治療歴ある転移性メラノーマでは腫瘍浸潤リンパ球の養子細胞移植の効果が低下
抗PD-1療法やBRAF/MEK阻害薬投与を受けた後に再発した転移性メラノーマ(悪性黒色腫)患者は、このような治療を受けていない患者と比較して、腫瘍浸潤リンパ球の養子細胞移植(ACT-TIL)を含む開発中の治療法に対して同等の反応を示さないことが研究により明らかになった。本研究は、米国がん学会誌Clinical Cancer Researchに掲載された。
近年、転移性メラノーマの治療法には、抗PD-1/PD-L1抗体などの免疫療法や、MAPK経路を構成するBRAF/MEKの阻害薬などの分子標的療法がある。しかし、やがて患者の多くはこれらの治療法に耐性を生じ、腫瘍浸潤リンパ球の養子細胞移植(ACT-TIL)のような別の治療法を探すことになる。
米国国立衛生研究所(NIH)の一部である米国国立がん研究所(NCI)の外科に所属する准研究員(associate research physician)、Stephanie Goff医師は、「ここ数年、免疫療法や分子標的療法の出現と時を同じくして、転移性メラノーマ患者における腫瘍浸潤リンパ球の養子細胞移植(ACT-TIL)の効果が低下していました。われわれは、免疫療法や標的療法の治療歴を持つ患者と持たない患者を比較し、効果に違いがあるかどうかを調べました」という。
「本研究論文のデータから、腫瘍浸潤リンパ球の養子細胞移植(ACT-TIL)を他の治療の後で行った場合、一次治療として行った場合と同等の持続的な効果を得られないかもしれません」 とGoff医師はいう。「治療の早い段階でACT-TILを行うことを考えるべきです」。
Goff医師らは、すでに完了した4つのACT-TIL臨床試験における参加者226人の転帰を調査した。参加者の83%は治療後に再発した患者であった。Goff医師らは、年齢、性別、腫瘍の大きさや部位、前治療などの特性による奏効率の違いを調べた。
年齢と性別は予後に影響しなかったが、メラノーマの予後指標である乳酸脱水素酵素(LDH)の上昇や、治療開始時の腫瘍の大きさは、予後の不良と関連していた。
客観的奏効率は、抗PD-1療法を受けたことがない(一方で他の治療は受けた可能性がある)患者では56%であったが、抗PD-1療法を受けたことがある患者では24%に低下した。また、MAPK阻害薬未投与の患者の客観的奏効率が60%だったのに比較して、MAPK阻害薬の投与歴がある患者は21%であった。
同様に、無増悪生存期間中央値は、抗PD-1療法を受けたことがない患者では6.5カ月であったが、抗PD-1療法を受けたことがある患者では3.2カ月に低下した。また、MAPK阻害薬未投与の患者では無増悪生存期間中央値が6.6カ月であったのに対し、MAPK阻害薬の投与歴がある患者では2.5カ月であった。
腫瘍浸潤リンパ球の養子細胞移植(ACT-TIL)は、腫瘍サンプルからリンパ球を採取し、体外で培養した上で再び患者に投与して、腫瘍の壊滅を助ける治療法である。過去に治療にさらされた腫瘍にはリンパ球の減少や脆弱化などの障害が生じ、ACT-TILの有効性に影響するのかもしれない、とGoff医師は説明する。
Goff医師は、上記のデータに基づいて、ACT-TILが再発後に奏効するように、患者が他の治療法を受ける前にリンパ球を採取しておくべきである、と考える。「なんらかの投薬治療以前にリンパ球を採取しておけば、ACT-TILはより優れた奏効率を持つ効果的な後期治療となりえるのではないでしょうか」。
本研究の限界は、4つの臨床試験が長期(2000年から2020年)に渡って実施されたため、この期間の早い時期に治療を受けた患者と遅い時期に治療を受けた患者との間で、スクリーニングやケアのシステムに相違があったことである。さらに、全生存期間およびメラノーマ特異的生存期間に関する統計は、患者がACT-TIL後に受けた治療によって歪められている可能性がある。著者らは、進行性疾患を発症した患者を追跡することができなかった。
本研究は、米国国立がん研究所(NCI)の資金援助を受けており、Iovance Biotherapeutics社との共同研究開発契約により実施された。著者らは利益相反のないことを宣言する。
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