免疫チェックポイント阻害薬セミプリマブで進行皮膚扁平上皮がんが縮小
MDアンダーソンがんセンター主導の臨床試験で、患者の約50%がcemiplimab(セミプリマブ)に対して反応を示す
一般的な皮膚がんが進行し治癒が見込めなくなった患者のほぼ半数で、免疫チェックポイント阻害薬が腫瘍を縮小させたことが、臨床試験で確認された。テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの研究者が主導する国際チームがNew England Journal of Medicine誌で発表した。
「今回の知見から、化学療法や分子標的療法では非常に限定的な効果しか得られていない進行皮膚扁平上皮がん患者の治療において、パラダイムシフトが起きる可能性があります」と、筆頭著者Michael Migden医師(皮膚科、頭頸部外科准教授)は述べた。
Migden医師は、セミプリマブの国際多施設共同第2相登録臨床試験の試験責任医師である。免疫チェックポイント阻害薬であるセミプリマブは、がんに対する免疫応答を抑制するT細胞受容体PD-1を阻害して作用する。
皮膚扁平上皮がんは、皮膚がんの中で2番目に多く、推定で年間100万人が新たに皮膚扁平上皮がんの診断を受ける。患者の95%以上は、皮膚扁平上皮がんの早期に手術や放射線療法を受けて治癒する。しかし、疾患が進行している一部の患者に対しては、標準治療として承認されている全身治療はないと研究者らは説明する。
追跡調査中央値7.9カ月時点で、転移のある患者59人中28人(47.5%)がセミプリマブに客観的奏効を呈した。客観的奏効は、画像で30%以上の腫瘍縮小が認められた状態と定義された。完全奏効は4人、部分奏効は24人であった。奏効者の82%は依然として投薬を続行している。
「患者は引き続き経過が良好で、無増悪生存および全生存の中央値には達していません」とMDアンダーソンがんセンターのMohs外科医であり皮膚がん専門医のMigden医師は述べた。奏効者および105日以上腫瘍の大きさに変わりがない 患者の持続的な疾患コントロール率は61%であった。
Migden医師は、現在、進行皮膚扁平上皮がんに対して用いられている、上皮増殖因子受容体(EGFR)への化学療法レジメンまたは分子標的治療の奏効率は15~25%であり、それらの治療法は患者を衰弱させる多くの副作用を伴うと指摘する。
免疫療法は、監視を要する炎症性副作用のリスクを伴うが、それ以外の点では化学療法やEGFR阻害薬よりも日常的な合併症が少ないとMigden医師は述べた。
セミプリマブの第2相臨床試験でよくみられた副作用は、下痢、倦怠感、悪心、便秘および発疹である。患者4人(6.8%)が治療中止を余儀なくされた。患者3人が試験中に有害事象で死亡したが、治療とは関連がないとされた。
第2相臨床試験の患者の年齢中央値は71歳であった。33人(55.9%)は全身療法(化学療法)の治療歴があり、50人(84.7%)は放射線療法を受けていた。
手術不可能な転移性または限局性進行疾患を有する患者を対象とした第1相臨床試験では、26人中13人(50%)が部分奏効を呈した。追跡調査中央値11カ月時点で、患者7人は奏効が続いていた。
患者2人(7.7%)は有害事象のため治療中止を余儀なくされた。年齢中央値は73歳であった。
米国食品医薬品局(FDA)は、画期的治療薬指定の申請を許可し、これによってFDA承認迅速化の道が開けた。Regeneron Pharmaceuticals, Inc社とSanofi社が、セミプリマブを共同開発している。
皮膚扁平上皮がんは、紫外線への曝露で生じた遺伝子損傷により発生する。これらの腫瘍は突然変異の負荷が高く、免疫系攻撃にとって標的に富む環境をもたらし、皮膚扁平上皮がんもまた免疫抑制と強い関連がある。こうした要因のため、皮膚扁平上皮がんはPD-1阻害薬にとって恰好の対象となり、免疫系のブレーキが解除され、がんを攻撃させる。
本臨床試験はRegeneron社とSanofi社の助成を受けている。皮膚扁平上皮がんは米国がん登録に含まれておらず、この疾患の発病率や死亡率は不明である。推定患者数(年間診断数)は、70~100万人に及ぶ。ある研究では、2012年の皮膚扁平上皮がんによる死亡者数は3,900~8,700人と推定されている。
筆頭著者Migden氏、共同筆頭著者Danny Rischin医師のほか、共著者は原文参照のこと。
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