X線検査による医療被曝の低減に向けて

X線検査による
医療被曝の低減に向けて

 Consumer Health Information 
www.fda.gov/consumer 20092

原文URL 

‘Reducing Radiation from Medical X-rays’

http://www.fda.gov/downloads/ForConsumers/ConsumerUpdates/UCM185316.pdf

FDA Consumer Health Information / U.S. Food and Drug Administration FEBRUARY 2009

[画像]

医学にもたらされた最も著明な功績のひとつは、外科医がメスをふるうことなく体内をみられるX線の利用である。

「医療用放射線装置が利用できるようになる前には、事故にあって重傷を負った人がいた場合、どこを損傷しているのかを調べるために試験開腹が必要となることがよくありました」と、米国食品医薬品局(FDA)のマンモグラフィ品質管理・放射線プログラム部問(Division of Mammography Quality and Radiation Programs)副室長、物理学者の米国公衆衛生局長Thomas Ohlhaber氏は述べる。

「しかし現在では、重傷で救急室に運ばれたとしても数分以内にX線検査を受けることができます。それも高性能なコンピュータ断層撮影である「CT」装置を使うことが多く、損傷を評価して、かなり深刻な事態になる前に迅速に治療することができます」。

X線は事故による損傷部を特定するほか、さらに多くのことに用いられ、さまざまな疾患のスクリーニング、診断および治療に用いられています。X線は骨折から肺炎、心疾患、腸閉塞や腎結石まで、健康の問題を特定するために頭からつま先まで、体のほぼあらゆる部位に用いられます。さらに癌性腫瘍を見つけ出すだけでなく、それを破壊することも少なくありません。

医療用X線には、すばらしい価値とともに難点もあります。それは、人を放射線に曝露させることです。FDAは、X線装置をはじめとした放射線機器を規制対象としていますが、X線検査から最大の恩恵を受ける一方で、私たち一人一人が放射線被曝の低減においても重要な役割を担っています。

• 1980年代初頭、アメリカ合衆国人口に対する全放射線曝露において医療用X線が占める割合は約11%であった。現在では全放射線曝露のほぼ35%が医療用X線によるものであると推定されている。(放射性物質を用いて身体画像を描出する核医学画像技術が放射線曝露の約12%を占め、われわれが常時曝露されている環境中にある自然放射線が約50%である。)

• 1982年以降、医療用X線から受ける一人当りの放射線量がほぼ500%増大した。

• 今日、医療用X線による全曝露のほぼ半分がCT装置によるものであり、CT検査はほかのX線検査よりも放射線量が高い。

                  資料元 米国放射線防護測定審議会

X線とは何か

X線とは、衣類、体組織および内臓器官を貫通できる電磁波の一種です。X線装置は体を貫通する放射線を放出します。体を通り抜けて反対側から現れた放射線の一部が、フィルムを感光するかデジタル検出器に吸収されることによって画像が描かれます。放射線のなかには体組織に吸収されるものもあります。患者が受ける「放射線量」に影響を及ぼすのが体内に吸収された放射線です。

米国放射線防護測定審議会によれば、X線は疾病の早期発見と治療に効果があり、診療所や個人医院および病院ですぐに利用できるため、今日では以前よりも高い頻度でますます多くの人に対して用いられています。

X線の危険要素

医療用X線のリスクには次のようなものがあります。

·    生涯に発癌する確率がわずかに増える。

·    きわめて大量の放射線に曝露すると白内障および皮膚やけどを生じる。

癌を生じるわずかな危険は次の因子にも依存します。

·    X線検査を受ける回数が増えて蓄積された放射線量が増えるにしたがって、癌を発症する生涯リスクが高くなる。

·    X線検査を受ける時の年齢が若いほど癌を発症する生涯リスクが高くなる。

·    男女が同年齢で同じ照射線量を受けたあとでは、女性の方が男性よりも癌を発症する生涯リスクが幾分高い。

白内障や皮膚やけどの危険は主に、頻回に、または長時間使用されるX線透視下介入治療によるものです。このような種類の治療では、たとえば、冠状動脈から斑状肥厚性病変を切除する場所を決定するために、モニター画面にX線画像を連続的に映しだします(X線「動画」)。

「医療用X線はリスクよりも恩恵の方がはるかに大きいです」と、FDAの診断機器部問(Diagnostic Devices Branch)長で、エンジニアでもある米国公衆衛生局のSean Boyd氏は話しています。「消費者あるいは患者、または医師、物理士、放射線技師、技術士、製造会社や販売業者など、医療用X線に関わる誰もが放射線曝露を減らすために自分の責任を果たすことができます」。

消費者のための対策

医療用X線から受ける放射線のリスクを低下させる上で、消費者側の役割は重要です。FDAは次の対策を推奨しています。

線検査がどのように有用かを医療担当者に尋ねる

何が悪いのかを調べたり、治療を決定するために、X線検査はどのように役立つのでしょうか。リスクがより小さくて、十分な医学的評価や治療が可能な方法が他にあるかどうかを尋ねましょう。

X線検査を拒否しない

医療担当者から 医学的にX線検査が必要である理由の説明を受けたら、X線検査を拒否しないようにしましょう。必要なX線検査を受けないことによるリスクは、放射線による小さなリスクよりも大きいです。

X線にこだわらない

医療担当者からX線検査の必要はないという説明を受けたら、X線検査を要求しないようにしましょう。

妊娠しているかその可能性があれば、事前に放射線技師に伝えてください。

防護具が使えるかどうか尋ねる

本人または子どもがX線照射を受ける場合、鉛エプロンなど防護具を使うべきかどうか尋ねましょう。

歯科医にX線に高速(E・F感度)のフィルムを使用しているかどうか尋ねる

従来のD感度フィルムとほぼ同じ価格であり、少ない放射線量で同じ効果が得られます。フィルムの替わりにデジタル画像検出器を使えば、さらに線量を低減することができます。

自分の線歴を知る

「医者の診察を受けるときに薬の名前をリストにしておくことがあるように、歯科用X線をはじめ、これまでに受けた画像診断を記録してまとめておくことです」とOhlhaber氏は言っています。財布に入れておけるX線検査記録カードをこちら(http://www.fda.gov/downloads/Radiation-EmittingProducts/ResourcesforYouRadiationEmittingProducts/Consumers/UCM142630.pdf)からダウンロードすることができます。X線検査を受けるとき、日付、検査の種類、照会元の医師の名前、画像が保管される施設名と住所をカードに記録します。医療担当者にそのカードを見せて、体の同じ部位に不要なX線を重複して受けないようにしましょう。家族全員分の記録カードをつけましょう。

FDAの役割

FDAは、一般民が受ける放射線量の低減に努める一方、画像の品質を保持して精確な検査が実施されるように次のことをおこなっています。

·    放射線製品の性能基準を確立し、推奨する実施基準を定め、医療従事者、研究者、産業関係者および消費者に向けて教育活動を実施して、医療用X線検査が安全に使用され、不要な曝露が最小限に抑えられるようにする。

·    放射線量を低減する技術がさまざまな検査法や放射線装置の各種に組み込まれるように、専門家グループおよび産業界とともに国際安全基準の策定に取り組む。

·    毎年マンモグラフィ設備の視察およびマンモグラフィ装置(乳癌を検出するために有用なX線機器)の試験を実施して、放射線量、操作者、装置および画像の品質に関する基準が設定されているマンモグラフィ品質基準法に諸施設が確実に準拠するように各州と協力して取り組む。

·    業界で放射線量を低減させる技術が発展するのを監視する。装置製造業者がすでに、CTの新機種には線量低減のための最新技術をいくつか組み込んでいる。CTは多くの疾患の診断に用いられる標準手段であると考えられているが、アメリカ国民の総放射線量の大部分を占めるものでもある。

·    小児がX線検査を受けるときに必要な特別な対策に関して、保護者と医療従事者を教育するための全国的な取り組みである「Image Gently(優しい画像診断)」に参画する。(小児は医療用X線に対して成人よりも感受性が高い。)

この記事はFDAの消費者向け健康情報ページ(http://www.fda.gov/ForConsumers/default.htm)に掲載されています。このページにはFDAが規制する製品の最新情報が掲載されています。 無料メール配信をご希望の方はこちら(http://www.fda.gov/AboutFDA/ContactFDA/StayInformed/GetEmailUpdates/default.htm)のページにてご登録ください。

詳細は各ウェブサイトをご覧ください。

線検査記録カード

http://www.fda.gov/downloads/Radiation-EmittingProducts/ResourcesforYouRadiationEmittingProducts/Consumers/UCM142630.pdf

医療用X線検査

http://www.fda.gov/Radiation-EmittingProducts/RadiationEmittingProductsandProcedures/MedicalImaging/MedicalX-Rays/default.htm

放射線と小児(特に注意を要すること)

http://www.fda.gov/ForConsumers/ConsumerUpdates/ucm048578.htm

CTによる放射線リスクとは何か

http://www.fda.gov/ForConsumers/ConsumerUpdates/ucm115329.htm

RadiologyInfo 保護者のための放射線情報

http://www.radiologyinfo.org/

全身CT画像撮影

http://www.fda.gov/ForConsumers/ByAudience/ForWomen/WomensHealthTopics/default.htm

(※http://www.fda.gov/Radiation-EmittingProducts/RadiationEmittingProductsandProcedures/MedicalImaging/MedicalX-Rays/ucm115318.htm

米国放射線防護測定審議会

http://www.ncrponline.org

医療用X線: どの程度の放射線量を受けていますか。

よく用いられる医療用X線検査の放射線量と環境中の自然放射線に曝露することによって受ける放射線量との比較を下記の表に示した。たとえば、胸部X線1回による放射線曝露は、自然環境で曝露される放射線量10日間分に相当する。

放射線実効線量の測定単位はミリシーベルト(mSv)である。アメリカで生活する一般人は自然界から年間約3 mSvの実効線量を受ける。

X線検査法3種をあげる。

• コンピュータ断層撮影法(CT)とは体の部位の三次元画像を作成するものである。

• X線撮影法とは二次元画像を作成するものである。

• マンモグラフィとは乳房のX線撮影法のことである。

各撮影法

実効線量

実効線量と同等の

自然放射線量

腹部
腹部CT(コンピュータ断層撮影法)

10 mSv

3 年分

全身CT(コンピュータ断層撮影法)

10 mSv

3 年分

下部消化管X線撮影

4 mSv

16カ月分

上部消化管X線撮影

2 mSv

8カ月分

骨部
四肢X線撮影

0.001 mSv

1日分未満

胸部
胸部CT(コンピュータ断層撮影法)

8 mSv

3 年分

胸部X線撮影

0.1 mSv

10日分

婦人科画像診断
マンモグラフィ

0.7 mSv

3カ月分

Copyright © 2009 RadiologyIngo.org; American College of Radiology and Radiological Society of North America

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翻訳者 ギボンズ京子  編集 栃木和美

監修 者 中村光宏(医学放射線/京都大学大学院医学研究科) 

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