葉酸とビタミンB12は心疾患患者における癌リスクを高める

キャンサーコンサルタンツ
2009年11月

虚血性心疾患患者における葉酸とビタミンB12の補給は、癌発生リスクと全死因死亡率を増大させることが、ノルウェーの研究者らにより報告された。本試験の詳細は、2009年11月18日発行の米国医師会雑(JAMA)誌に掲載された[1]。

観察研究から、果物や野菜に富む食事は、癌発生のリスクを低く押さえることが示されてきている。しかしながら、体外からのビタミンの投与についての試験のほとんどが、癌発生に対する予防効果を示せなかった。ただし、大量のビタミンDの補充投与は例外であり、大腸腺腫、膵臓癌、そしておそらく乳癌についても発症を押さえる効果があるとみられる。

体外で作られたビタミン補助剤は、時として有害になることがわかっている。例えば、コクラン胆肝系グループに参加している研究者らによると、ベータカロチン、ビタミンA、ビタミンEの投与は死亡率を高める可能性があることが報告されている。葉酸およびビタミンB12と癌発生のリスク増大との関連性は認められていないが、葉酸は細胞分裂率を高めるので、癌患者においては腫瘍増殖を促進するかもしれない。ノルウェーと違い米国では葉酸が食物に添加されており、米国人はノルウェー人よりももともと葉酸値が高い。

本試験では、2件の別々のランダム化試験に参加している虚血性心疾患患者6,836人に対する葉酸とビタミンB12補給の効果を評価した。患者をランダム化し以下のいずれかを38カ月間投与した。

・葉酸とビタミンB12およびビタミンB6
・葉酸とビタミンB12
・ビタミンB6単独
・プラセボ

著者らは6.5年後、観察を行った。

・葉酸とビタミンB12を投与した患者のうち10%に癌が発生したのに対し、葉酸とビタミンB12を投与しなかった患者では発生率は8.4%であった。
・葉酸とビタミンB12を投与した患者の4%が癌により死亡したのに対し、葉酸とビタミンB12を投与しなかった患者では死亡率は2.9%であった。
・葉酸とビタミンB12を投与した患者のうち16.1%が何らかの理由で死亡したのに対し、葉酸とビタミンB12を投与しなかった患者の死亡率は13.8%であった。
・ビタミンB6単独では副作用は認められなかった。
・葉酸とビタミンB12を投与した患者において、癌発生率の上昇を示した全体のうち主だったものは肺癌であった。その他、発生率が増大した癌は、大腸癌、前立腺癌、血液腫瘍であった。

コメント:JAMA同巻の論説でこの試験についての示唆内容が述べられている[2]:
著者らは、長期観察対短期観察の重要性を強調している。また、米国での葉酸強化食物中の葉酸値は、ノルウェーでの試験で発表された葉酸値よりもはるかに低く、本試験は米国における葉酸強化食物の重要性を無効であるとするものではない。さらに著者らは、癌予防のためには健康的な食事の摂取、体重増加の予防、禁煙などが重要であることを強調している。しかしながら、これらの試験や他の試験は、健康を向上させるために大量のビタミン類を投与、摂取することの危険性を指摘している。

参考文献:
[1] Ebbing M, Bonaa KH, Nygard O, et al. Cancer incidence and mortality after treatment with folic acid and vitamin B12. Journal of the American Medical Association. 2009;302:2119-2126.
[2] Drake BF, Colditz GA. Assessing cancer prevention studies-a matter of time. Journal of the American Medical Association. 2009;302:2152-2153.


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翻訳担当者 山下裕子

監修 朝井鈴佳

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