抗PD-1抗体の有望な結果が示される(ASCO2012)

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第48回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会(イリノイ州シカゴ市)で発表された第1相試験結果によると、臨床試験用医薬品BMS-936558は、進行悪性黒色腫患者、進行腎細胞癌患者、および非小細胞肺癌患者のほぼ25%で、腫瘍縮小を引き起こした。

BMS-936558はPD(Programmed cell Death:プログラム細胞死)-1の伝達経路を阻害する分子標的薬の1種である抗体医薬品である。なお、PD-1は、癌に対する生体免疫応答を抑制し、生体が癌を攻撃できないようにする。BMS-936558は、PD-1伝達経路を阻害することで、癌を攻撃する免疫系の再活性化を促す。

本試験には、標準治療抵抗性の悪性黒色腫患者、大腸癌患者、非小細胞肺癌患者、前立腺癌患者、および腎細胞癌患者総計296人が参加した。全患者は他の治療法を最大で5種受けたが、いずれの治療法も奏効しなかった。BMS-936558は、各治療サイクル(8週間)で、2週間毎に静脈投与された。また、治療効果は、各治療サイクル後に評価された。患者は、BMS-936558を最大で12サイクル(2年)投与された。

治療効果は、悪性黒色腫患者、腎細胞癌患者、および非小細胞肺癌患者で認められた。最大2年間のBMS-936558投与後に、悪性黒色腫患者の28%、腎細胞癌患者の37%、および非小細胞肺癌患者の18%に腫瘍縮小が認められた。多くの患者が12カ月以上にわたって治療効果を示した。

BMS-936558は概ね良好な忍容性を示したが、重篤な副作用が患者の14%に認められた。副作用は、皮膚発疹、下痢、および呼吸障害であった。

本試験データのサブ解析から、癌細胞のバイオマーカー候補であるタンパク質PD-L1(Programmed cell death 1 ligand 1:PD1リガンド1)がBMS-936558に反応する癌患者の予測に役立つ可能性が示唆された。PD-L1陽性腫瘍を有する患者の3分の1超がBMS-936558に反応した。一方、PD-L1陰性腫瘍を有する患者は反応しなかった。BMS-936558に対する反応予測バイオマーカーとしてPD-L1の役割を評価する研究はさらに続行されるだろう。

研究者らは、BMS-936558が、進行悪性黒色腫、進行腎細胞癌、および進行非小細胞肺癌に対して抗腫瘍活性を示すと結論づけた。進行非小細胞癌は、従来、免疫療法に対して治療効果は得られないとされていたことを踏まえると、この結果は、進行非小細胞肺癌患者にとって、特に重要なものになる可能性がある。

参考文献:

Topalian SL, Brahmer JR, Hodi FS, et al. Anti-PD-1 (BMS-936558, MDX-1106) in patients with advanced solid tumors: Clinical activity, safety, and a potential biomarker for response. Presented at the 2012 annual meeting of the American Society of Clinical Oncology, June 1-5, 2012, Chicago, IL. Abstract CRA2509.


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翻訳担当者 渡邊 岳

監修 大野 智(腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学)

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