存期間中央値は5.5カ月であり、全生存期間中央値は13.8カ月であった。免疫療法による治療歴を有する患者22人のうち、59%(13人)に部分奏効または完全奏効が認められた。
「免疫療法による治療歴を有する患者における奏効率は50%を超えており、このデータは、エルダフィチニブによる治療が、FGFR3変異を有する患者に対してより有効な可能性があることを示唆しています。しかし、このデータは予備的な証拠であり、この知見を裏付けるためのさらなるデータが必要です」と、Siefker-Radtke氏は語った。
この試験に参加するすべての患者から治療による副作用が報告され、21%が有害事象により治療を中止し、67%からグレード3または4の有害事象が報告された。最も高頻度に認められた治療関連の副作用は、口内炎(9%)、爪形成異常(6%)、および手足症候群(5%)であった。
この試験の結果に基づいて、FDAは、2018年にエルダフィチニブを画期的治療薬に指定し、2019年4月に、FGFR2遺伝子またはFGFR3遺伝子に変異を有する局所進行または転移尿路上皮がん患者の治療にエルダフィチニブを承認した。
「FGFR3変異尿路上皮がん患者の治療にエルダフィチニブが承認されたことにより、現行治療に併用できる薬剤が増えました」と、Siefker-Radtke氏は語った。「エルダフィチニブを治療戦略に加えられるようになること、そして、どのようにエルダフィチニブと免疫療法を併用するか、すべての膀胱がん患者の生存期間を改善するためにエルダフィチニブの効果をどのように用いることが可能か、明らかになることを期待しています」
現在、FGFR3変異を有する転移尿路上皮がん患者におけるエルダフィチニブの有効性を、化学療法またはチェックポイント阻害薬ペムブロリズマブと比較評価するための、第3相試験が進行中である。
この試験は、Janssen Research & Development, LLC社から資金提供を受けた。Siefker-Radtke氏は、Janssen社の科学諮問委員会の委員を務める。共同研究者および彼らの開示の完全なリストは紙面に記載されている。
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