がん治療中の心身フィットネスにより入院や受診が減少

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCOの見解から引用

「本試験によって、オンラインの心身フィットネスプログラムは、がん患者に支障なく提供することができ、治療に伴う合併症を軽減することが明らかになりました。この種のプログラムを規模を大きくして実施できるかどうかを評価するために、今後の研究が必要です」とASCO専門家のCharu Aggarwal医師(MPH、ASCOフェロー)は述べた。

試験要旨

目的積極的治療を受けているがん患者に対する支持療法
対象者乳がん、胸部がん、婦人科がん、頭頸部がん、メラノーマ(悪性黒色腫)の患者200人
主要な結果オンラインでの心身フィットネスプログラムにより、積極的ながん治療を受けている患者において、予定外の入院、入院日数、および緊急ケアの受診がそれぞれ半減した。
意義・エビデンスによれば、心身フィットネスはがん治療に伴う一般的な症状を改善する。
・がん患者は運動することが奨励されるが、多くの患者は治療中のニーズに合ったクラスや自宅で参加できるクラスを見つけることが難しいかもしれない。 

新たな介入研究において、オンラインの心身フィットネスクラスへの参加により、入院、入院期間、および緊急ケアの受診が半減することが明らかになった。この研究は、10月28日−29日にボストンで開催される2023年米国臨床腫瘍学会(ASCO)のクオリティ・ケア・シンポジウムで発表される。

試験について

「エビデンスによれば、フィットネス、瞑想、ヨガ、太極拳、音楽療法は、倦怠感、不眠、不安、抑うつなど、がん治療に伴う一般的な症状を改善することが分かっています。しかし、がん患者が快適な自宅にいながらこのような活動に参加する方法を検討した研究はありません。さらに、自宅でこれらの療法を実践することによって、患者が入院する可能性を減らせるかどうかを評価した研究はありません」と、本試験の筆頭著者でメモリアルスローンケタリングがんセンター統合医療サービス部長のJun J. Mao医師、MSCEは述べた。

この新規バスケット試験では、乳がん(36.5%)、胸部がん(24.5%)、婦人科がん(21.5%)、頭頸部がん(12.5%)、メラノーマ(5%)に罹患し、積極的ながん治療を受けている間に中等度以上の倦怠感を訴えた患者200人を、週一回のオンラインでの心身フィットネスクラス(IM@Home、Integrative Medicine at Home)にライブで参加する群と、標準治療に事前録音のオンライン瞑想プログラムを加えた通常ケア強化版(EUC)を受ける群にランダムに割り付けた。患者の年齢中央値は59.9歳、女性90.5%、男性9.5%、白人77.5%、黒人9%、アジア系7%、非ヒスパニック系89%であった。

主な知見

IM@Home群の患者は、EUC群の患者に比べて入院が少なく(5.1%対13.9%)、入院日数も少なかった(患者1人当たり5.4日対9.4日)。

緊急ケアの受診を必要とした患者の割合は、IM@Home群9.1%対EUC群11.9%と両群で同程度であったが、患者1人当たりの緊急受診回数は、IM@Home群ではEUC群に比べほぼ半数であった。

著者らによると、IM@Home群に参加した患者は、通常ケア群と比較して、倦怠感、心理的苦痛、および身体症状が有意に少なかった。

次のステップ

研究者らは、IM@Homeの介入により、患者によるがん治療の遵守(adherence)、医療の利用、および特定の腫瘍型における生存率を改善できるかどうかを判断する試験を企画中である。また、よりサンプル数の多い試験で本試験の結果を再現し、この種の介入がどのように患者の転帰および医療システムの成果を改善できるかをさらに研究する予定である。 

本研究は、メモリアルスローンケタリングがんセンターおよび米国国立衛生研究所のNCI Cancer Center Support Grantから資金提供を受けた。

  • 監訳 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
  • 翻訳担当者 奥山浩子
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  • 原文掲載日 2023/10/23

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