放射線+免疫療法薬2剤により一部の筋層浸潤性膀胱がんで膀胱温存が可能

限局性筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者に放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)であるデュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)およびトレメリムマブ(販売名:イジュド)を併用投与すると、膀胱温存可能な持続的奏効が得られたことが、米国がん学会(AACR)の学術誌Clinical Cancer Research誌に掲載されたIMMUNOPRESERVE臨床試験結果から明らかになった。

限局性筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の標準治療は、膀胱を全摘出する根治的膀胱摘出術である。これは一般的に有効ではあるものの患者の生活に永続的な影響を及ぼす可能性がある、と本試験の統括著者であるXavier Garcia-del-Muro医学博士(スペイン、バルセロナ大学、カタルーニャ腫瘍学研究所 腫瘍内科教授)は説明する。

「根治的膀胱摘出術は侵襲性の高い手術であり、患者のQOL(生活の質)に大きな影響を及ぼします」とGarcia-del-Muro医学博士は、ストーマ袋による自意識や不快感、再建された新たな膀胱による合併症などを挙げて語った。「集学的治療は、さらなる研究の価値ある、有望な保主的選択肢となります」。

現在検討されている非侵襲的な方法のひとつに、経尿道的膀胱腫瘍切除術後に化学療法と放射線療法を行う方法がある。この方法は有望な結果を示しているが、化学療法には重大な毒性が伴い、患者の半数までが不適格となる可能性があるとGarcia-del-Muro医学博士は語った。

対照的に、放射線療法と異なる免疫チェックポイントを標的とする免疫チェックポイント阻害薬(ICI)であるPD-L1を標的とするデュルバルマブ+CTLA-4を標的とするトレメリムマブの併用により、化学療法よりも毒性が少なく、効果的に併用できる可能性が前臨床研究では示唆された。さらに、放射線療法はがん細胞から危険信号や免疫系を刺激するサイトカインを放出させる可能性があり、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)をより効果的にする可能性があるとGarcia-del-Muro医学博士は説明した。

Garcia-del-Muro医学博士らが行うIMMUNOPRESERVE臨床試験は、患者の膀胱を温存することを目的とし、限局性筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者を対象にした、放射線療法と免疫療法薬であるデュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法の有効性を評価する第2相、多施設、単群、非盲検臨床試験である。T2(筋層に浸潤している)~T4a(前立腺、精嚢、子宮、または腟に浸潤している)期で転移やリンパ節転移がなく、免疫療法(BCG(ウシ型弱毒結核菌)療法を除く)や膀胱への放射線療法を受けたことのない患者32人が登録され、治療を受けた。患者は膀胱摘出術の適応がないか、拒否された。登録された患者には、デュルバルマブ+トレメリムマブが4週間間隔で3クール投与され、同時に放射線治療が行われた。

評価可能な28人の患者のうち、26人(93%)が完全奏効を示した。全集団においては、2年間の追跡調査後、5人(16%)が転移性再発を、6人(19%)が筋浸潤性疾患の再発を、1人(3%)が筋層非浸潤性疾患の再発を経験した。

中央値27カ月の追跡の結果、30人は膀胱温存が可能となったが、2人は再発のため根治的膀胱摘出術を受けた。

推定2年全生存率は84%、無遠隔転移生存率は83%であった。

安全性に関しては、Garcia-del-Muro医学博士は本レジメンの忍容性を評価した。グレード3または4の有害事象の発生率は31%であり、治療関連死は1人であった。8人(25%)は、治療関連毒性により予定された3回目の免疫療法を受けなかった。

Garcia-del-Muro医学博士は、「この集学的な膀胱温存療法は実行可能であり、奏効と長期的な膀胱温存において高い有効性を示しました」と語った。Garcia-del-Muro医学博士らは、より多くの患者、より長期間の追跡調査、放射線療法+化学療法を含む他の治療レジメンとの直接的な比較など、より大規模な試験でこれらの知見を確認することを目指している。

「本試験は初期の探索的試験ですが、結果は有望であり、放射線療法と免疫療法薬の2剤併用により生存期間を損なうことなくQOL改善の可能性を強調しています」と、Garcia-del-Muro医学博士は締めくくった。

本試験の限界は、サンプル数が少ないこと、追跡期間が比較的短いこと、他の標準治療の選択肢との比較がないことである。

本試験の資金については、原文を参照のこと。

  • 監訳 高濱隆幸(腫瘍内科・呼吸器内科/近畿大学病院 ゲノム医療センター)
  • 記事担当者 平 千鶴
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  • 原文掲載日 2025/02/5

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