【ASCO2024年次総会】メラノーマ:術前のニボルマブ+イピリムマブが術後療法単独より転帰を改善

ASCOの見解(引用)

「このランダム化第3相臨床試験は、メラノーマに対して術前に免疫療法を行った場合、術後にのみ免疫療法を受けた患者に比べて転帰が改善するという、複数の初期臨床試験で得られたデータを裏付けるものです。重要なのは、本試験では患者にニボルマブとイピリムマブという2種類の免疫療法薬を使用したことで、以前のより小規模な試験が示唆したとおり、この併用療法が十分な忍容性を有し、計画された根治手術を可能にし、優れた奏効をもたらすことが確認されました」- エモリー大学医学部(ジョージア州アトランタ)、Michael C. Lowe医師、MA

研究要旨

目的切除可能なステージ3のメラノーマ(悪性黒色腫)に対する免疫療法薬による治療
対象者主にヨーロッパとオーストラリアの、リンパ節に転移があり手術で治療可能なステージ3のメラノーマ患者423人
主な結果イピリムマブ(販売名:ヤーボイ)+ニボルマブ(販売名:​​オプジーボ)を手術前に投与し、必要であれば術後療法を行った場合、標準治療である手術後の免疫療法と比較して、ステージ3のメラノーマ患者の転帰が改善する。
意義⚫︎切除可能なステージ3のメラノーマは、かなりの割合で標準治療であるリンパ節郭清と術後療法の後に再発する。
⚫︎これまで、ステージ3のメラノーマに関して術前免疫療法を用いた第3相臨床試験は行われていない。
⚫︎NADINA試験は、術前の免疫療法薬併用が標準治療である術後免疫療法よりも優れていることをはじめて明らかにした。

ステージ3のメラノーマに対して術前免疫療法を行い、治療に対する強い奏効を示さない場合にのみ術後療法を行うことにより、現在の標準治療である術後免疫療法単独よりも良好な転帰が得られる。本研究は、2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会(5月31日〜6月4日、イリノイ州シカゴ)で発表される。

研究について

「NADINAは、他の術前免疫療法試験の雛形となるべきです。すべての患者に対して術前+術後のサンドイッチ療法を行うのではなく、術後療法は術前療法の奏効を鑑みた上で取り入れています。メラノーマの場合、この方法によって約60%の患者の入院期間が短縮され、多くの資源を節約することができます」と、試験筆頭著者であるオランダがん研究所(アムステルダム)腫瘍内科のChristian U. Blank医学博士は述べた。

手術により治療可能なステージ3のメラノーマに対する現在の標準治療は、原発巣と転移リンパ節を切除した後、標的療法や免疫療法などの全身薬物療法を行い、がん再発の可能性を下げることである(術後療法とも呼ばれる)。第1相および第2相臨床試験から得られた最近のエビデンスにより、手術前に免疫療法を追加すること(術前療法)が患者の転帰改善に役立つ可能性が示唆されている。第2相臨床試験の1つであるSWOG 1801試験は、手術の前後に1種類の免疫療法薬を投与された患者の転帰が有意に改善することを示し、切除可能なステージ3のメラノーマに対して術前療法が広く行われるきっかけとなった最初の試験である。

第3相NADINA試験では、研究者らは転移リンパ節を手術で切除する前に免疫療法薬イピリムマブとニボルマブを投与する治療が、転移リンパ節を切除した後にニボルマブを投与する治療よりも有効かどうかを検討した。この治療で外科的に切除したリンパ節内の腫瘍細胞の90%以上が破壊されなかった場合(病理学的大奏効)、患者はニボルマブによる術後療法を受けるか、腫瘍にBRAF遺伝子変異があれば、標的治療薬ダブラフェニブ(販売名:タフィンラー)+トラメチニブ(販売名:メキニスト)を受ける。 

本試験は、術前療法を受ける212人と術後療法を受ける211人の計423人の患者を対象とした。患者の約3分の2は男性で、全参加者の平均年齢は約60歳であった。患者の追跡期間は9.9カ月(中央値)であった。

主な知見

⚫︎術前療法を受けた群では、術後療法を受けた群よりも疾患関連イベントが有意に少なかった(それぞれ28イベント対72イベント)。術前療法群では、最初の12カ月間に病気が再発するリスクが27%減少した。
⚫︎研究者らは、12カ月後には術前療法群の83.7%(対する術後療法群では57.2%)がイベント無しであると推定した。術前療法を受けた患者の約5人に3人は、病理学的大奏効が得られたため術後療法を追加する必要がなく、治療期間はわずか6週間だった。
⚫︎術前療法の利点は、がんがBRAF遺伝子変異を有するか否かで評価した場合にも認められた。
 ⚫︎BRAF遺伝子変異のある場合、12カ月時点で術前療法群の83.5%がイベント無しであるのに対し、術後療法群では52.2%がイベント無しであると推定された。
 ⚫︎BRAF遺伝子変異のない場合、推定12カ月無イベント生存率は術前療法で83.9%、術後療法で62.4%であった。

術前療法群でよく見られた副作用(グレード3以上)は、感染症、下痢、血球数異常、発疹、発熱、倦怠感であった。薬剤に関連した重篤な副作用は、術前療法群では29.7%、術後療法群では14.7%に発現した。

次のステップ

研究者らは、メラノーマにおいて術前免疫療法をどのように個別化できるかをさらに調査する。研究者らはまた、術前免疫療法を受けた後、病理学的大奏効が得られた患者について、リンパ節の外科的切除を省略できるかどうかも研究する。NADINA試験の進行中の追跡調査には、アプリを通じたQOLデータと患者報告アウトカムの収集が含まれ、将来的には無遠隔転移生存期間と全生存期間について報告する予定である。

本試験はオランダがん研究所(NKI)がスポンサーとなり、オーストラリアではオーストラリアメラノーマ研究所(MIA)が共同スポンサーとなり、Bristol Myers-Squibb (BMS) 社とオーストラリア国立保健医療研究会議(NHMRC)が資金を提供した。

  • 監訳 中村泰大(皮膚悪性腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター )
  • 翻訳担当者 奥山浩子
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  • 原文掲載日 2024/06/02

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