ニボ+イピ併用で転移メラノーマの長期生存は劇的に改善

免疫チェックポイント阻害薬の併用療法を受けた転移メラノーマ(悪性黒色腫)患者のうち約半数が10年以上無がん状態で生存していることが、ダナファーバーがんセンターとウェイルコーネル医科大学の研究者らが最近報告した画期的な国際共同試験の長期データによって明らかになった。

9月15日付のNew England Journal of Medicine誌に発表された10年間追跡調査により、第3相CheckMate 067試験は終了することになる。この試験は、21カ国137施設で治療を受けた945人の患者を追跡したものであり、2つの異なる免疫チェックポイント分子をそれぞれ阻害する免疫療法薬であるニボルマブとイピリムマブを併用することで、ほぼ例外なく致死的であった病態の転帰が劇的に改善することが実証された。試験開始から3年後、5年後、6.5年後の患者の転帰を事後解析した結果、治療が奏効した患者ではその効果が数年間持続することが示された。

ダナファーバーのメラノーマセンター・免疫腫瘍学センター長であり、本試験の共同上席著者であるF. Stephen Hodi医師は、「本試験は、免疫チェックポイント阻害薬療法の持続的効果、および複数の免疫チェックポイント阻害薬併用による治療成績向上の可能性について患者に説明する上でもっとも重要な部分です」と述べた。英国王立マースデン病院のJames Larkin医師がもう一人の共同上席著者である。

2011年当時、転移メラノーマ患者の生存期間中央値はわずか6カ月半であった。しかし、免疫系ががんを攻撃する能力を促進する免疫チェックポイント阻害薬が治療選択肢として登場したことで、生存期間が徐々に延び始めた。CheckMate 067試験では、ニボルマブ単独または別のチェックポイント阻害薬であるイピリムマブとの併用が、イピリムマブ単独よりも有効な治療法であることが実証された。

筆頭著者のJedd Wolchok医師(サンドラ&エドワード・マイヤーがんセンターのマイヤー所長、ウェイルコーネル医科大学教授、ニューヨーク・プレスビテリアン/ウェイルコーネル・メディカル・センター腫瘍内科医)は、「これは臨床に変革をもたらす試験でした」と語った。「この集団の生存期間中央値は現在6年強であり、3年時点でがんの進行がない人は、10年時点でもがんがなく生存している可能性が高い」。

この併用療法を受けた患者の約半数で長期生存が確認されたことに加え、10年間の解析で、この治療法に関する新たな安全性シグナルは認められなかった。患者が長期にわたって薬剤投与を受け続けなければならないため、治療に関連した健康上の問題が後になって現れるのではないかと懸念する医師もいた。しかし、10年間の解析では長期毒性に関するシグナルは認められなかった。また、よく報告されている急性毒性の再発もなく、メラノーマの再発もほとんどなかった。

研究チームは、10年経過時点のメラノーマ特異的生存期間と全生存期間を解析した結果、両者は長期的に乖離しており、転移メラノーマ患者は年齢を重ねるにつれて他の原因で死亡する可能性が高くなっており、それは長期的な治療成功の指標であるという。

「10年にわたる追跡調査の結果、転移メラノーマを管理可能で長期的な病状に変える可能性のある治療法があることを自信を持って患者に伝えることができるようになり、将来に対しても確信が持てるようになりました」とHodi医師は話す。

研究者らは、この免疫チェックポイント阻害薬併用療法の心強い長期的有効性と安全性プロファイルを実証するだけでなく、このデータが転移メラノーマ患者の治療プロトコルの改善に役立つことを期待している。このデータから、5年あるいはそれより短い3年経過時点でも良好な経過をたどっている患者は、引き続き良好な経過をたどる可能性が高いことが示唆され、医師は経過観察のための診察や検査の頻度を減らすことができるかもしれない、と研究者らは述べた。

CheckMate 067試験から得られたこれらの長期データは、転移メラノーマ患者が自分の予後を理解するのに役立つかもしれない。Wolchok医師によると、がんが転移したと聞かされた患者は、当然ながら非常に恐れたり落ち込んだりすることが多いという。

「私たちは、患者に希望をもって、より楽観的に考えてもらえるように努めています。この併用療法を受けた患者の半数が転移メラノーマで死亡する心配なく10年以上生きられますと言えるようになりました」。

本研究は、Bristol Myers Squibb社(米国ニュージャージー州プリンストン)の資金援助、米国国立衛生研究所(NIH)の一部である米国国立がん研究所(NCI)からの助成金(P30CA008748)、National Institute for Health Research Royal Marsden–Institute of Cancer Research Biomedical Research Centreからの助成金を受けた。

  • 監修 中村泰大(皮膚悪性腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター )
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2024/09/15

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