がんのリハビリテーションとは
がんとその治療は、身体的、心理的、認知的な問題を引き起こすことがよくあります。 これらの問題により、日常の活動や、仕事への復帰が困難になる可能性があります。さらに健康への影響が持続することもあります。 がんのリハビリテーションは、治療中や治療後に発生する可能性があるこれらの問題の解決に役立ちます。 がんのリハビリテーションの目標は以下の通りです。
・可能な限り活動的な状態を維持し、仕事や家庭、その他の生活上の役割に参加できるように支援する
・がんとその治療による副作用と症状を軽減する
・可能な限り自立した状態を維持するための支援をする
・生活の質を向上させる
がんのリハビリテーションは、訓練を受けた専門家によって行われ、治療中、経過観察中、または治療後も一緒に訓練することができます。
がんのリハビリテーションで対応できる問題
身体的な問題
がんやがんの治療はさまざまな種類の身体的な問題を生じる可能性がありますが、がんのリハビリテーションは、その多くの解決に役立ちます。例えば、次のような症状に有用です。
・痛み
・腫れ
・脱力感や体力低下
・可動域や柔軟性の低下
・持久力の低下
・放射線治療による皮膚の変化
・リンパ浮腫
・バランスの崩れや転倒の危険
・手足のピリピリ感やしびれなどの神経障害
・疲労
・性機能障害
・嚥下困難(飲み込みにくさ)
・食べ物の咀嚼困難(噛みにくさ)
がんの身体的副作用やがん治療についての詳細は「身体的副作用の管理(原文)」をご参照ください。
可動性の問題
可動性の問題は、人の動き方に影響を与えます。次のような動きが困難な場合は、がんのリハビリテーションが役に立ちます。
・床から立ち上がること
・椅子から立ち上がること
・階段を上ること
・歩くこと
・服を着替えること
・シャワーを浴びること
認知機能の問題
認知機能の問題は、その人の知的能力に関係しています。次のような問題がある場合は、がんのリハビリテーションについて主治医に相談してみるとよいでしょう。
・一度に複数の作業をこなすことが困難である
・頭がぼんやりしたり、気分が晴れなかったりする
・記憶障害
がん患者やがんサバイバーが経験する認知機能の問題についての詳細は「注意力、思考力、記憶力の問題(原文)」をご参照ください。
がんのリハビリテーション専門職の種類
以下に説明する専門家は、がんケアチームの一員となりうるさまざまなリハビリテーション専門家の一例です。患者のニーズに応じて、治療中や回復期にこれらの専門家のうち複数の診断を受けることもできます。これらの専門家との面談時に何が期待できるか、またどのように準備するかについての詳細は「がんのリハビリテーョンに期待できること(原文)」をご参照ください。
・理学療法士(PT) 理学療法士は、人々の運動能力の向上や回復を支援することを専門としています。また、痛みの軽減や解消を支援することもできます。腫瘍理学療法士は、特にがん患者やがんサバイバーを対象としています。
・作業療法士(OT) 作業療法士は、日常生活の中で患者の機能、快適性、安全性を最大限に引き出す支援をします。これには、入浴や着替えなどの日常的な作業の遂行が含まれます。家庭、学校、職場などにおける、ものの配置に基づいて計画を立てます。また、作業療法士は、特定の作業に必要な労力を軽減する方法を指導し、これは疲労やその他の制限を生じる状態を管理するのに役立ちます。
・言語聴覚士(SLP) 言語聴覚士はコミュニケーションと嚥下障害を専門としています。頸部がん患者が、放射線治療や化学療法の後に嚥下や食べる能力を維持するのを支援します。言語聴覚士はまた、認知機能障害を持つ人々の記憶力や考えをまとめる力の向上を支援します。
・リハビリテーション科医 リハビリテーション科医は、理学療法やリハビリテーションの専門家といえます。人々の動き方や機能を変えてしまう神経、筋肉、骨の障害の予防、診断、治療を専門としており、多くの場合、患者と共に痛みの緩和に取り組みます。
・リンパ浮腫セラピスト リンパ浮腫セラピストは、リンパ浮腫を評価し、治療します。むくみを軽減し、痛みをコントロールすることに焦点を当てています。圧迫帯、特殊なマッサージ、包帯法、エクササイズなどを用いることがよくあります。
・認知心理学者 認知心理学者は、神経心理学者とも呼ばれ、行動が脳機能とどのように関係しているかを理解する専門家です。「ケモブレイン」(がん患者が治療中および治療後にしばしば直面する認知機能の問題を表すために使われる用語)の管理を支援することがよくあります。
・職業カウンセラー 職業カウンセラーは、治療中または治療後の職場復帰を支援します。日常業務に関連した作業を、より容易に行う方法を身につけることができるように手助けします。詳細は、「がん治療後の職場復帰(原文)」および「がんになってからの就労(原文)」をご参照ください。
・レクリエーションセラピスト レクリエーションセラピストは、患者のストレス、不安、抑うつを軽減することで、身体的、精神的、感情的な幸福をもたらし、維持する手助けをします。さらに、患者の自信を築き、個人的な能力を高めるのにも役立ちます。レクリエーション療法は、アート、運動、ゲーム、ダンス、音楽などを通じ、さまざまな方法で治療サービスを提供します。
・栄養士 栄養士は、食品および栄養の専門家です。腫瘍科に関わる栄養士は、特定のがんに対する栄養ガイドラインや、治療中の支持的栄養を理解するのを支援します。さらに、がんの再発リスクを減らすために健康的な食事パターンを採り入れる手助けもしています。詳細は、「がん治療中およびがん治療後に推奨される栄養(原文)」をご参照ください。
・運動生理学者 運動生理学者は、患者の体調を分析して機能向上に役立てます。負荷試験やその他のツールを用いて、心血管機能や代謝を評価します。また、治療中および治療後の患者のニーズに合わせたフィットネス計画を立案することもできます。
がんのリハビリテーションを受けるタイミング
ご自身が受ける医療に主体的な役割をもつことができます。活動的でなくなったり、日常的な作業がより困難になったりする症状の変化に気づいたら、いつでも医療チームにがんのリハビリテーションについて相談しましょう。以下のことを自問自答してみてください。
・出歩くのが困難になってきたか
・痛みや脱力感、その他の症状があるか
・考えがまとまらないことがあるか
気づいた変化を悪化させないためには、できるだけ速やかに対処することが重要です。例えば、わずかな関節の硬さのために頭上に手を伸ばしにくくなると、腕を使う回数が減ることになります。その結果、時間の経過とともに腕の力が弱くなり、関節がより硬くなります。また、わずかなむくみが、実際に悪化する前に治療できる浮腫の初期症状であることもあります。
がんの治療を開始する前にがんのリハビリテーション専門家に診てもらうことを、医療チームに相談してみるのもよいでしょう。リハビリテーションの専門家は、問題が起こる前の体力、運動性、活動性を評価できるので、治療期間中やその後の経過を観察して、深刻になる前に問題を発見することができます。このようなアプローチにより、生活の質を向上させ、仕事や家庭生活に影響を与える症状や問題を減らすことができます。
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