輸血から癌になるリスクはない

キャンサーコンサルタンツ
2007年5月

スウェーデンとデンマークの研究者らは、献血から5年以内に癌を発症した人たちからの血液を輸血したとしても、受血者は癌にならないと結論づけた。この研究の詳細は、2007年5月19日号のランセット誌上にて発表された。

輸血用血液から採取された生きている癌細胞は、受血者体内で癌を発生させる可能性がある。癌が針刺しや手術器具により健康な人へうつるという不確かな例もある。また、免疫抑制のある患者は注入された同種(異型)の癌細胞に、より感受性が高いかもしれないという理論上の可能性も存在する。さらに、供血者と受血者がかなりの割合でHLA表現型が同じであった場合、一般もしくは免疫抑制の患者では輸血により癌はうつりやすいかもしれないという可能性もある。

これらの疑問を解明するため、スウェーデンとデンマークの研究者らは、354,094人の輸血受血者の予後について調査した。12,012人の輸血受血者は、前癌状態だった供血者からの血液製剤に曝露した。高度な統計的手法を用い、これらの著者らは前癌状態の供血者からの血液を受けた受血者も、前癌状態ではない供血者から血液を受けた受血者も、予後には大きな差がないと証明することに成功した。

コメント:
これらは輸血を受ける受血者に、輸血によって癌がうつることはまずありえないと再度保証する上で重要なデータである。しかし、条件が適合した場合では癌または白血病が絶対にうつらないということを意味しない。癌が個人から個人にうつりにくい一番の理由は、宿主、ドナー共に免疫が抑制されていて、ある程度の組織適合性が存在しない限り、宿主の免疫系がドナーの白血球そしておそらく癌細胞も即時に根絶するからである。この最たる例は、供血者と受血者が同じHLAタイプであり、さらに受血者が免疫抑制状態の場合、輸血中に存在するリンパ球によって起こる移植片対宿主病(Graft-versus host desease, GVHD)である。

参考資料:
Edgren G, Hjalgrim H, Reilly M, et al. Risk of Cancer after blood transfusion from donors with subclinical cancer; a retrospective cohort study. The Lancet. 2007; 369:1724-1730.


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翻訳担当者 根本 明日香

監修 瀬戸山 修(薬学)

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