ニボ+イピ併用療法は無症候性脳転移メラノーマの生存期間を改善

第2相試験の長期追跡調査で全生存率71.9%

MDアンダーソンニュースリリース 2021年11月10日

免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(販売名:オプジーボ)およびイピリムマブ(販売名:ヤーボイ)併用療法は、メラノーマ(悪性黒色腫)が脳に転移した患者の全生存期間を改善した。テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによるこの第2相試験結果が、本日発行のThe Lancet Oncology誌で発表された。

CheckMate 204試験の最終結果で、無症候性患者の3年後の全生存率が71.9%となり、併用療法の持続的奏効が確認された。この第2相試験の結果に基づいて、本併用療法はこの集団における初回治療としての標準治療となった。

12週間以内に腫瘍が治療に反応を示した患者の全生存率は92%であった。症候性脳転移患者または副腎皮質ステロイド薬治療中の患者においては、治療反応は低いが持続的であり、全生存率は36.6%であった。

「本併用療法を用いて頭蓋内病変に治療反応を誘導することで、メラノーマが脳へ転移した患者の全生存期間に直接かつ持続的な影響を与えます」と、筆頭著者であるHussein Tawbi医学博士(MDアンダーソンメラノーマ腫瘍内科教授兼the Brain Metastasis Clinic共同ディレクター)は語る。「われわれは、これまで予後が悲惨であった患者にこの治療法が長期生存の可能性をもたらすことを証明しました」。

ステージ4メラノーマ患者の約40%が診断時に脳転移があり、いずれかの時点で脳転移を発症する患者は75%にのぼる。本併用療法導入以前は、脳転移メラノーマ患者の1年生存率は約20%であった。

本研究の主要評価項目は頭蓋内における臨床的有効割合であり、完全奏効および部分奏効、または病状安定が6カ月以上継続の合計割合と定義した。無症候性患者では、研究者評価による臨床的有効割合は57.4%であり、客観的奏効率は53.5%であった。これらの結果は、脳転移がない転移性メラノーマ患者の奏効率と類似している。

症候性患者では、研究者評価による臨床的有効割合および客観的奏効率はいずれも16.7%であった。3年後の頭蓋内無増悪生存率は、無症候性患者で54.1%、症候性患者では18.9%であった。

奏効については盲検下独立中央判定(BICR)でも評価した。盲検下独立中央判定は、中枢神経系転移を有する患者を対象とした抗がん剤を評価する研究に関して推奨されている。総合的に、盲検下独立中央判定および研究者による評価は高い一致を示した。

一部の患者は本治療に反応しなくとも全生存期間が良好であり、研究者らは、それがその後の放射線治療や全身治療の効果が影響している可能性があるとともに、現在の画像診断技術では併用免疫療法の効果が十分あるいは正確には評価できないことを示していると考える。

「本試験結果は、併用免疫療法は有効であり、メラノーマが脳に転移した無症候性患者への一次治療選択肢として考慮するべきであることを裏付けています」とTawbi氏は述べる。「また、この研究は、症候性患者には有効な選択肢がいまだに足りないこと、そして、ステロイドを使用しない方法の研究推進によって、この患者集団をさらに支援できることを強調しています」。

本単一群試験は、無症候性脳転移メラノーマ患者(コホートA群)を登録して開始されたが、その後修正され、神経症状を有している、または試験開始前に副腎皮質ステロイド薬を使用している患者(コホートB群)の登録も認めた。副腎皮質ステロイド薬は、脳転移を有する患者の症状を抑えるためにしばしば処方される。

全米28の研究施設から合計101人の患者がコホートA群に、18人の患者がコホートB群に登録された。追跡期間中央値はコホートA群が34.3カ月、コホートB群が7.5カ月であった。コホートA群は年齢中央値59歳、男性が67.3%、白人が94.5%であった。患者らはニボルマブ+イピリムマブを3週間ごとに4回投与を受けた後、ニボルマブを2週間ごとに最長2年間投与する維持期に入った。

安全性への新たな懸念は確認されず、また併用療法の毒性も、脳転移のない進行メラノーマ患者における過去の臨床試験と類似していた。コホートA群では、グレード3または4の治療関連有害事象がみられた患者は55.4%であり、治療中止に至った患者は28.7%であった。コホートB群では、グレード3の治療関連有害事象がみられた患者は66.7%であり、治療を中止した患者は16.6%であった。コホートB群ではグレード4の有害事象は報告されなかった。

最もよくみられた重篤な治療関連有害事象は、大腸炎、下痢、下垂体炎、および肝酵素上昇であった。免疫介在性イベントは、肝炎、発疹および甲状腺機能低下症などであった。治療に関連した心筋炎による患者死亡が1件報告された。

「併用免疫療法は依然として毒性の高い治療法ですので、患者にとってより安全で、かつ同等の効果が得られる治療法の開発を次の重点分野の一つとしています」とTawbi氏は語る。「これまで、脳転移のある患者さんの多くは、臨床試験の対象外とされてきました。今回、われわれは、この集団に特化した臨床試験を実施することが可能であることを示しました」。

MDアンダーソンの学際的な Brain Metastasis Clinicは、Tawbi氏の他、Frederick Lang医師(脳神経外科部長)、およびJing Li医学博士(放射線腫瘍学部准教授)が共同ディレクターを務め、治療までの期間を短縮すること、および脳転移を有する患者に対する臨床試験の実施拠点を提供することを目的として2019年に創設された。

本試験はBristol Myers Squibb(BMS)社から資金援助、および米国国立衛生研究所から追加の研究支援(P30 CA008748, P30 CA016056)を受けた。Tawbi医師はBMS社でコンサルタント兼顧問として勤務経験があり、同社から研究費および助成金の支援を受けた。共著者の全リストならびに開示情報は論文に記載されている。

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 中村泰大(皮膚悪性腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター 皮膚腫瘍科・皮膚科)

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