MDA研究ハイライト:ASCO2022特集(メラノーマ、メルケル細胞がん他)

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは、MDアンダーソンの専門家によるがんの基礎研究、トランスレーショナル研究、臨床研究の中から最近発表された研究を紹介している。今回は米国臨床腫瘍学会年次総会2022(ASCO22)で予定されているMDアンダーソンの研究者による口頭発表で注目される、医療の質の向上、医療サービス研究、皮膚がんの新しい治療、そしてさまざまな症状への対応やサバイバーシップの進歩について特集した。MDアンダーソンのASCOコンテンツに関する詳細は、MDAnderson.org/ASCOを参照。

要約を掲載した研究に加え、今後発表されるプレスリリースでは、以下のような画期的な研究が紹介される予定。

  • ・高齢のマントル細胞リンパ腫患者に対する1次治療としてのイブルチニブ(販売名:イムブルビカ)と化学免疫療法の併用療法(アブストラクトLBA7502)
  • ・特定の悪性軟部腫瘍に対するネオアジュバント免疫療法(アブストラクトLBA11501)
  • ・リンパ腫および多発性骨髄腫に対するさまざまな細胞治療アプローチ(アブストラクト7509、7518、8009)
  • ・腸内細菌叢シグネチャーと免疫療法への反応性(アブストラクト2006、2511)
  • ・新規治験薬の早期臨床試験結果(アブストラクト2501、3003、3008)

1)COVID-19パンデミック期における包括的な治療目標プログラム導入による入院中の転帰の改善(アブストラクト6502

2)経口がん分子標的治療はメディケア利用患者のコスト増につながる(アブストラクト6504

3)新規免疫療法併用療法は転移性メラノーマ患者の生存率を改善した(アブストラクト9505

抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体チェックポイント阻害薬の併用免疫療法は、転移性メラノーマの最新の治療法として多くの患者に有効であることが証明されているが、毒性発現率が50%以上であることが問題となっている。そのため、効果が高く、かつ患者のQOLを向上させる新しい治療アプローチが必要とされている。Hussein Tawbi医学博士が主導した第2/3相試験では、免疫チェックポイントLAG-3を標的とする第3世代の新しいチェックポイント阻害薬レラトリマブの評価が行われた。対象は未治療の転移性メラノーマ患者で、患者にはレラトリマブと抗PD-1薬ニボルマブ(販売名:オブジーボ)の併用、またはニボルマブ単独のいずれかの治療が行われた。前回の報告では、ニボルマブ単独群に比べ、レラトリマブ併用群では無増悪生存期間が2倍に延び、安全面も管理可能であることが示されている。今回の解析では、奏効率がニボルマブ単独群の33%に対し、レラトリマブ併用群では43%に向上したことが示された。併用群の全生存期間中央値は未到達であり、統計学的有意差はないものの、ニボルマブ単剤と比較して有意な改善を示す結果が続いている。今回の結果はレラトリマブとニボルマブの併用療法が転帰を改善することを示唆しており、LAG-3を標的とした新しい免疫療法による治療アプローチを支持するものである。Tawbi氏は6月5日に最新の結果とサブグループ解析について発表する予定である。

4)p53経路を標的とした治療がメルケル細胞がんの患者に有望(アブストラクト9506

メルケル細胞がん(MCC)はメルケル細胞ポリオーマウイルスによって引き起こされる、希少な悪性度の高い皮膚がんである。免疫チェックポイント阻害薬に反応しない患者の生存期間中央値はわずか4カ月であり、新たな治療法が必要とされている。TP53に変異のない患者では、ウイルスタンパク質がMDM2を活性化してp53の機能を阻害し、正常な細胞死を妨げる。Michael K. Wong医学博士が主導した第1b/2相試験では、TP53変異のないMCC患者を対象に、MDM2に対する標的薬であるナブテマドリン(navtemadlin)の評価が行われた。本試験には、抗PD-1/L1療法を受けたことのある患者31人が登録され、異なる投与量に無作為に割り付けられた。推定推奨用量で行われた第2相試験では確定奏効率が25%、病勢コントロール率は63%だった。この用量レベルは高用量に比べ忍容性が良好であり、減量例が少なく、治療期間も長かった。グレード3/4の治療関連有害事象は患者全体の68%に認められ、血液学的副作用が最も多かった。今回の結果は、MCC患者に対する本治療法について、さらに研究を進める必要性を示唆している。Wong氏は、6月5日に最新の知見を発表する予定。

翻訳担当者 岩佐薫子

監修 中村泰大(皮膚悪性腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

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