イピリムマブが転移性メラノーマの転帰を改善

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転移性メラノーマ治療歴のある患者の全生存率および無増悪生存率が、試験薬イピリムマブ(ipilimumab)による治療により改善された。この報告は第3相臨床試験の結果として、2010年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。
メラノーマは最も悪性度の高い皮膚癌で、米国では毎年およそ6万8000人が新たに診断され、8,700人が死亡している。転移性メラノーマの有効な治療法を発見するには課題が多く、研究が続けられている。

試験薬であるイピリムマブは、CTLA4として知られる分子を標的とする。CTLA4はT細胞の表面に存在し、免疫反応を抑制する働きがあると考えられている。そのためCTLA4を標的とすれば、腫瘍細胞に対する患者の免疫反応を強められる可能性がある。

メラノーマ治療におけるイピリムマブの有効性を評価するため、第3相国際共同臨床試験が行われた。この臨床試験ではステージ3またはステージ4のメラノーマ治療歴のある患者676人が対象となった。

患者を3つの治療群、すなわち、(1)イピリムマブ投与群、(2)イピリムマブおよびgp100ワクチン併用群、(3)gp100ワクチン単独投与群に割り付けてこの臨床試験は行われた。gp100ワクチンは、T細胞がメラノーマ細胞を攻撃するのを活性化するように設計された実験的メラノーマワクチンである。中等度の抗癌活性を示し,インターロイキン2(IL-2)よりも治療効果が高いことがこれまでの研究で明らかになっている。

今回の臨床試験の結果は以下のようなものであった。

・ 生存期間中央値は、イピリムマブを投与された二つの治療群が10カ月なのに対し、gp100ワクチ単独投与群は6カ月半であった
・ 2年生存率は、イピリムマブのみを投与された治療群が24%、イピリムマブとgp100併用投与群は22%、gp100ワクチン単独投与群は14%であった
・ 6カ月無増悪生存率は、イピリムマブを投与された二つの治療群の患者で30%、gp100ワクチン単独投与群の患者は11%であった
・ イピリムマブの忍容性は一般的に良好であったが、10〜14%の患者に発疹や大腸炎(結腸の炎症)などの深刻な副作用が認められた。gp100で治療された患者では、約3%に同様の副作用が認められた。

この結果は、転移性メラノーマにおいてイピリムマブが癌の進行を遅らせ、治療歴のある患者の全生存率を上げる可能性があることを示している。イピリムマブにgp100ワクチンを追加してもイピリムマブ単独投与による治療効果を上回ることはなかった。

参考文献:
O’Day S, Hodi FS, McDermott DF et al. A phase III, randomized, double-blind, multicenter study comparing monotherapy with ipilimumab or gp100 peptide vaccine and the combination in patients with previously treated, unresectable stage III or IV melanoma. Presented at the 2010 annual meeting of the American Society of Clinical Oncology. June 4-8, 2010. Chicago, IL. Abstract 4.


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翻訳担当者 内田彩香

監修 関屋 昇(薬学)

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