新たな免疫プロセスの発見が疼痛治療の改善につながる可能性
マウスの免疫細胞において、細胞ストレスに応答することで知られている分子経路が、痛みを誘発する分子(Cox-2およびmPGES-1)をも生成していることが、ダナファーバーがん研究所、ワイルコーネル医科大学、ウェイクフォレスト大学医学部の新たな研究により明らかになった。研究者らは、この経路を遮断することにより、痛みを軽減できる可能性があることを見出した。
Science誌の電子版で公開された本調査結果は、研究チームがIRE1α-XBP1経路の研究していた際に明らかになった。この経路は通常、タンパク質および脂質の産生に関与する細胞構造である小胞体において、異常タンパク質の有害な蓄積から細胞を保護するのに役立つ。IRE1α-XBP1経路の活性化が疼痛を促進するという発見は、広く使用されているオピオイド鎮痛薬に関連した深刻なリスクを回避できる疼痛管理の新しいアプローチにつながる可能性がある。
「これは、より安全で効果的な新しい疼痛管理戦略への道を開く可能性を秘めた有望な発見であり、公衆衛生の改善のために非常に重要だ」と、共著者でダナファーバーがん研究所長兼CEOであるLaurie H. Glimcher医師は述べた。「この発見は、免疫システムの役割をより深く理解することで、疼痛管理から、がんや長年治療法がなかった他の病気に至る多くの人々のより良い予後を約束する可能性を見出した一例である」。
「IRE1α-XBP1経路の活性化が免疫細胞の代謝プロセスを制御し、プロスタグランジンと呼ばれる痛みを誘発する分子の産生を可能にすることを発見した」と、主任著者であるワイルコーネル医科大学のJuan Cubillos-Ruiz医師は述べた。
研究者らは、IRE1α-XBP1経路の成分を欠く免疫細胞で炎症反応を引き起こしたときにこれらの発見をし、これが細胞内の他のタンパク質の発現をどのように変化させたかを分析した。プロスタグランジンの産生に不可欠な2つの酵素、Cox-2およびmPGES-1が、IRE1α-XBP1経路を欠く免疫細胞で減少することを発見した。
また、免疫細胞でのIRE1α-XBP1経路の活性化が、痛みの永続化に関与するサイトカインと呼ばれる分子の産生を促進することを発見した。この発見は、炎症性疾患を持つ人やある種の外科手術を受けた人が慢性疼痛を発症する原因の解明に役立つかもしれない。
IRE1α-XBP1経路の遮断が痛みの軽減に役立つかどうかを調べるため、研究チームは共著者であるノースカロライナ州ウィンストンセーレムにあるウェイクフォレスト大学医学部麻酔科の准教授であるEdgar Alfonso Romero-Sandoval医師に協力を求めた。Romero-Sandoval医師らは、内臓痛や術後疼痛を模倣したモデルで、免疫細胞にIRE1α-XBP1経路を選択的に欠くように設計されたマウスの痛みが少ないことを実証する実験を行った。
また、IRE1α-XBP1経路をブロックする実験段階の低分子阻害剤であるKIRA6とMKC8866もマウスの痛みを軽減することを発見した。
「免疫細胞でプロスタグランジン産生が促進される新しいメカニズムを特定した」とRomero-Sandoval医師は述べた。「この経路を無効にすると、痛みが軽減されるだけでなく、より早期に痛みからの回復が期待される」。
Romero-Sandoval医師は、現在も続くオピオイド危機のために、速やかに痛みを治療する新しい方法を発見することが特に重要であると述べた。彼は、この非常にターゲットを絞ったアプローチにより、オピオイドや抗痙攣薬など神経細胞を直接標的とする疼痛治療薬や、グルココルチコイドなど免疫細胞の活性を抑制する薬剤で起こる有害な副作用の一部を回避できると指摘した。
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