XMRVおよび関連ウイルスは、健常人供血者と慢性疲労症候群患者のどちらの血液検体でも確認されず
NIHプレスリリース
2011年9月22日
HHSの助成による研究は、輸血用血液の安全供給に対するこれらのウイルスの影響を検討する取り組みの一環である
慢性疲労症候群患者の血液検体中にある種のウイルスが存在することが先の研究により示唆されていたが、米国保健社会福祉省(HHS)の助成による一研究において、この結果の妥当性を確認することができなかった。この新しい研究では、先にXMRVが陰性とされた健常人の血液検体からも、ウイルスは検出されなかった。
HHSの助成による本研究では、異種指向性マウス白血病ウイルス関連ウイルス(XMRV)および関連する多種指向性マウス白血病ウイルス(P-MLVs)といったウイルスを検出する試験技術の正確度が調査された。先の研究結果が正しいかどうか検討するためのこのような追試は、科学の世界では一般的である。新たな研究結果により、先の結果は、汚染あるいは偽陽性による試験の誤りである可能性が示唆された。
XMRVと慢性疲労症候群との関連性に関する初期の報告を受けて、HHSは、XMRV/P-MLVsの検出性能、および輸血用血液中のこれらのウイルスの陽性率および輸血による感染の可能性の調査に着手した。これらのウイルスが慢性疲労症候群患者あるいは健常人ドナーに存在することが証明されれば、輸血行為自体が危険にさらされるという懸念が起こる。この新たな結果は、2011年9月22日にScience Express電子版に掲載された。
「本研究結果によって、最近の他の研究結果とあわせ、これらのウイルスがアメリカの輸血事業の安全性に脅威を及ぼすことはないと安心しました」。米国国立衛生研究所の一部である国立心肺血液研究所(NHLBI)理事長代理Susan B. Shurin医学博士は言う。「これらのデータが加わって、現時点では献血ドナーに対してこれらのウイルスのスクリーニングを行う必要はないという証拠が多く揃いました」。
新たな研究では、健常人ドナー、および先にXMRVあるいはP-MLV陽性と診断された慢性疲労症候群患者14人とXMRV陽性と判定されたが慢性疲労症候群ではない1人から血液検体を採取した。また、先の研究でXMRV/P-MLVが検出されなかった健常人ボランティアの検体も使用された。
検体は由来がわからないように盲検化され、9カ所の試験施設に送付された。本研究は、HHSの機関に助成された試験施設、およびAbbott Laboratories社(イリノイ州アボットパーク)、GenProbe社(サンディエゴ)、Whittemore Peterson Institute(WPI;ネバダ州、リノ)で行われた。
9カ所の試験施設は、同一の新規血液検体群について、XMRV/P-MLVの核酸、ウイルスの複製(細胞内でのウイルス自己再生の有無)、および、これらのウイルスに対する抗体を検出する試験を行った。先にXMRVおよび慢性疲労症候群の関連を報告した2カ所の試験施設からは、XMRVが検出された検体がある旨報告された。しかし、これらの試験施設では、慢性疲労症候群患者およびXMRV陰性既知の健常人ドナーの検体からほぼ同率でXMRVが検出された。陽性と判定された検体を同じ試験施設、異なる試験施設で再試験した結果XMRVは検出されず、これらの検体はXMRV陰性であることが強く示唆された。これは、陽性判定が偽陽性であったことを示す、つまり、この結果は、本当は陰性なのに陽性と判定されていたことを示唆している。
試験技術の正確さを調査し、XMRVが輸血事業に影響する可能性を検討するために、HHSは2009年12月に血中XMRV研究ワーキンググループを設立した。NHLBIが主導となるワーキングクループには、HHSの機関である、衛生担当事務次官室、NIHの一部である米国国立癌研究所(NCI)、NIH臨床センター、さらには米国疾病管理予防センター(CDC)、米国食品医薬品局(FDA)が含まれる。本研究は、血液検体中のウイルス検出の最善の方法を検討するワーキンググループの取り組みに基づくものである。
XMRV/P-MLVsを検出する試験法の性能を検討するために11種の核酸、5種の抗体、3種の培養試験が用いられた。また、いくつかのマウスの系統や細胞株にXMRVまたはその”祖先”が存在した可能性があるため、マウスDNA混入の証拠も調べられた。
2009年に、WPIの研究者がXMRVと慢性疲労症候群に関連がある可能性を報告し、2010年6月には、非営利の血液銀行協会であるAABBが、採血センターに対して、慢性疲労症候群の患者が献血しないように勧告した。
しかし、昨年末までには、慢性疲労症候群患者検体におけるXMRV陽性例は、試験施設における汚染であった可能性を示唆する証拠が出てきた。これが新たな研究の信頼性を落とさないように、試験施設の汚染や検体汚染を避けるために多大な労力がついやされた。
本論文の筆頭著者であるGraham Simmons 博士を擁するBlood Systems Research Instituteが、血液検体を収集し、参加した試験施設に配送した。下記の試験施設および研究者が担当研究班である。
- Abbott社(分子研究所と診断薬研究所の2カ所の施設)– John Hackett Jr.、Ning Tang
- CDC — William M. Switzer、Walid Heneine
- FDA — Indira K. Hewlett、Jiangqin Zhao
- FDA — Shyh-Ching Lo/NIH臨床センター(メリーランド州ベテスダ)Harvey Alter
- Gen-Probe社 — Jeffrey M. Linnen, Kui Gao
- NCI — Mary F. Kearney/タフツ大学(ボストン)John M. Coffin
- NCI — Francis W. Ruscetti
- WPI — Judy A. Mikovits, Max A. Pfost
現在、別のチームにおいて、コロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院のW. Ian Lipkin医学博士が150人の慢性疲労症候群患者および150人の類似の症状をもつが健常である新鮮血検体を試験する研究を率いている。この取り組みでは、事務局が検体を処理し、盲検化して、XMRV、MLVあるいは関連するウイルスの検出試験を行うためにFDA、CDC、WPIの試験施設に送付している。
参加試験施設中1カ所がある検体をウイルス陽性と判定した場合、その結果の信憑性を検証するために再試験が行われる。ある試験施設で陽性と判定され、他の施設では陰性であった場合、同じ検体を再試験のために新たな盲検化コードで再送付する場合がある。2011年末までには研究結果が得られる見込みである。
XMRVの背景を知りたい場合はこちらを参照のこと。
詳細、またはNHLBIの専門家へのインタビューの予約は、NHLBI 広報301-496-4236 またはnhlbi_news@nhlbi.nih.govに連絡されたい。NCIの専門家へのインタビューは、NCIのメディア広報窓口 301-496-6641またはncipressofficers@mail.nih.govに連絡されたい。
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