代謝プログラミングと細胞老化におけるMETTL3の新たな役割が明らかに
MDアンダーソンがんセンター
がんを進行させる最も初期のメカニズムを解明する上で特に注目されているのが、細胞老化(細胞が成長を停止するが機能は継続)と呼ばれるストレス応答細胞の状態である。細胞老化はがんを予防する役割を持つことが知られているが、その根本的なメカニズムはほとんど解明されていない。Rugang Zhang博士が率いる研究チームは、遺伝子発現を制御するメチル基転移酵素METTL3の役割を調べることで、これらのメカニズムの一端を明らかにした。研究者らは、METTL3 がいくつかの方法で細胞老化に寄与していることを発見した。特にクロマチン ループを介することで、ヘキソキナーゼ 2 の発現を誘導し、相分離によるストレス顆粒形成と呼ばれるプロセスを促進する。このプロセスは、細胞増殖を促進する特定のタンパク質の産生を停止させる代謝プログラミングの一形態である。このメカニズムは重要な発見であり、これまで知られていなかったMETTL3の役割が、がんの増殖にどのように寄与しているのかについての洞察を与えてくれる可能性がある。詳細はNature Communications誌を参照のこと。
MDアンダーソン研究ハイライト:2024/07/11特集
【がんの発生と進化における発見、ユーイング肉腫、乳がん、肺がんの治療法の改善、新しい疾患分類】
テキサス大学 MD アンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは、MD アンダーソンの専門家による最近の基礎研究、トランスレーショナル研究、臨床がん研究の概要を紹介している。これらの進歩は、世界をリードするMDアンダーソンの臨床医と科学者による、垣根を超えた継ぎ目のない連携によって可能となり、研究室から臨床へ、そしてまた研究へと発見がもたらされる。
MDアンダーソンにおける最近の進展は、代謝プログラミングと細胞老化を制御するメカニズムに関する洞察、ユーイング肉腫患者に対する新たな治療選択肢、肺がんにおけるRAS阻害薬の有効性を高める個別化治療戦略、BRCA関連乳がんに対する実行可能な治療選択肢としての乳房温存療法、抗腫瘍活性を損なうことなく重篤な免疫療法の副作用を軽減すること、骨髄性腫瘍の新たな疾患分類などである。
- 監訳 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
- 翻訳担当者 青山真佐枝
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- 原文掲載日 2024/07/11
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