OncoLog 2014年8月号◆ House Call「癌治療後のストレスの管理」

MDアンダーソン OncoLog 2014年8月号(Volume 59 / Number 8)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

癌治療後のストレスの管理

がんサバイバーが治療を終えたとき、脱毛、悪心、痛みをはじめさまざまな副作用に耐える必要はなくなり、ひとつの試練が終わったことになる。一方、人生をその先へ進める準備をするにしたがって、治療の後に来るストレスの管理に助けを要することがある。

よくあるストレスの原因

治療を終えたがんサバイバーのストレスの原因として最も多いのが、再発または新たな癌に対する恐れである。再発への恐れの最も重要な特徴は、その連鎖反応である。ストレスに加え、再発に対する恐れが不安、睡眠障害、疲労を引き起こし、ひいては健康、生活習慣、人間関係に悪影響を及ぼす可能性がある。

がんサバイバーのストレスの原因にはこのほか、人生の新たな一歩を踏み出すこと(多くのがんサバイバーが友人や家族または同僚が自分のことをどのように思っているのかを気にしている)、日常活動をやり遂げる活力不足、および治療の経済的な影響に直面することなどがよくある。若年サバイバーであれば、癌治療による不妊に悩まされることもある。

ストレスを管理する

癌治療後のストレスに対処するための最初のステップが、介護者や医療者に率直に相談することである。サバイバーも介護者もストレスを認識して、理解することができるはずであり、たとえ医療者が指摘しなくても、ストレスについての話合いをいつでも始められるはずである。たとえば、睡眠不足、不安や気分の落ち込みは、医師やソーシャルワーカーに報告すべきストレスの症状である。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのがんサバイバーシップ室長であり、サバイバーシップ研究プログラムのコーディネーターでもある正看護師のGuadalupe Palos博士(公衆衛生学)は、ストレスががんサバイバーの情緒面および精神面の健康にどれほど影響を及ぼすのかを目の当たりにしている。ストレスを感じているがんサバイバーには、ストレスについて話をして、すぐに助けを求めるように助言している。「ストレスの管理は、援助がなければきわめて難しいものです」と話している。

Palos氏は、正しい治療を受けることができるように、心を開いてストレスの症状を話すことが重要であると言う。ストレスを無視したり、他者に助けを求めないことにより癌治療後のQOLが抑えられてしまう可能性がある。Palos氏は、がんサバイバーにはストレスについて話し合うことに気が進まない人もいるとつけ加えた。そのような場合、介護者は他に方法がないか医療者に相談することによって援助することができる。

リソースを探す

がんサバイバーのストレス対処に役立つリソースがいくつかある。支援グループ、オンラインサービス、電話のヘルプライン、ソーシャルワーカー、そして友人や家族がストレスを話し合うことのできる社会的な基盤である。

ソーシャルワーカーは貴重なリソースである。心理学的な評価を行ない、ストレスを低減するのに役立つ方策を見つけてくれる。多くの病院がスタッフにソーシャルワーカーをおいており、全米ソーシャルワーカー協会(National Association of Social Workers)に問い合わせれば、地域のソーシャルワーカーを探すこともできる。

米国癌協会(American Cancer Society)を通じて、支援団体やネットワーク、治療後の健康な生活のためのアドバイス、オンラインのライブチャット、24時間サービスの電話ヘルプラインなどの豊富なリソースを利用することができる。

事前に対処する

Palos氏によれば、がんサバイバーのQOLはストレスを早期に対処することによって改善できる。「身体的な副作用の管理では、臨床医や腫瘍内科医が素晴らしい仕事をしていますが、精神的、情緒的な健康にも注目する必要があります。サバイバーには、きわめてひどい状態になってから対応するのではなく、苦境に陥るのを避けるためにも、事前に対応することをお勧めします」とPalos氏は話した。


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翻訳担当者 ギボンズ京子

監修 太田真弓(精神科、児童精神科/さいとうクリニック院長)

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