高リスク膀胱がんに対する術後ペムブロリズマブは無病生存期間を延長

高リスク膀胱がんに対する術後ペムブロリズマブは無病生存期間を延長

NIHの臨床試験結果から、この疾患の治療選択肢が拡大

高リスクの筋層浸潤性膀胱がん患者において、手術で膀胱を摘出した後、免疫療法薬による治療によってがんのない期間がほぼ2倍になる可能性が大規模臨床試験の結果で示された。18種類以上のがんの治療薬として米国食品医薬品局(FDA)により承認されているペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)による術後治療は、経過観察のみと比較して優れていることが判明した。米国国立衛生研究所(NIH)の研究者らが主導した本研究は、2024年9月15日にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。

「本試験は、ペムブロリズマブががん再発を防ぐための新たな治療選択肢となることを示しています」とNIH国立がん研究所(NCI)がん研究センターのAndrea B. Apolo医師は述べた。「これらの患者ががんと無縁でいられる期間を延長することは、患者のQOLに大きな違いをもたらします」。

筋層浸潤性膀胱がんと診断された場合、膀胱内の腫瘍が膀胱を包んでいる組織の筋層にまで浸潤していることを意味する。このタイプの膀胱がんに対する標準治療は、手術で膀胱を全摘出することである。手術を成功させ、腫瘍からすでに他部位に転移したがん細胞を除去する可能性を高めるため、患者には、術前(ネオアジュバント療法)、または術後(アジュバント療法)に、シスプラチンをベースとした化学療法が行われる。

しかし、筋層浸潤性膀胱がんの場合、シスプラチンを用いた術前化学療法を受けることができないか、拒否する患者が多い。また、シスプラチンを用いた術後化学療法に耐えられない人もいる。さらに、シスプラチンを用いた術前化学療法を受けたにもかかわらず、筋浸潤性病変が持続しているが、シスプラチンを用いた術後化学療法による再治療ができない患者もいる。これまで、これらの患者は再発の徴候がないか注意深い経過観察を受けていた。

観察に代わる方法として、手術後に患者に免疫療法薬を投与することで、がんが再発せずに長く生きられるかどうかを調べる研究が行われていた。

2021年、FDAは、高リスクの筋層浸潤性膀胱がんに対する術後療法としてニボルマブ(販売名:オプジーボ)を承認した。この免疫チェックポイント阻害薬(T細胞が腫瘍を認識して攻撃できるように、そのブレーキを解除する免疫療法薬の一種)によって、患者の無病期間(がんがなく生存している期間)中央値がプラセボと比較して2倍になったことが臨床試験で示されたためである。ニボルマブによる術後療法は現在、この疾患における標準治療となっている。

今回の試験では、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブも術後療法として有効かどうかを検討した。研究者らは、膀胱摘出手術を受けた高リスク筋層浸潤性膀胱がん患者702人を、ペムブロリズマブによる術後療法を3週間ごとに1年間受ける群と、同期間観察するのみの群に無作為に割り付けた。この試験の患者の約3分の2はシスプラチンによる術前療法を完了していた。

中央値でほぼ4年間の追跡調査後、ペムブロリズマブ群の患者は中央値で29.6カ月間無病状態を維持したのに対し、観察群では14.2カ月であった。ペムブロリズマブの忍容性は良好で、最も多くみられた副作用は、疲労、かゆみ、下痢、甲状腺機能低下であった。

がん種によっては、ペムブロリズマブのような免疫チェックポイント阻害薬は、PD-L1陽性の腫瘍(腫瘍細胞がその表面にPD-L1タンパク質を大量に産生する腫瘍)に対して、PD-L1陰性の腫瘍に対するより効果が高い。そこでApolo医師らは、ペムブロリズマブの効果がPD-L1の状態によって異なるかどうかを評価した。

腫瘍がPD-L1陽性であった404人の患者のうち、ペムブロリズマブ治療を受けた患者は中央値36.9カ月間無病状態を維持したのに対し、観察群では21カ月間であった。腫瘍がPD-L1陰性であった298人の患者では、ペムブロリズマブ投与群では中央値17.3カ月間無病であったのに対し、観察群では9カ月間無病であった。研究者らは、両群ともペムブロリズマブによる術後療法が有益であったことから、PD-L1状態はペムブロリズマブによる治療患者の選定基準とするべきではないと結論づけた。

全生存期間に関する予備データでは、3年時点でペムブロリズマブ群では約61%の患者が生存していたのに対し、観察群では約62%の患者が生存していた。研究者らは、観察群の多くの患者がニボルマブを承認後に投与し始めた、あるいは試験から離脱したため、結果に歪みが生じ、全生存期間のデータの解釈が難しくなった可能性があると指摘した。

研究チームはすでに本研究結果に基づいて、免疫チェックポイント阻害薬と他の薬剤とのさまざまな組み合わせによる術後療法を探究し、研究を進めている。また、高リスクの筋層浸潤性膀胱がん患者のうち、種類を問わず術後療法が最も有効となる患者を特定し、術後療法が不要な患者を対象外とするためのバイオマーカーをテストしている。

AMBASSADORと呼ばれる本試験は、NCIの依頼により実施された。この試験はNCIが資金提供するAlliance for Clinical Trials in Oncologyが主導して実施され、Merck社とNCIとの共同研究開発契約の一環としてNCIの全米臨床試験ネットワークが参画している。

  • 監訳 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2024年9月16日

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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