ステージ3のメラノーマにレラトリマブ+ニボルマブ術前免疫療法は安全かつ有効
手術可能な皮膚がんへの術前免疫チェックポイント阻害薬のさらなるエビデンスが試験により提供される
第2相試験において、ステージ3のメラノーマ(悪性黒色腫)患者に対する免疫チェックポイント阻害薬であるレラトリマブ+二ボルマブの術前併用投与により、患者の57%で、全ての生存腫瘍が完全に消失し、安全であったことを、MDアンダーソンがんセンターテキサス大学の研究者らは、10月26日付のNature誌で報告した。
主要評価項目である病理学的完全奏効(pCR)を達成したことに加え、病理学的奏効率(手術時に残存する生存腫瘍が50%まで)は70%となった。ネオアジュバント(術前)療法によってグレード3または4の免疫関連有害事象(IRAE)を発症した患者や、毒性に関連する手術の遅れが確認された患者はいなかった。
「臨床ステージ3のメラノーマでは、手術後にがんが再発するリスクは50%にも上ると言われています。術前免疫療法の目的の一つは、ステージ4のメラノーマで成功したこれらの治療を、より早期の手術可能な疾患において評価し、再発の可能性を減らすことです」と、筆頭著者および責任著者のRodabe Amaria医師(メラノーマ医療腫瘍学准教授)は述べた。「今回の結果は、術前療法において、ステージ3のメラノーマに対するレラトリマブ+ニボルマブの併用が安全かつ有効な治療選択肢であることを支持するものです」。
レラトリマブは、T細胞の表面に存在しメラノーマでしばしば発現が上昇するLAG-3を阻害する新しい免疫チェックポイント阻害薬である。二ボルマブはPD-1阻害薬である。米国食品医薬品局は、MDアンダーソンがんセンターが2022年1月に New England Journal of Medicine誌で報告したRELATIVITY-047試験の結果を基に、ステージ4のメラノーマに対しレラトリマブ+ニボルマブの併用を2022年3月に承認した。
また、この知見は、MDアンダーソンが欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2022で発表した、ステージ3~4のメラノーマおよびステージ2~4の皮膚扁平上皮がんに対する術前単剤免疫療法に関する、最近の優れた研究結果に基づいている。
本試験は、MDアンダーソンとスローンケタリング記念がんセンターで登録された患者30人に、術前療法としてレラトリマブ+ニボルマブを2回投与し、その後手術を行い、術後療法として同剤を併用して10回投与した。1人の患者は術前療法中に脳転移を発症し、手術には至らなかった。患者の年齢中央値は60歳で、患者の63%は男性であった。
手術を受けた患者29人を中央値で24.4カ月間追跡したところ、無再発生存率(RFS) は1年目で97%および2年目で82%であった。RFS率はpCRが得られた患者で最も高く、1年目で100%および2年目で91%であったのに対し、pCRが得られなかった患者では1年目で92%および2年目で69%であった。全患者の1年全生存率は93%、2年全生存率は88%であった。
8 週間の術前療法期間中にグレード 3 および 4 の免疫関連有害事象 は発生しなかった。1 人の患者は無症候性心筋炎のため手術が遅れたが、治療とは無関係であると判断された。術後療法中では、グレード3または4の免疫関連有害事象 が患者の26%に発生し、2次性副腎機能不全と肝酵素の上昇が頻度の多い副作用であった。
本結果は、ニボルマブ単剤またはニボルマブとCTLA-4チェックポイント阻害薬であるイピリムマブ(販売名:ヤーボイ)との併用を評価した2つの先行試験群と比較して良好である。2018年にAmaria氏らがNature Medicine誌で報告した結果は、併用療法群でpCR率が45%、グレード3の副作用を経験した患者は73%であった。ニボルマブ単剤群ではpCR率が25%、グレード3の副作用を経験した患者は8%であった。高い毒性発現率が認められたため、前試験は早期に終了となった。
「レラトリマブとニボルマブの併用により、安全性と有効性のバランスが取れ、手術の遅れが生じなかったことを大変嬉しく思います」とAmaria氏は述べた。「私たちは、手術後にがんが再発するリスクを低減できる治療の選択肢を患者さんに提供したいと考えています。我々のデータはRELATIVITY-047の試験結果を補完し、メラノーマにおけるこの併用療法の使用を支持するために、さらなるエビデンスを提供するものです」。
血液と組織の検体を用いたトランスレーショナル研究により、ベースライン時に免疫細胞がより多く存在し、治療中にM2マクロファージが減少することが、病理学的奏効と関連していることが明らかになった。病理学的奏効は、ベースラインの腫瘍サンプルのLAG-3レベルおよびPD-1レベルとは相関がなかった。全生存期間およびバイオマーカーの奏効への影響を明らかにするためには、さらなる追跡調査が必要である。
本試験はBristol Myers Squibb (BMS)社 から資金提供を受けている。Amaria氏は、BMSのコンサルティング/アドバイザリーの役割を果たし、研究/助成金の支援を受けている。MD アンダーソンの著者には、共同筆頭著者のElizabeth Burton氏、共同統括著者のPadmanee Sharma, M.D., Ph.D.、Jennifer Wargo, M.D.、Hussein Tawbi, M.D., Ph.D.が含まれており、共著者と開示情報の全てのリストは、本論文に記載されている。
監訳:野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田病院)
翻訳担当者 三宅久美子
原文掲載日
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