膀胱がん再発防止に2種のアプローチ:ゲムシタビン膀胱内洗浄、マイトマイシンC
膀胱がん切除術後に化学療法薬ゲムシタビン(ジェムザール)を用いた膀胱内洗浄が腫瘍再発リスクを低減させる可能性があることが大規模臨床試験で明らかになった。
本試験では、術後にゲムシタビンを膀胱内にカテーテルで単回投与した低悪性度の筋層非浸潤性膀胱がん患者では、プラセボを投与した患者と比べて、4年以内の再発が少ない傾向がみられた。
低悪性度の膀胱がんは再発することが多く、その再発時には経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)と呼ばれる処置が必要となる。一部の患者は再発を繰り返し、その結果、手術を繰り返すことになる。
「経尿道的膀胱腫瘍切除術は、泌尿器の疾患で最も多く実施する手術のひとつです」と、本試験を主導したロチェスター大学医歯学部Edward Messing医師は述べた。「この手術は費用が高額であり、高齢者の膀胱がん患者や他の併存疾患がある膀胱がん患者の多くにとって厳しい手術です」。
本臨床試験に参加した406人の患者すべてにおいて、術後のゲムシタビンの使用によりがんの再発率が低下した。JAMA誌(2018年5月8日付)の報告によると、4年経過時の再発率は、ゲムシタビン投与群で35%であり、プラセボ投与群では47%であった。
本試験に参加した患者は、手術実施前に登録され、投与群に無作為に割り付けられた。患者は低悪性度または高悪性度のいずれかに、手術結果により判定された。試験期間中、研究者により215人の患者が低悪性度と判定された。
低悪性度の患者で再発が認められたのは、ゲムシタビンの投与を受けた102人のうち34人(34%)であり、プラセボの投与を受けた113人では59人(54%)であった。すなわち、ゲムシタビン投与を受けた患者では再発率が相対的に37%低下した。
「これらの結果を踏まえ、低悪性度の膀胱がん患者にとって術後のゲムシタビン投与は新たな標準治療とすべきである」とMessing氏は述べた。
試験に付随する論説でも同様に記載されている。ゲムシタビンをベースとしたこの治療法は「シンプルで、安全で、効果的であり、かつ費用が手頃で革新的な膀胱がんの治療法」であると、ノースカロライナ大学医学部泌尿器腫瘍学の部長、Matthew Nielsen医師および複数の同僚医師らは記している。
再発を減らすための、もうひとつの選択肢について
その他の複数の試験では、低悪性度の膀胱がん患者を対象に手術後にカテーテルを使用して化学療法薬マイトマイシンCをを投与することにより再発率が低下したことが示されている。これらの試験により米国および欧州の専門家グループは、筋層非浸潤性の低悪性度膀胱がん患者に、この治療法を推奨するようになった。
しかしながら、米国ではマイトマイシンCの副作用の懸念、入手が困難なこと、およびコストの高さなどの理由でこの治療法を受ける患者は非常に少ない、とMessing氏は指摘した。
マイトマイシンCは膀胱に穴がある場合、そこから漏出し毒性を呈す可能性があり、また皮膚に付着すると重度の発疹を引き起こすおそれがある。
一方、ゲムシタビンは、忍容性が良好、かつ入手が容易であり、「副作用または費用について比較的負担が小さい」薬剤であるとMessing氏は述べた。また、今回の試験では副作用は2つの投与群で同様であり、その副作用も全般的に管理しやすいものであった。
「一部の進行性膀胱がん患者はすでにゲムシタビンの投与を受けています。そのため、この薬剤を低悪性度の膀胱がん患者の治療のために使用することは理にかなっています」と、今回の試験には関与していなかった、NCIがん研究センター膀胱がん部門長であるPiyush Agarwal医師は述べた。
Agarwal氏によると、ゲムシタビンを膀胱に直接注入する膀胱内注入法では、薬剤は他の部位に副作用を起こすことなく、膀胱にある内張り細胞に直接作用するという。
今回の試験により、膀胱がんの治療ガイドラインに、低悪性度の患者の再発を低下させるための選択肢としてゲムシタビンが追加される可能性があるとAgarwal氏は予測する。
「この試験結果から、低悪性度の膀胱がん患者にとってゲムシタビンが有益であることは明らかです」。ただし、高悪性度疾患の患者にゲムシタビン投与を追加しても副作用の懸念はないが、有益性もないと指摘した。
Agarwal氏は、担当している低悪性度の膀胱がん患者に、術後のゲムシタビン投与を開始する予定である。
ゲムシタビンの選択および試験について
Messing氏が10年以上前に再発を減らすための方法としてゲムシタビンの研究を開始したときには、まだゲムシタビンは膀胱がん患者で広く使用されていなかった。「安全で効果が高いと考えられる薬剤の選抜を試みました」。
研究者らはゲムシタビンとの比較にマイトマイシンCではなくプラセボを使用することにした。その理由は、術後に何らかの化学療法を受けることが治療ガイドラインで推奨されているにも関わらず、そうした治療法を受けている患者が非常に少ないことが研究で示されていたからである。
「もしこの新たな治療法が広く使われるようになれば、繰り返し手術を受ける苦しみから患者を救うことが可能となり、また減少した手術分の医療費も削減することが可能になります」とMessing氏は述べた。
「こうして試験の結果が出た段階で、患者や医師がこの治療法を受け入れることを期待しています」と続けた。
【図のキャプション】低悪性度のステージIの膀胱がんは、膀胱の筋層には浸潤していない(製作:NCI)
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