マルチビタミンにより癌のリスクが低下する可能性

キャンサーコンサルタンツ 

米国医師会誌(JAMA)に発表された調査結果によると、マルチビタミンを10年以上摂取している健康な男性医師において、マルチビタミンの日常的補給が、癌のリスクをわずかではあるが明らかに低下させることが分かった。

一人の人間が癌になる危険性は、遺伝因子や環境因子あるいは習慣因子に依存している。食習慣や生活習慣は癌の形成に関与する可能性があることから、研究者らは様々な食べ物やサプリメントについて、またそれらと様々なタイプの癌との関係について、評価を続けている。癌に結びつく食事因子を特定することで、癌の防止に役立つ生活習慣や生活上の対策を導くことができる可能性がある。

多くの調査は、ビタミンD、ビタミンB、ビタミンCといった個々のビタミンやカルシウムに焦点を当てており、ビタミンと癌のリスクとの間の関係について一貫した結果は得られていなかった。マルチビタミンは最も一般的な栄養補助食品であり、全米国成人の約3分の1がこれらを摂取しているが、マルチビタミンに対するエビデンスはこれまでほとんどなかった。

研究者らは、50歳以上の米国男性医師14,641人が参加する、Physicians’ Health Study IIと呼ばれる大規模ランダム化二重盲検プラセボ対照臨床試験を実施した。この試験は1997年に始まり2011年6月まで投与と追跡調査が行われた。試験の開始時には、1,312人に癌の既往歴があった。

試験の参加者は無作為に割り付けられ、マルチビタミンかプラセボ薬のパッケージを毎月受け取った。この試験の主要評価項目は全ての癌(非黒色腫型皮膚癌を除く)の罹患であり、副次評価項目は前立腺癌、大腸癌およびその他の部位特異的癌の罹患であった。

11年の追跡調査の後、新たに2,669人が癌を発症していた。このうち1,373人が前立腺癌で、210人が大腸癌だった。研究者らは、マルチビタミンを摂取していた男性で、癌の発症リスクが約8パーセント低いことを見出した。しかしながら、マルチビタミンは、前立腺癌、大腸癌あるいはその他の部位特異的癌には統計学的に有意な効果は認められなかった。さらにマルチビタミン群とプラセボ群との間で、癌による死亡リスクに大きな違いはなかった。

研究者らはマルチビタミンの日常的補給が、全ての癌になるリスクの、わずかではあるが明らかな低下に関係している、と結論付けた。他の栄養補助食品においてもその点は同じだが、マルチビタミンが万能薬ではない、ということに留意することは重要だ。患者は栄養不足にならないようにと、マルチビタミンの摂取を希望するだろうが、最善策については常に医師に相談すべきである。一部の栄養補助食品は特定の患者に禁忌である。例えば、一般的な心臓薬を服用している患者は、ビタミンKを避けなければならない。害でなく助けになるような栄養補助食品を選択するために、医師に相談されたい。

参考文献:
Gaziano JM, Sesso HD, Christen WG, et al. Multivitamins in the prevention of cancer in men: The Physicians’ Health Study II Randomized Controlled Trial. Journal of the American Medical Association. Published early online October 17, 2012. doi:10.1001/jama.2012.14641

(*サイト注:栄養素についての新しい記事はこちら https://www.cancerit.jp/cancer-prevention/nutrient


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翻訳担当者 井上陽子

監修 大野 智 (腫瘍免疫学 早稲田大学/東京女子医科大学)

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