ニボルマブは転移性膀胱がん患者の腫瘍負荷を軽減する

MDアンダーソン OncoLog 2016年7月号(Volume 61 / Issue7)

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ニボルマブは転移性膀胱がん患者の腫瘍負荷を軽減する

さまざまな固形がんタイプの患者を対象とした進行中の多施設共同臨床試験から得られた初期結果によると、免疫チェックポイント阻害z剤ニボルマブは、転移性膀胱がん患者の24.4%で腫瘍負荷を軽減した。

ニボルマブは、PD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)に結合してプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)をブロックする。5月には、atezolizumab(アテゾリズマブ)がFDA(米国食品医薬品局)により転移性膀胱がん治療薬として承認された初めての薬剤となった。同剤は、PD-L1は阻害するがPD-L2は阻害しない。

腫瘍細胞でのPD-L1の発現は、PD-L1阻害薬への反応性を表す予後マーカーと考えられている。そのため、治療前の腫瘍生検標本におけるリガンドの発現とニボルマブの治療効果に相関性があるかどうかを確認することがニボルマブの臨床試験の副次的評価項目とされた。主要評価項目は、客観的奏効率であった。

すでに患者登録を完了している本臨床試験の第1相部分では、転移性がんの患者に、がんが進行するか、または有害事象で投与中止となるまで、ニボルマブ治療(2週間おきに3 mg/kgを静脈内投与)を行う。6月の米国臨床腫瘍学会の年次総会では、過去に白金製剤ベースの化学療法を少なくとも一種類受けている、本臨床試験の転移性膀胱がん患者の初期結果が報告された。

本試験の第1相部分で転移性膀胱がん治療を行った患者78例の全奏効率は24.4%であった。このうち5例が完全奏効、14例が部分奏効であった。さらに、22例で病勢安定、30例で病勢進行が認められた。また、グレード3または4の副作用が16例で発現し、治療関連の副作用により2人が死亡した。

テキサス大学MDアンダーソンの泌尿生殖器臨床腫瘍学部門教授で同センターにおける本臨床試験の治験責任医師でもあるPadmanee Sharma医学博士は次のように話している。「ニボルマブでの奏効率は、私たちが他の有望なセカンドライン治療で確認してきた奏効率よりも高く、忍容性も非常に良好でした。一次治療で白金製剤治療を行った後の膀胱がん患者は脆弱な患者群であり、これは重要なことです」。

また、同医師は、「腫瘍にPD-L1が発現している患者とそうでない患者で、ニボルマブの効果に有意差はみられませんでした。患者を治療するのに、PD-L1の発現によって選択しなくても良好な結果が得られるということです」とも述べた。

本臨床試験の第2相部分では、ニボルマブとイピリムマブの併用投与が行われる。イピリムマブは、細胞障害性T細胞関連タンパク質4(CTLA-4)として知られる免疫チェックポイントを阻害する。

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翻訳担当者 宮武洋子

監修 榎本  裕(泌尿器科/三井記念病院)

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