がん患者の血栓(深部静脈血栓症:DVT)予防
【1】がん患者とがんサバイバーは、静脈血栓の発生リスクが高く深刻な健康問題が生じる場合があります
深部静脈血栓症(DVT)とは、深部静脈で血栓が形成されることです。こうした血栓は通常、下腿、膝、骨盤で発生しますが、腕で発生する可能性もあります。深部静脈血栓がはがれ、肺に到達する場合があり、これを肺塞栓症(PE)と呼びます。
がん患者の方々、特に化学療法を受けているがん患者さんでは、深部静脈血栓症(DVT)の発生リスクは他の患者よりも顕著に高く、脳腫瘍、膵臓がん、胃がん、肺がんの患者で最も発生リスクが高くなります。
● 深部静脈血栓症(DVT)の発生リスクを高める状況
深部静脈血栓症の発生リスクを高める状況はいくつか考えられます。がん患者さんで最も一般的な危険因子は以下のとおりです。
・大きな手術中の静脈損傷
・血流の速度低下。長期臥床によって生じる場合がある
・中心静脈カテーテル。長期化学療法で中心静脈カテーテルの留置を受けるがん患者さんの半数で深部静脈血栓症(DVT)が発生している
・加齢
・肥満
がんに伴う血栓の危険因子の詳細リスト(原文)と【2】がん患者の血栓リスクチェックリスト(ページ下部)を参照。
● 深部静脈血栓症(DVT)の発生リスクを低下させる方法
手術または中心静脈カテーテルの留置を受ける前に、血栓が発生する可能性を低下させる薬剤について主治医に確認してください。こうした薬剤は、抗凝固薬または抗血小板薬 と呼ばれています。
臥床する(ベッドに寝た状態)必要がある場合、ベッドで脚のエクササイズを行ってみてください。また、できるだけ起床して歩き回るようにしてください。
● 深部静脈血栓症(DVT)の症状
深部静脈血栓症(DVT)患者の約半数ではまったく症状が出ません。深部静脈血栓症(DVT)の最も一般的な症状は以下のとおりです。
・腫脹
・疼痛
・圧痛
・皮膚発赤
これらの症状のいずれかがある場合、すぐに主治医に連絡してください。
血栓のこうした徴候のいずれかが腕や脚にあった場合、主治医に連絡してください。
・腫脹
・外傷によらない疼痛または圧痛
・触れると熱感がある皮膚
・皮膚発赤または変色
● 深部静脈血栓症(DVT)がもたらす健康問題
【肺塞栓症(PE)】
深部静脈血栓症(DVT)の一部は血流に乗って肺に移動する。これは、肺塞栓症(PE)として知られています。血栓が小さく正しい治療を受けている場合には治癒する可能性はありますが、大きな血栓が血液の肺への到達を妨げると、死亡する危険もあります。肺塞栓症は、米国では、がん患者さんにとってがん自体を除いた死亡原因の主たるものです。
肺塞栓症(PE)は以下の症状をもたらす。
・呼吸困難
・速いまたは不規則な心拍
・咳や深呼吸をすると悪化する場合が多い胸痛
・喀血
・低血圧、意識朦朧、または失神
こうした症状のいずれかがある場合、すぐに主治医を呼んでください。
がんの発見に用いられるCTスキャンまたはCATスキャン(コンピュータX線体軸断層撮影法またはコンピュータ断層撮影法)と呼ばれる検査により肺塞栓(PE)が見つかることが多く、がん患者さんにおける肺塞栓症(PE)は半数がこの検査で見つかっています。
これらの肺塞栓症(PE)の徴候のいずれかがある場合、緊急に医師による治療を受けてください。
・呼吸困難
・咳や深呼吸により悪化する胸痛
・喀血
・正常時より速いまたは不規則な心拍
・血栓後症候群
【血栓後症候群】
患者のほぼ3分の1が、結果として長期にわたる健康問題を抱えます。これを血栓後症候群(PTS)と呼びます。血栓後症候群(PTS)は、腫脹、疼痛、皮膚の色素沈着または発赤などの問題を引き起こす。皮膚から感染しやすく(蜂窩織炎)、血流に広がり、敗血症や死亡に至る可能性があります。
[注:深部静脈血栓症(DVT)が心臓発作や脳卒中を引き起こすことはありません。動脈が酸素を豊富に含む血液を身体から心臓へと運ぶためです。動脈中の血栓は動脈血栓と呼ばれ、心臓発作や脳卒中を引き起こします。]
Stop the Clot, Spread the Wordキャンペーン
血栓の5分の1が、がんとその治療に関連しています。このキャンペーンは、血栓のリスク、症状および防止について学ぶことを目的としています。
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Youtube動画 『深部静脈血栓症(DVT)を予防しましょう』
National Blood Clot Alliance Stop® the Clot Channel
がん治療中の患者の健康を守る――本動画では、血栓の徴候と症状に関する重要な情報およびがん患者の血栓の危険因子を伝えています。
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Youtube動画 『深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症』
A Look at Deep Vein Thrombosis and Pulmonary Embolism
本動画では、乳がんサバイバーを含む数人が、深部静脈血栓症(DVT)であることを知った経緯と受けた治療についての話を伝えている。主治医が、患者が深部静脈血栓症(DVT)を防止するために知る必要がある3つのポイントについて説明している。
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【2】がん患者の血栓リスクチェックリスト(原文)
がんに関連する血栓症リスク因子
がん種および病期
*膵臓がん、胃がん、脳腫瘍、肺がん、卵巣がん、腎臓がん
* リンパ腫、骨髄腫など血液腫瘍
*最近、または数カ月以内に診断されたがん患者
*進行したがん、終末期がん
がん治療の種類
*入院
*手術
*化学療法、ホルモン剤による治療
*カテーテル治療(静脈に細い管を留置するさまざまな治療)
血栓を引き起こすその他のリスク因子
*血栓の病歴
*血栓の家族歴または遺伝性凝固異常
*病気入院、大手術(特に骨盤、腹部、腰、ひざなど)
*骨折、または重度の筋損傷
*重度の身体外傷(交通事故など)
*重篤な健康状態(心肺疾患や糖尿病など)
*長時間の座位姿勢(4時間以上の旅、特に足を組んだ状態)
*その他の理由による不動状態(長期にわたる床上安静など)
*過体重や肥満
*喫煙
翻訳担当者 会津麻美、野中 希
監修 佐々木裕哉(白血病/MDアンダーソンがんセンター)
原文掲載日
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