希少皮膚がん患者におけるavelumabによる持続的な腫瘍縮小効果

メルケル細胞がんは悪性度の高い皮膚がんとして稀な種類であり、有効な治療法はほとんど確立されていないが、免疫治療新薬avelumab[アベルマブ]が転移性メルケル細胞がんに対して有望であるという結果が臨床試験により示された。

今回の第2相試験では、治療後に再増大をきたした転移性メルケル細胞がん患者を対象にアベルマブを投与後、32%で腫瘍が部分的または完全に縮小した。この効果は、腫瘍の縮小が認められた患者の90%で6カ月以上持続した。

本試験は、メルケル細胞がんに対して免疫療法薬による腫瘍縮小効果を示した今年2度目の公表となる。 

試験結果はLancet Oncology誌9月1日号に掲載された。

 当初の前向きな見方をデータが裏付ける

米国で毎年メルケル細胞がんと診断される人は2,000人未満で、高齢者や免疫システムが低下した人が大多数である。腫瘍は多くの場合、急速に化学療法で縮小するが、再び急速に増大する。「メルケル細胞がんに関しては、化学療法による生存率の改善は認められていません」と、NCIがん評価治療プログラムのElad Sharon医師は言う(本試験には不参加)。

「メルケル細胞がんは転移すると一様に致死的であり、現在の化学療法による治療成績は非常に厳しい」と本試験に参加したニュージャージー州にあるラトガーズがん研究所のHoward Kaufman医師は言う。

アベルマブは免疫療法薬の一種で、免疫システムのブレーキを外すことで免疫細胞によるがん細胞への攻撃力を高める免疫チェックポイント阻害剤である。イピリムマブ(ヤーボイ)、pembrolizumab [ペムブロリズマブ](Keytruda[キートルーダ]),ニボルマブ(オプジーボ)、atezolizumab[アテゾリズマブ](Tecentriq[テセントリク])など、すでにいくつかの免疫チェックポイント阻害剤が他のがんで適応承認されている。

試験の結果、アベルマブが標的とするPD-L1というタンパク質が、多くのメルケル細胞腫瘍で過剰に発現していることがわかった。さらに、ほとんどの腫瘍でメルケル細胞ポリオーマウイルスというウイルスが関連していた。メルケル細胞ポリオーマウイルスは、自身のDNAを健常細胞のDNAに組み入れることで、免疫応答を低下させる。これらの理由により、研究者らはこのがんに対して免疫療法が有効であるという前向きな見方を示している。

Merk KgaAはアベルマブを開発し、ファイザーと提携して本第2相試験に資金を提供した。試験では4大陸35のがん施設から、過去に一連の化学療法サイクルを1回以上受けた患者88人を登録した。全患者が隔週でアベルマブの投与を受け、がんの進行または許容できない副作用が認められるまで投与を継続した。

その結果、全被験者中20人で腫瘍の縮小、8人で完全消失を認めた。Kaufman氏によると、治療が奏効した患者のおよそ80%で、最初の6週間で急速に効果が見られた。

結果公表前の最終フォローアップ評価時に、治療が奏効した患者28人のうち27人で効果が6カ月以上持続しており、うち6人では1年以上持続した。

「今回は実際に、奏効率だけでなく、奏効に持続性があることがわかりました」とKaufman氏は言う。

化学療法とは異なり、重度の副作用はほとんどの患者で見られず、有害事象により投与を中止した患者は88人中わずか2人でした」。

エビデンスの蓄積

今年初め、別の2相試験により、タンパク質PD-1を標的とするペムブロリズマブがメルケル細胞がんに有効であるとの結果が示された。

この試験では、患者は過去に化学療法を受けておらず、全患者が転移をきたしていたわけではなかった。奏効率は全体で54%とわずかに高く、アベルマブと同様、奏効は持続したとSharon博士は言う(ペムブロリズマブ試験の治験責任医師)。

アベルマブ試験では、腫瘍にPD-L1の過剰発現が見られない場合やメルケル細胞ポリオーマウイルス陰性の場合でも、一部の患者で奏効した。ペムブロリズマブ試験では、同様の現象がウイルス陰性腫瘍の患者で認められた。

2試験の結果を考慮し、メルケル細胞がん患者への免疫チェックポイント阻害剤の使用は「今後数年以内に標準療法となる可能性がある」とSharon氏は言う。

アベルマブのがんへの適応は未だ承認されていないが、FDAは本試験の結果に基づき、同薬剤を優先承認審査および希少疾患医薬品指定制度の対象としている。ペムブロリズマブは数種のがんに対して承認されており、治療後に再び増大した転移性メルケル細胞がんを対象とした臨床試験が現在進行中である。

免疫療法対象患者の選定方法や奏効率の改善方法を明確にするには、他の治療法との併用などで免疫療法薬をさらに検討する必要があると、Kaufman氏は言う。

「とはいえ、新薬候補となる2つの免疫療法薬は、単に奏効するだけでなく、その奏効が迅速であり、かなり長期間持続すると考えられます。患者へ新たな希望をきっともたらすことになると考えています」。

【図の解説】メルケル細胞がんは皮膚がんの中でも稀な種類で、表皮の最深部に存在し、神経と接触しているメルケル細胞に発生するがんである。

翻訳担当者 今泉眞希子

監修 林正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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