高齢のがん患者では代替医療の利用率が高い

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代替医療は、少なくとも無害で、さまざまな不快症状や病気の軽減に役立つことが多いと広く考えられている。しかしながら、多くの代替医療は「天然物・無添加」として販売されているものの、他の治療と化学的、生物学的に反応しうる活性成分を含むことも多い。研究者らが高齢のがん患者が摂取する薬剤すべての包括的レビューを実施した結果、26%が補完代替医療(CAM)を利用していることがわかったと、8月12日付けJournal of Geriatric Oncology誌で公表された。

「現在、自身の担当患者が利用している代替医療を把握している腫瘍専門医はほとんどいません」と、トーマス・ジェファーソン大学ジェファーソン薬学部のGinah Nightingale助教(薬学博士)は言った。「CAMは安全、天然物・無添加、無毒であり、受けているがん治療には影響しないと思っていたり、医師がCAMに反対するだろうと考えたり、あるいは医師が特に尋ねないという理由から、患者は利用しているCAMのことを医師に話していないということはよくあります」。

特定のがん治療を妨げるCAMはたくさんある。例えば、米国国立衛生研究所(NIH)によると、セントジョンズワート(西洋オトギリソウ)はいくつかのがん治療の効果を弱める可能性がある。がんの手術中の麻酔を阻害するものもある。しかし、すべての相互作用が調査されているわけではない。CAMは健康補助食品に分類されているため、米国食品医薬品局(FDA)による規制を受けていない。そのため、商品や患者によって摂取量や効能(体内での反応)が大きく異なってくる。

さらに高齢のがん患者では、さまざまな病気や不調の治療ですでに数多くの薬剤を使用している上に、CAMでさらに薬剤が追加されることになる。「数えきれないほどの錠剤、つまりわれわれが多剤投与と呼ぶ状況は、さまざまな疾病に罹り、複数の薬を服用している人々においては、服薬不遵守や潜在的な薬物相互作用のリスクを高め、薬物疾患相互作用のリスクを高める可能性があります。こうした人々のCAM利用は当然、腫瘍内科医や医療従事者にとって相当の関心事項となります。なぜならCAM利用に関連する臨床的意義が潜在するからです。患者は、全身化学療法、放射線治療、外科的処置を受けながら、CAMも併用している可能性があり、その場合、治療介入の安全性と効能が損なわれる可能性があります」とNightingale医師は言った。

Nightingale医師らは、ジェファーソン大学病院の高齢者総合腫瘍クリニックを受診した高齢がん患者を調査した。患者は1回の外来診察で、がん治療全般にわたり高齢者の健康維持に不可欠な5つの領域の専門家、つまり腫瘍内科医、老人病専門医、臨床薬剤師、ソーシャルワーカー、栄養士の診察を受けた。この評価の一環として、患者は診察時に薬箱の中身を持参し、頻繁に使用していた薬剤が調査、記録された。

本研究チームにより、一連のがん治療中のある時点で患者の26%がCAMを使用しており、特に80歳以上の女性(これまでの研究で対象とされなかった層)で使用率がもっとも高いことがわかった。CAMを使用している患者においては、68 %が80歳以上であった。

この層で広く利用されているCAMの中には黄斑変性症に対する代替医療、プロバイオティクス、関節の健康、ビタミンやミネラルの大量摂取もあった。今回の研究はCAMが誘発しうる有害事象について調査していないが、「身体や他の薬剤に生化学的影響を及ぼす可能性もある」とNightingale医師は言う。

「CAMを含め、高齢がん患者が利用するすべての医療を包括的にスクリーニング調査することは大変重要です。CAM利用に関する明確で隠し立てのない記録を患者カルテに記載すべきです。この記録には、患者がこれらの医薬品の使用継続について、医師らと十分に情報共有をしたうえで患者自ら意思決定できるように、患者にあわせた話し合いや説明が行われたことも記載すべきです」とNightingale医師は述べた。

「がん患者の健康管理は、効果的な臨床サービスの提供に関して大きく変容しつつあり、薬剤処方を最適化するために、薬剤関連問題や不必要な薬剤の削減に向けた薬剤師の関与を強化すべき時期を迎えています」とNightingale医師は言う。

出典:トーマス・ジェファーソン大学


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翻訳担当者 宮本満里

監修 大野 智(腫瘍免疫学、免疫療法、補完代替医療/帝京大学・東京女子医科大学)

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