電子メールを利用し、免疫療法薬治療の外来待ち時間を1時間以上短縮

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCOの見解から引用

「患者も医師も、がん治療にかなりの時間が必要となり、これは時間毒性と呼ばれます。患者は待合室でそれを感じ、医師は自分を必要としている患者に対応する時間を確保しようとする時にそれを感じます。今回のような介入は、不要な外来診察など、がん治療に伴う患者の時間的負担を軽減するための一つの方法であり、医師においても、対応がより必要と思われる患者を診ることができます。患者にも病院にも利益をもたらす可能性があります」。
-ASCOの専門家、Toby Campbell医師(MS)

研究要旨

目的がん免疫療法の時間毒性を軽減するための介入
対象者固形がんに対して免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けている患者40人
主要な結果テキスト情報に基づくオンライン緊急度判定(e-トリアージ)プログラムは、免疫療法薬治療を受けている患者のがん治療における時間毒性の軽減に役立った。
意義これまでの研究から、患者報告アウトカム(PRO)を電子データで収集することで、免疫療法の毒性について患者を効果的にスクリーニングできることが示されている。

本研究は、電子PROを患者のがん治療提供の合理化に利用できるかどうかを検証した初めての研究である。

テキスト情報に基づくオンライン緊急度判定(e-トリアージ)プログラムを通常の臨床検査と併用することで、患者は免疫チェックポイント阻害薬による治療を安全かつ迅速に受けることができ、主治医の対面診察による評価が不要となり、患者の通院1回あたりの受診時間を66分、待ち時間を30分短縮できることが新たな研究で示された。本研究は、10月27日から28日までボストンで開催される2023年米国臨床腫瘍学会(ASCO)クオリティケア・シンポジウムで発表される。

研究について

「免疫療法薬治療を受ける患者に対する現在の標準的ケアは、検査によるスクリーニングと治療薬投与前の医師による診察です。このため、各ステップの間に待ち時間が生じ、病院滞在時間が過度に長くなってしまいます。われわれの仮説は、一部の患者は順番を待って医師の診察を受けなくても安全に点滴を受けることができ、時間を短縮できるのではないかというものです」と研究筆頭著者のErin Mary Bange医師は述べた。

研究者らはランダム化比較試験を実施し、テキストメッセージによる質問票と臨床検査の併用(e-トリアージ)によって、医師の診察を受けずに安全に免疫療法薬治療に直接進んでよい患者を特定できるかどうかを検討した。本試験への患者の参加要件は、英語を話すこと、テキストメッセージの送受信が可能な携帯端末を使用できること、固形がんに対して免疫チェックポイント阻害薬単剤治療を受けていることであった。本試験に参加した患者の年齢中央値は67.5歳、白人84.6%、黒人7.7%、アジア人5.1%、その他2.6%で、がんセンターから33マイル(約53.1キロ)以内に居住していた。

本試験のe-トリアージ群では、治療予定時刻の96時間前に、双方向のテキストメッセージ送受信と通常の臨床検査によって、免疫チェックポイント阻害薬の毒性症状について患者を評価した。血液検査結果が正常で症状が確認されなかったe-トリアージ群の患者は、診察を受けずに治療を受けることができた。通常ケアには標準的な外来診察が含まれていた。

重要な結果

本試験の主要評価項目は、ケア全体にかかる時間、すなわち外来受診1回にかかる合計時間(家と医療機関の往復時間、待ち時間、点滴時間、検査時間を含む)であった。副次的評価項目は、受診1回あたりの患者待ち時間、追跡期間中の救急外来または病院の受診、健康関連QOL、患者満足度であった。実施に関するアウトカムは、採用率(打診した患者のうち試験に参加した患者の割合)と忠実度(介入群のうち、割り当てられたトリアージに従った患者の割合)であった。

対象患者152人のうち、51人が研究に同意した(採用率33.6%)。

19人の患者をe-トリアージ群、21人の患者を通常ケア群に無作為に割り付けた。研究に同意した患者のうち11人は不参加を選択した。

e-トリアージ群の診察52回のうち、e-トリアージ評価に基づく診療手順が順守されたのは23回であった。

通常ケア群と比較して、e-トリアージ群は1回あたりのケア時間が66分短く、待ち時間は30.1分短かった。

救急外来または病院受診の発生率に関して両群間に差はなかった(通常ケア群:n=2、12.5% vs 介入群:n=3、20%)。健康関連QOLと患者満足度スコアは両群間で同程度であった。

「医師と患者から得られたフィードバックによれば、人によるひと手間を加える、たとえばトリアージ後に電話をかけるだけでも、プログラムに対する信頼が増し、医師も患者も介入を受け入れやすく感じるでしょう」と、研究共著者であるKerry Q. Coughlin氏(MSW、Penn Center for Cancer Care InnovationのInnovation and Engagement Manager)は述べる。

次のステップ

研究者らは、テキスト情報に基づく症状報告手順に腫瘍内科看護を統合する方法をさらに検討し、本プログラムを拡大して、在宅モニタリングサービスを加える予定である。

本研究は米国臨床腫瘍学会(ASCO)のConquer Cancer Foundationから資金提供を受けた。

  • 監訳 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/奈良県総合医療センター)
  • 翻訳担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2023/10/23

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