うつ病治療でがん患者の生存率改善せず
うつ病の管理は、がん患者のQOLに対し有益な効果があるため、重要であることには変わりはない
欧州臨床腫瘍学会(ESMO)
Depression Care for People with Cancer programme(がん患者のうつ病治療プログラム)は、がん患者のうつ病および生活の質(QOL)の改善に非常に有効であるが、SMaRT Oncology-2試験およびSMaRT Oncology-3試験の全死因死亡に関する長期データによると生存率に対する有意な効果は認められなかった。英国、オックスフォードにあるWarneford Hospitalを拠点とするオックスフォード大学精神医学部Psychological Medicine ResearchのMichael Sharpe教授が率いる研究者らは、2018年3月12日付Lancet Psychiatry誌に研究結果を発表した。
関連コメントで、英国、レスターにあるレスター大学レスター大学病院のAlex Mitchell氏は、うつ病がん患者は、うつ病でないがん患者と比較して、特定のがんの罹患率が高く、予後が不良であることが観察研究で示されていると説明した。
がんに合併するうつ病は、がん患者の生存率悪化に関連することがわかっているが、うつ病治療により生存率が改善するかについては不明であった。過去に研究チームは、予後が良好ながん患者を対象としたSMaRT Oncology-2試験、および肺がん患者を対象としたSMaRT Oncology-3試験で、合併する大うつ病の軽減にうつ病治療プログラムが効果的であることを認めている。研究者らは最新の解析で、彼らの治療プログラムが生存率に対しても効果的であるかについて検証した。
両試験とも、スコットランドにあるがんセンター3施設およびそれらに関連する診療所において実施された。大うつ病の外来がん患者を、がん患者向けうつ病治療(DCPC)プログラム群と通常治療群に1:1の割合で無作為に割り付けた。年齢、原発がん、性別による層別化法および最小化法にて割り付けを行った。研究チームは、2015年7月31日に打ち切られた全死因死亡に関する長期データを入手し、試験結果として生存率を解析した。コックス比例ハザードモデルを用いて試験ごとの未調整ハザード比(HR)を算出し、メタ解析(固定効果モデル)で対数HRを統合した。
SMaRT Oncology-2試験に500人、SMaRT Oncology-3試験に142人の総計642人の患者が登録された。追跡期間中央値は、SMaRT Oncology-2試験では5年、SMaRT Oncology-3試験では1年であった。試験期間中、SMaRT Oncology-2試験患者の27%およびSMaRT Oncology-3試験患者の80%が死亡した。
全追跡期間中、SMaRT Oncology 2試験(HR 1.02、p = 0.93)およびSMaRT Oncology-3試験(HR 0.82、p = 0.28)の両試験において、生存率に対するDCPCプログラムの有意な効果は認められなかった。統合HRは0.92であった(p = 0.51)。
生存率に対する効果は認められなかったものの、QOLに対し有益な効果があるためうつ病の管理は依然として重要であると著者らは結論付けた。
本プログラムは、NIHR CLAHRC Oxford、キャンサーリサーチUK、Chief Scientist Office of the Scottish Governmentの資金提供を受けた。
参考
Mulick A, Walker J, Puntis S, et al. Does depression treatment improve the survival of depressed patients with cancer? A long-term follow-up of participants in the SMaRT Oncology-2 and 3 trials. Lancet Psychiatry;Published online 12 March 2018. DOI: https://doi.org/10.1016/S2215-0366(18)30061-0
Mitchell AJ. Why doesn’t depression treatment improve cancer survival? Lancet Psychiatry; Published online 12 March 2018. DOI: https://doi.org/10.1016/S2215-0366(18)30086-5
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
がん緩和ケアに関連する記事
遠隔医療によるがん緩和ケアは患者のニーズに合う
2024年11月15日
がん患者による医療用大麻の使用増加に対応を迫られる腫瘍医たち
2024年11月3日
複数の研究結果によると、がん治療を受けている人の約20%から40...
ポンセグロマブはがん悪液質治療に大変革をもたらすか?
2024年11月14日
悪液質の特徴的な徴候は...
オランザピンは化学療法中の吐き気を軽減しQOLを改善
2024年10月22日