FDAが進行皮膚がんにベムラフェニブとコビメチニブ併用療法を承認

米国食品医薬品局(FDA)ニュース

米国食品医薬品局(FDA)は本日、特定の異常遺伝子(BRAF V600EまたはV600K変異)を有し、他の部位へ転移した、または切除不能である進行期メラノーマ(悪性黒色腫)の治療に、ベムラフェニブとの併用でcobimetinib[コビメチニブ](米国商品名:cotellic[コテリック])の使用を承認した。

メラノーマは、米国で最も悪性度が高く危険な皮膚がんである。皮膚の色素を産生する皮膚細胞に発生し、早期に診断されないと他の部位に転移する可能性が高いがんである。米国国立がん研究所(NCI)は、2015年には73,870人の米国人がメラノーマと診断され、そのうち死亡者は9,940人に上ると推定している。

「腫瘍生物学の知識を継続して深めていくにつれて、がん細胞には分子標的療法に適応し耐性を獲得する驚くべき能力があることがわかってきました。がんの原因となる異なった標的分子に作用する治療を複数併用することは、こうした課題への取り組みに役立つ可能性があります。本日の承認を受け、BRAF変異陽性のメラノーマ患者に対して新たな分子標的治療が提供できるようになりました。ベムラフェニブにコビメチニブを上乗せすると、ベムラフェニブ単独よりも高い有用性を示します」とFDA医薬品評価研究センターの血液学・腫瘍製品室長であるRichard Pazdur医師は述べた。

コビメチニブは、より大きなシグナル伝達経路の一部を構成するMEKとして知られる酵素の活性を阻害することで作用する。シグナル伝達経路の異常な活性化ががんを引き起こす可能性があり、コビメチニブはがん細胞の増殖を遅延または抑制する。ベムラフェニブは米国でゼルボラフという商品名で販売され、同じ経路の異なった部分に影響を及ぼすBRAF阻害剤である。この薬剤は、他の部位へ転移した、または切除不能であるメラノーマ患者で、FDAが承認した検査により腫瘍にBRAF V600Eと呼ばれる遺伝子変異が認められた患者の治療薬として2011年に承認された。医療従事者は、コビメチニブとベムラフェニブとの併用投与を開始する前に、FDAが承認した利用可能な検査を用いて、患者の腫瘍標本がBRAF V600EまたはV600K変異陽性であることを確認する必要がある。

BRAF V600変異陽性の進行期または切除不能であるメラノーマの未治療患者495人を対象としてランダム化臨床試験を実施し、ベムラフェニブとの併用投与におけるコビメチニブの安全性と有効性を明らかにした。試験参加者全員にベムラフェニブを投与し、これと併用してコビメチニブまたはプラセボを投与する群に無作為に割付けた。平均すると、コビメチニブとベムラフェニブの併用投与では投与開始から疾患増悪までの期間が約12.3カ月であり、ベムラフェニブ単独投与の約7.2カ月に比べて、期間の延長が認められた。また、コビメチニブとベムラフェニブを併用した患者は、ベムラフェニブ単独投与患者より長期生存が得られた。投与開始後17カ月の生存患者の割合は、コビメチニブ併用群では約65%であったのに対し、ベムラフェニブ単独群はその半数であった。さらに、完全または部分的に腫瘍の縮小が認められた患者の割合は、コビメチニブとベムラフェニブ併用群では70%であったのに対して、ベムラフェニブとプラセボ併用群では50%であった。

コビメチニブとベムラフェニブの併用療法でよくみられた副作用は、下痢、紫外線過敏症(光線過敏反応)、悪心、発熱、および嘔吐であった。

コビメチニブは、心筋の障害(心筋症)や他の筋障害(横紋筋融解症)、新たな皮膚腫瘍(原発性皮膚悪性腫瘍)、眼疾患(網膜剥離)、重度の皮疹、肝障害(肝毒性)、出血、日光に対する感受性の増大(光線過敏症)による重度の皮疹などの、重度の副作用を引き起こす可能性がある。コビメチニブを服用する患者は日光への曝露を避け、皮膚を保護できる衣類を着用し、日焼けを予防するために紫外線AとBに対して保護効果のある広域スペクトルの日焼け止めを使用すべきである。コビメチニブを服用する女性は、本剤が発育中の胎児に有害な影響を及ぼす可能性があるため、効果的な方法で避妊すべきである。

コビメチニブはFDAの優先審査プログラムに基づいて審査された。同プログラムは、承認申請時点で、重篤な疾患の治療における安全性や有効性に著しい改善が見込まれる薬剤を対象として、6カ月間の迅速審査を実施するものである。また、本剤は希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されている。これにより、税控除、ユーザーフィー免除、市場優先権など、希少疾病用医薬品の開発を支援し奨励するための優遇措置が得られる。

コビメチニブとベムラフェニブはいずれもカリフォルニア州サンフランシスコにあるGenentech社が販売している。

米国食品医薬品局(FDA)は、連邦政府保健福祉省内に設けられた機関で、公衆衛生の促進と保護を目的として、特に、医薬品、動物用医薬品、ワクチンおよび生物製剤や医療機器の安全性と有効性の確保に努めている。FDAは、米国の食糧供給の確保や食品安全、化粧品、栄養補助食品、電磁波を放出する製品の安全性を保証し、たばこ製品を規制する責務も担っている。

翻訳担当者 青山真佐枝

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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