新たな計算ツールにより、がん進化の複雑な段階がより深く理解可能に
MDアンダーソンがんセンター
がんが進化するにつれて、遺伝子の変化が蓄積され、その変化を追跡することで、がんの生物学的性質をより詳しく知ることができる。コピー数の変化は、DNAの断片が増えたり失われたりするものであるが、多くの場合、複雑で、複数の段階を経て起こるため、再構築が困難である。Peter Van Loo博士らは新たな研究で、がんの進化の過程でコピー数の変化がどのように生じるかをよりよく決定するための、がんにおけるゲインルートの同定とタイミング(Gain Route Identification and Timing In Cancer:GRITIC)と呼ばれる新しいアルゴリズムの開発について報告した。研究者らは、このツールを標準的な基準によって評価後、複数のコホートから得られた6,091の原発性および転移性腫瘍にGRITICを適用した。その結果、コピー数の進化は、これまで理解されていたよりも複雑な経路で起こることがわかった。さらに、細胞がゲノム全体を複製する全ゲノム重複が認められるケースでは、染色体不安定性が増加することも発見された。研究者らは、このツールががんの進化をよりよく理解し、将来の早期発見、予防、治療戦略に役立つと期待している。詳細はCancer Discovery誌を参照のこと。
MDアンダーソン研究ハイライト:2024/07/11特集
【がんの発生と進化における発見、ユーイング肉腫、乳がん、肺がんの治療法の改善、新しい疾患分類】
テキサス大学 MD アンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは、MD アンダーソンの専門家による最近の基礎研究、トランスレーショナル研究、臨床がん研究の概要を紹介している。これらの進歩は、世界をリードするMDアンダーソンの臨床医と科学者による、垣根を超えた継ぎ目のない連携によって可能となり、研究室から臨床へ、そしてまた研究へと発見がもたらされる。
MDアンダーソンにおける最近の進展は、代謝プログラミングと細胞老化を制御するメカニズムに関する洞察、ユーイング肉腫患者に対する新たな治療選択肢、肺がんにおけるRAS阻害薬の有効性を高める個別化治療戦略、BRCA関連乳がんに対する実行可能な治療選択肢としての乳房温存療法、抗腫瘍活性を損なうことなく重篤な免疫療法の副作用を軽減すること、骨髄性腫瘍の新たな疾患分類などである。
- 監訳 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
- 翻訳担当者 青山真佐枝
- 原文を見る
- 原文掲載日 2024/07/11
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
がん治療に関連する記事
一部のメラノーマ、乳がん、膀胱がんで術前/術後の免疫療法薬投与により長期生存が改善
2024年10月9日
免疫チェックポイント阻害薬投与後のアバタセプト投与は、抗腫瘍活性を損なうことなく副作用を軽減
2024年9月2日
代謝プログラミングと細胞老化におけるMETTL3の新たな役割が明らかに
2024年8月30日
JAK阻害薬併用による免疫チェックポイント阻害薬の効果向上が2つの臨床試験で示される
2024年8月21日