免疫チェックポイント阻害剤で26~38%転移膀胱癌が縮小

3群比較試験の初期段階で、併用免疫療法が転移性膀胱がんの患者において26~38%の奏効率を実現していることが、メリーランド州ナショナルハーバーで開催された2016年がん免疫学会(Society for Immunotherapy of Cancer:SITC)年次総会にて土曜日に発表された。

「最近になって免疫チェックポイント療法が最初に承認されるまでは、膀胱がんの患者には30年にわたって新しい治療の選択肢がありませんでした。私たちは膀胱がん患者の転帰改善のため、免疫チェックポイント単剤療法から免疫チェックポイント併用療法に急速に研究を進めています」と、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター尿路生殖器腫瘍学および免疫学の教授であり、試験責任医師であるPadmanee Sharma医学博士は述べた。

CheckMate032として知られるランダム化第1/2相試験において、白金製剤ベースの化学療法後に進行した患者に対し、抗PD1阻害剤であるニボルマブ単剤、または2種類の投与法によるニボルマブとCTLA4阻害剤イピリムマブの併用療法のいずれかを投与した。併用療法では、ニボルマブ+高用量イピリムマブ、または高用量ニボルマブ+イピリムマブを、3週間ごとに4サイクル投与し、続いてニボルマブを2週間ごとに投与した。全ての患者は、病勢進行又は許容できない毒性の発現まで治療を行った。

高用量イピリムマブの併用療法を受けた患者群で最も高い客観的奏効率(38.5%)が得られ、完全奏効(腫瘍の消失)に加えて部分奏効(腫瘍の30%以上の縮小)が確認された。

奏効率

・ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg点滴静注の併用では全奏効率10/26(38.5%)で、完全奏効1/26(4%)。
・ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgの併用では全奏効率27/104(26%)で、完全奏効3/104(3%)。
・ニボルマブ単剤では全奏効率19/78(24.4%)で、完全奏効5/78(6%)。

「高用量イピリムマブに関する今回の初期段階の結果により、免疫チェックポイント併用療法の奏効率の改善が証明されました。これは、この分野が発展し、転移を有する患者や病初期の患者にとって新たな標準治療として併用療法の戦略を検証する一助となる喜ばしいニュースです」とSharma氏は述べた。

治療に対する反応は長く続くとみられ、併用療法が奏効している患者のうち70および80%がデータベースロックの時点で引き続き奏効が継続していた。

Sharma氏は、SITCセッションで、併用療法のデータのみを発表した。ニボルマブ単剤のデータは、10月発行のLancet Oncology誌に発表された。

これら2剤は、免疫システムの標的戦士となる白血球であるT細胞上の異なるタンパク質を標的とする。プログラム細胞死-1(PD1)および細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)は、それぞれT細胞上のブレーキとして機能し、免疫応答を停止させる。ニボルマブはPD1を、イピリムマブはCTLA4を阻害し、T細胞が自由にがんを攻撃できるようにする。

副作用

・高用量イピリムマブの併用療法群では、76.9%に1つ以上の治療関連の有害事象(全グレード)が認められ、30.8%は最も重篤なグレード3~4で、7.7%は治療中断に至った。
・高用量ニボルマブの併用療法群では、84.6%に有害事象が認められ、31.7%はグレード3~4で、13.5%は治療中断に至った。
・ニボルマブ単剤群では、81.1%に有害事象が認められ、22%はグレード3~4で、3%は治療中断に至った。

追跡期間中央値は、ニボルマブ単剤群で15.2カ月、高用量ニボルマブの併用療法群で16.7カ月、高用量イピリムマブの併用療法群で7.8カ月であった。

Sharma氏によると、試験のスポンサーであるBristol-Myers Squibb社が、試験後半で高用量イピリムマブの併用療法群を増やしたため、この群では患者集積が少なく、追跡期間も短かくなっている。

Bristol-Myers Squibb社は、他の各試験で2通りの併用療法を研究しており、奏効率は各試験により異なることが判明していると、Sharma氏は述べた。同氏はまた、以前に行われた、膀胱がん術前治療の免疫モニタリング研究の結果に基づき、この変更を支持した。その研究では、高用量のイピリムマブ投与により免疫刺激タンパクICOSを高発現しているT細胞が増加したことが示されている。

単群試験により得られた奏効期間と、14.8%という全奏効率に基づき、3番目の免疫治療薬atezolizumab(アテゾリズマブ)が、10月、FDA(米国食品 医薬品局)により転移性膀胱がんに対して承認された。アテゾリズマブはPD-L1を阻害する。PD-L1は、腫瘍細胞や他の細胞に発現しており、PD1を活性化してT細胞を停止するリガンドである。

第1/2相のCheckMate032試験で、現在抗腫瘍活性が評価されている。本試験は、イピリムマブとニボルマブの両薬剤を製造するBristol-Myers Squibb社より資金提供を受けた。

Sharma氏はまた、MDアンダーソンの免疫療法プラットフォームの科学部門責任者で、MDアンダーソンがんセンターParker Institute for Cancer Immunotherapyの研究者である。このプラットフォームは、科学的な発見に基づいた治療開発、がん予防の努力、早期発見を促進することによりがん死亡者を減らすことを目的としたMDアンダーソンがんセンターのムーンショット計画の一部である。

Sharma氏の共同研究者は以下のとおり。Margaret Callahan, and Jonathan Rosenberg, Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York; Emiliano Calvo, START Madrid, Centro Integral Oncológico Clara Campal, Madrid, Spain; Joseph Kim, Yale Cancer Center, New Haven, CT; Filipo de Braud, Istituto Nazionale dei Tumori-Università degli Studi di Milano, Milan, Italy; Patrick Ott, Dana-Farber Cancer Institute, Boston; Petri Bono, Comprehensive Cancer Center, Helsinki University Hospital and University of Helsinki, Helsinki, Finland; Rathi Pillai, Emory Winship Cancer Institute, Atlanta; Michael Morse, Duke University Medical Center, Durham, NC; Dung T. Le, Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center at Johns Hopkins, Baltimore, MD; Matthew Taylor, Oregon Health and Science University, Portland, OR; Pavlina Spilliopoulou, Beatson West of Scotland Cancer Centre, Glasgow, UK; Johanna Bendell, Tennessee Oncology, Nashville, TN; Dirk Jaeger, Heidelberg University Hospital, Heidelberg, Germany; Emily Chan, Vanderbilt-Ingram Cancer Center, Nashville, TN; Scott Antonia, Moffitt Cancer Center, Tampa, FL; Paolo Ascierto, Istituto Tumori Napoli Fondazione Pascale, Naples, Italy; Delphine Hennicken, Marina Tschaika and Alex Azrilevich, Bristol-Myers Squibb, Princeton, NJ.

翻訳担当者 相葉沙枝

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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