ビスフォスフォネート剤の長期服用と非定型大腿骨骨折の関連性

キャンサーコンサルタンツ

Journal of the American Medical Association誌が発表した研究によると、骨粗鬆症治療薬ビスフォスフォネートの長期服用は非定型大腿骨骨折リスクを増大させる可能性がある。しかし、これらの非定型大腿骨骨折リスクは低く、大腿骨頸部骨折リスクの低減など、ビスフォスフォネート剤の確立された有効性と兼ね合わせて考慮されるべきである。

骨粗鬆症の特徴は骨密度の減少や骨構造の劣化である。アメリカでは50歳以上でおよそ1000万人の患者が存在する。毎年150万人のアメリカ人が骨粗鬆症により骨折を経験する。主な骨折部位は、手首、股関節、背骨などだが、体のどの部位にも発症する。

骨粗鬆症治療に使用される薬剤には、ビスフォスフォネート剤(フォサマックス®[アレンドロネート]、アクトネル®[リセドロン酸]、ボニーバ®[イバンドロネート]、レクラスト®[ゾレドロン酸])、プロリア® [デノスマブ]、 カルシトニン、エストロゲン、エビスタ® [ラロキシフェン]、フォルテオ®[テリパラチド]などがある。骨粗鬆症の治療は大腿骨頸部骨折などの骨折リスクを低減する。 大腿骨頸部骨折は大腿骨(太ももの骨)の上部に発症し、高齢者の死因や肢体障害の主な原因となっている。

ビスフォスフォネート剤服用は大腿骨頸部骨折リスクを低減するが、服用者から「転子下骨折」 または 「大腿骨骨幹部骨折」の発症が報告されている。これらの骨折は大腿骨頸部骨折より大腿骨の下部に発症する。

ビスフォスフォネート剤の服用期間の違いによって、これらの非定型大腿骨骨折の発症率が異なるかどうかを調査するため、カナダの研究者らが経口ビスフォスフォネート剤を服用している68歳以上の多数の女性の情報を収集した。転子下骨折または大腿骨骨幹部骨折を経験した716人の女性と、大腿骨頸部骨折を経験した9,723人の女性の情報が利用された。

  • ビスフォスフォネート剤の超短期服用者 (100日より短い期間)に比べ、5年以上服用する人は転子下骨折または大腿部骨幹部骨折のリスクが2倍増大する。 全体からみて、これらの骨折のリスクは依然としてかなり低いものの、5年以上ビスフォスフォネート剤を服用する52,000人以上の女性のうち、117 人(0.22%)が2年以内に非定型大腿骨骨折を経験した。
  • 本研究で、ビスフォスフォネート剤の長期服用は大腿骨頸部骨折リスクを軽減することが確認された。ビスフォスフォネート剤を5年以上服用する人は大腿骨頸部骨折リスクが24%低減した。

これらの結果はビスフォスフォネート剤の長期服用は、骨粗鬆症が原因で発症する典型的な骨折リスクは低減するが、高齢者女性において非定型大腿骨骨折のリスクを上昇させることを示唆している。

「重要なことは、本研究の結果により臨床医および患者が、ビスフォスフォネート剤の使用が適切な場合に、服用を中止しないことである。 われわれの研究により、骨粗鬆症による典型的な骨折予防のための、ビスフォスフォネート剤の確立された有効性が確認された。そして、ビスフォスフォネート剤治療の骨折予防という確立された有効性にもかかわらず、ハイリスク患者に対して十分に活用されていないことが示された」と研究結果の論議の部分で研究者らは記している。

参考文献:
U.S. Department of Health and Human Services. Bone Health and Osteoporosis: A Report of the Surgeon General. Rockville, MD: U.S. Department of Health and Human Services, Office of the Surgeon General, 2004.
Park-Wyllie L, Mamdani MM, Juurlink DN et al. Bisphosphonate use and the risk of subtrochanteric or femoral shaft fractures in older women. JAMA. 2011;305:783-789.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved. These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein. Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc. 本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。 Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 芝原 広子

監修 野長瀬祥兼(工学/医学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

がん治療に関連する記事

一部のメラノーマ、乳がん、膀胱がんで術前/術後の免疫療法薬投与により長期生存が改善の画像

一部のメラノーマ、乳がん、膀胱がんで術前/術後の免疫療法薬投与により長期生存が改善

体の免疫系ががん細胞を認識して破壊できるようにすることで効果を発揮する免疫療法薬により、進行メラノーマ(悪性黒色腫)患者の長期全生存率が改善したという大規模国際共同試験の結果がESMO...
免疫チェックポイント阻害薬投与後のアバタセプト投与は、抗腫瘍活性を損なうことなく副作用を軽減の画像

免疫チェックポイント阻害薬投与後のアバタセプト投与は、抗腫瘍活性を損なうことなく副作用を軽減

MDアンダーソンがんセンター抗CTLA-4療法や抗PD-1療法などの免疫チェックポイント阻害薬は、多くの患者に劇的な抗腫瘍効果をもたらしてきた。しかし、心筋炎(生命を脅かす可能性のある...
代謝プログラミングと細胞老化におけるMETTL3の新たな役割が明らかにの画像

代謝プログラミングと細胞老化におけるMETTL3の新たな役割が明らかに

MDアンダーソンがんセンターがんを進行させる最も初期のメカニズムを解明する上で特に注目されているのが、細胞老化(細胞が成長を停止するが機能は継続)と呼ばれるストレス応答細胞の状態である...
新たな計算ツールにより、がん進化の複雑な段階がより深く理解可能にの画像

新たな計算ツールにより、がん進化の複雑な段階がより深く理解可能に

MDアンダーソンがんセンターがんが進化するにつれて、遺伝子の変化が蓄積され、その変化を追跡することで、がんの生物学的性質をより詳しく知ることができる。コピー数の変化は、DNAの断片が増...