体脂肪とがんリスク:8種類のがんで新たに関連性が指摘
英国医療サービス(NHS)
「医療専門家が、新たに8種類のがんを過体重または肥満に関連づけ、肥満が関連するがんは5種類から13種類へと、3倍近くに増加した」とDaily Mail紙は報じている。
これは、がんのリスク要因を調査する世界中のがん専門家のグループである国際がん研究機関(IARC)の最新の知見である。
この報告の根拠は?
冒頭の文章は、査読されたNew England Journal of Medicine誌に発表された報告書に基づく。
この報告書は正確には新しい研究ではなく、過去に発表された、体重とがんとの関連性に関する研究のレビューである。
今年4月にエビデンスのレビューのために集まった世界各国のがん研究者ワーキンググループが出した結果である。
彼らは、2002年にグループが発表した前回の結果を更新する必要性を調査するためにヒト、動物、基礎科学における研究をレビューした。
グループの新たな報告書は「体脂肪が過剰でない場合は大半のがんのリスクが低くなる」と結論づけ、また、体重を意識的に減らすことはがん予防に役立つとも言っている。
彼らは、健康的な体重であることはがんのリスクを減少するとの結論に「十分な」エビデンスがあるがん13種類、「限定的な」エビデンスがあるがん3種類、エビデンスが「不十分な」8種類を特定した。
体重との関連性に十分なエビデンスがあると特定されたがんは、以下の通りである。
- 食道がん
- 胃噴門部がん-胃がんの一種
- 大腸がん
- 肝臓がん
- 胆のうがん
- 膵臓がん
- 閉経後の女性における乳がん
- 子宮がん
- 卵巣がん
- 腎臓がん
- 髄膜腫-脳腫瘍の一種
- 甲状腺がん
- 多発性骨髄腫-白血球のがん
リスクの上昇には幅があり、BMI(肥満度指数)が最も高い群を正常体重群と比較した場合、食道がんではほぼ5倍(相対リスク〔RR〕4.8;95%信頼区間〔CI〕3.0~7.7)、閉経後の乳がんでは10%上昇(相対リスク1.1;95%信頼区間1.1~1.2)であった。
がんと体重とを関連づけるものは何か?
かねてから科学者らは過体重の人が健康的な体重の人と比べて特定のがんのリスクが高いことを認識していた。
健康的な体重は通常、BMI18.5~24.9と定義される。BMIが25~29.9の場合は過体重、そして、BMIが30以上である場合は肥満と分類される。BMIは体重と身長から計算する。
過体重とがんを関連づけるエビデンスのほとんどは疫学的調査によるものであり、大規模な群を調査し、健康的な体重の人々と比較して、標準以外の体重の人々がどの程度の割合でがんと診断されたかを計算している。
これらの研究の多くは、喫煙するか、運動をするか、食事は健康的であるかなど、がんのリスクに影響を与えるほかの要因も考慮するようにしている。
しかし、ほかの要因をすべて考慮に入れて説明するのは困難であるため、個々の研究で、過体重ががんの原因であると示すことができるわけではない。
しかしながら、さまざまな研究を合わせてレビューし、その結果、過体重の程度が高いほど、がんになりやすいことが示されれば、体重とがんとの因果関係が証明される可能性が高くなる。
2002年のIARCの報告では、過体重により5種類(*)のがんリスクが上昇することを示す十分なエビデンスがあるとのことであり、今回報告された13種類にその5種類はすべて含まれている。
その後、ほかの研究で上記エビデンスが裏付けられたため、IARCは現在、これら13種類のがんの特定に十分なエビデンスがあると考えている。
どのように体重とがんはからだに影響するか?
過体重の状態は心臓発作または脳卒中になる可能性がより大きいといった、数多くの健康リスクがあるとともに、上記のがんリスク上昇にも関連している。
健康的な体重を維持する最も簡単な方法は体重が増えないようにすることであるが、すでに体重オーバーの人にはダイエットと運動がより健康的な体重の達成に役立つかもしれない。
かかりつけ医に相談するか、当サイトの12-week plan to lose weight(健康的な食事と運動による12週間減量計画)を参照してほしい。
がんのリスクに影響する要因は体重だけではない。がんを完全に予防できると証明された方法はないが、下記のことを実行すれば、がんになるリスクを下げることができる。
- 健康的でバランスのよい食事をとる
- 健康的な体重を維持する
- 積極的に運動をする
- アルコールの摂取を控える
- 喫煙をやめる
- 太陽光によるダメージから皮膚を守る
(*)監訳者注:原文に誤りがあったと思われ、発表元であるIARCのプレスリリース(https://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2016/pdfs/pr247_E.pdf)を確認の上、修正しています。
脂肪とがんの関連性は何か? IARCは、なぜ過体重ががんを引き起こす可能性があるのかについて調査した。 彼らは、体重の影響を受ける性ホルモンと炎症ががんの形成に関与しているという有力なエビデンスを見つけた。 また、ラットでの実験から得たエビデンスを検証した結果、カロリー制限食を与えたラットはさまざまながんを発症する可能性が低く、肥満のラットはがんになる可能性が高いことが判明した。 |
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