女性のがん罹患者と化学物質への暴露量

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)

特定の内分泌撹乱化学物質への暴露が、乳がん、卵巣がん、皮膚がん、子宮がんに関与している可能性が考えられているが、これらのがんを発症した人々の体内では、その特定の内分泌攪乱化学物質の濃度が有意に高いことが示された。

PFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)やフェノール類(ビスフェノールAを含む)などの化学物質への暴露ががんの原因と証明されたわけではないが、これらの化学物質が関与している可能性を示す強い兆候であり、さらなる研究が必要である。

本研究では、特に女性の場合において、長鎖PFAS化合物であるPFDEへの暴露量が多い人は、メラノーマ(悪性黒色腫)と診断されている確率が2倍になることが示された。また、別の長鎖PFAS化合物であるPFNAとPFUAへの暴露量が多い女性の場合、メラノーマと診断されている確率がほぼ2倍になることが示された。

また、本研究ではPFNAと子宮がん診断歴との関連も示された。BPA(プラスチックに使用)や2,5-ジクロロフェノール(染料に使用され、廃水処理の副生成物としても検出される化学物質)などのフェノール類への暴露が多い女性は、卵巣がんと診断されている確率が高かったことも示された。

本研究はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)、南カリフォルニア大学(USC)、およびミシガン大学の研究チームによって行われた。これらの大学は、National Institutes of Health-funded Environmental Health Sciences Core Centersの一員である。

研究チームは、米国全国健康栄養調査(NHANES)に参加した1万人超の血液と尿のサンプルデータを用いて、現時点におけるフェノール類およびPFASへの暴露とがん診断歴との関連性を調査し、人種的・民族的差異についても調査した。

本研究は2023年9月17日、Journal of Exposure Science & Environmental Epidemiology誌に掲載された。

「これらの知見は、PFASとフェノール類を、女性のがんリスクに関する環境リスク因子として考慮する必要があることを強調しています」と、本研究の上席著者であるMax Aung博士は述べた。同氏は、UCSFの生殖保健学と環境に関するプログラム在籍中に本研究を行い、現在はUSCケック医科大学の環境衛生学准教授となっている。

PFASは環境中のいたるところに存在する

PFASは、テフロン加工のフライパン、防水加工の衣服、防汚加工のカーペットや布地、食品の容器包装などの製品を通じて、水環境、食品、人間を汚染してきた。PFASは分解されにくく、環境中に何十年も残存することから、しばしば「永遠の化学物質」と呼ばれる。PFASはまた、人の体内においては数カ月から数年の間残留する。

「これらのPFAS化学物質は、女性のホルモン機能を攪乱すると考えられます。これは、女性のホルモンに関連するがん罹患の確率を高めるメカニズムの一つである可能性があります」。本研究の筆頭著者であり、ミシガン大学公衆衛生大学院研究学部の研究者であるAmber Cathey博士は語った。

また、人種による差異も確認された。各種のPFASと卵巣がんおよび子宮がんとの関連性は白人女性でのみ認められ、MPAHと呼ばれるPFASおよびBPFと呼ばれるフェノール類と乳がんとの関連性は、非白人女性でのみ認められた。

研究者チーム「米国環境保護庁(EPA)がPFASを化学物質の一分類として規制すべき」

「全米の地域社会がPFAS汚染問題に取り組んでいるところですが、今回の研究結果は、PFAS暴露量の削減に取り組む政策立案者を支持する更なるエビデンスとなりました」と、UCSFの教授で、生殖保健学と環境に関するプログラムのディレクターであり、本研究に資金を提供したUCSF EaRTHセンターの所長であるTracey J. Woodruff博士、公衆衛生学修士は述べた。「PFASには何千もの化学物質があるため、暴露量を減らす一つの方法は、米国環境保護庁が化学物質を一つずつ規制するのではなく、PFASを一群として規制することです」。

本研究は、UCSF EaRTHセンターおよびUCSFヘレンディラーファミリー総合がんセンターから資金提供を受けた。

  • 監訳 橋本 仁(獣医学)
  • 翻訳担当者 藤永まり
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  • 原文掲載日 2023/09/17

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