スタチンはC型肝炎における肝癌のリスク低減と相関

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慢性C型肝炎ウイルスに感染した人は、スタチン(コレステロール低下薬)を摂取することで肝癌を発症しにくいという結果が、Journal of Clinical Oncology誌に掲載された[1]。

肝臓は人体で最大の臓器であり、ブドウ糖、タンパク質、ビタミン、脂質の分泌、胆汁産生、ヘモグロビンの処理、非常に多くの物質の解毒など500以上の機能を果たしている。肝細胞癌(HCC)は原発性肝癌の中で最も多くみられる。また、C型肝炎は肝臓の感染症で、肝癌の主原因の一つである。

スタチンはコレステロール低下薬であり、米国で最もよく処方される。いくつかの試験で、スタチンは、心血管系への作用に加え、前立腺癌や大腸癌など、ある種の癌のリスクを減らすうえで有用なことが示唆されている[2][3]。しかしながら、他の試験では、スタチンのリスク低減についての証拠はほとんど示されなかった[4][5]。

スタチンとC型肝炎(HCV)患者の肝癌との関連性を評価するため、研究者らは、台湾国立健康保険研究データベースに登録されている260,864人のHCV感染患者を対象に集団ベースのコホート研究を行った。1999年から2010年まで患者を追跡し、その期間に35,023人、約13%の患者がスタチンの処方を受けていた。

追跡期間中に、このコホートの27,883人で肝癌が認められた。スタチンを使用した35,023人のうち、1,378人で肝癌を認め、スタチンを使用していない225,841人では、26,505人が肝癌を発症した。患者の年齢、性別、およびその他の疾患を考慮したところ、スタチン使用者では非使用者と比して、癌の発症がおよそ半分となることが明らかになった。高用量のスタチンや長期使用では、癌のリスクのさらなる低下と関連していた。

研究者らは、C型肝炎の患者におけるスタチンの使用は肝癌のリスク低減と関連があると結論付けたと同時に、スタチンが癌を予防することの証明ではないとも指摘した。データは肝癌予防のためにスタチンを処方する根拠として十分でない。しかし、この患者群において、スタチンはいかなる合併症とも関連性を認めなかったことから、医師らはC型肝炎の人に対するスタチンの処方を避ける必要性はないことを意味する。

参考文献:
[1] Tsan YT, Lee CH, Ho WC, et al. Statins and the risk of hepatocellular carcinoma in patients with hepatitis C virus infection. Journal of Clinical Oncology. 2013; 31(12): 1514-1521.
[2] Hamilton RJ, Banez LL, Aronson WJ, et al. Statin Medication Use and the Risk of Biochemical Recurrence After Radical Prostatectomy: Results From the Shared Equal Access Regional Cancer Hospital (SEARCH) Database. Cancer [early online publication]. June 28, 2010.
[3] Gutt R, Tonlaar N, Kunnavakkam R, et al. Statin use and risk of prostate cancer recurrence in men treated with radiation therapy. Journal of Clinical Oncology [early online publication]. April 26, 2010.
[4] Bonovas S, Filioussi K, Flordellis CS, Sitaras NM. Statins and risk of colorectal cancer: a meta-analysis of 18 studies involving more than 1.5 million patients. Journal of Clinical Oncology. 2007;25:3462-3468.
[5] Coogan PF, Smith J, Rosenberg L. Statin Use and Risk of Colorectal Cancer. Journal of the National Cancer Institute. 2007;99:32-40.


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翻訳担当者 藤平あや

監修 金田澄子(薬学)

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