放射線腫瘍医と緩和ケア専門医が共同する革新的な取り組みによって、進行がんの患者の緩和ケアが向上

この要約には抄録にない最新のデータが含まれています。

ASCOの見解

「この研究は治療の全期間における緩和ケアの重要性を強調しています」と米国臨床腫瘍学会(ASCO)の専門医で、本日のpresscast(インターネット生放送による記者会見)の司会でもあるDon S. Dizon医師は述べた。「この結果は、歓迎すべきエビデンスです。われわれは分野を越えた協力を通じて、患者により良い緩和ケアを提供することができます」。

放射線腫瘍学が緩和ケアと提携した革新的な診療モデルでは、患者に対しより良い結果を導くと新たな分析結果が示している。ニューヨークのマウントサイナイ医療センターで確立された緩和ケアモデルは、米国内でも数少ないモデルの1つである。この研究は、ボストンで開催される2015年度がんの緩和ケアシンポジウムで発表される予定である。

2013年度の導入以来、このサービスは放射線治療の期間短縮、放射線治療未完遂の減少、入院期間の短縮、および緩和ケアサービス使用の増加をもたらした。

これらの初期経験に基づき、著者らは、放射線治療施行中の進行性がん患者に対する緩和ケアと、緩和医療がよりうまく統合することによって、患者、家族および病院機構に良い結果をもたらすことを示唆している。

患者の全人的評価および家族会議は、新たな総合的診療モデルの中で重要な部分である。これらの始まりの期間に、患者の身体症状への慎重な評価、同様に心理社会的、精神的、ライフスタイル、および論理的関心事に対する評価が行われる。緩和ケアの最終目標は、率直かつ思いやりのある方法で議論される。

家族会議には、放射線腫瘍医、腫瘍内科医、緩和ケア専門医に加え、社会福祉士、看護師、牧師、および家族らの代表者が参加し、患者の意思決定に極めて重要な役割を果たす。

「われわれの研究はがん治療での一致団結した協力の重要性を立証します。緩和に関わる放射線腫瘍医として、疼痛に対処することはわれわれがすべき仕事のごく一部にすぎません。われわれの役割は、優先事項をはっきりさせ治療に現実的な期待を持つ一助となる対話に、患者や家族を引き入れることです。緩和ケアとの連携で、われわれのケア計画に目標と優先度を組み込むことができます」と本研究の統括著者で、マウントサイナイ医療センター放射線腫瘍学および緩和医療の助教であるKavita Dharmarajan医師は述べた。「われわれが一致協力する時、患者は腫瘍のみならず一人の人間に焦点を当てたより質の高い緩和ケアを受けることができます」。

このサービスモデルは、緩和目的に放射線治療を受ける、あらゆるタイプのがん患者全員が利用可能であり、骨、脳、肺、骨盤、またはその他の臓器の転移への放射線治療を受けている患者も利用できる。現在の研究では、有痛性骨転移の患者に焦点が当てられている。

研究者らは、有痛性骨転移に緩和放射線治療を受けた進行性がん患者のカルテを分析した。この研究では、新サービス開始前に治療を受けた患者175人および新サービス開始後に治療を受けた患者161人が対象となった。

この試験では、新たな診療モデルの中で放射線治療をより短く効率的に、賢く使用することが、患者の入院期間を短縮する結果を導いたことが示された。新サービスは入院期間の中央値を18日間から12日間に減少させ、放射線治療の未完遂の割合を半減させた(15%対8%)。新サービスモデルのもとでは、より多くの患者が治療終了後1カ月以内に緩和ケアサービスを受けた(49%対34%)。

著者らによると、これらの知見は重要である。なぜなら、患者の大部分が、特に人生の終焉が近づくにつれ、残されたより多くの時間を病院の外で過ごせることに価値を認めるからである。緩和ケアサービスの支援により、患者と家族が自宅で症状を管理することができる。

新サービスでは単回の放射線治療(1度のセッションでの治療)および短期間の放射線治療(1週間以下の治療)の使用が26%から61%に倍増した。また、患者が放射線治療を完遂する傾向が高まった。

新モデルの開始以前は、多くの患者が2週間以上の期間にわたる放射線治療を受けていた。時には、重症の患者は治療完了後十分に長く生存できず、治療によるベネフィットがみられなかった。このことは、新サービスモデルの開始以前は、放射線治療を長期間受けていた患者において、より頻繁に生じていた。

重要なのは、より短期間での緩和放射線治療の使用増加が、治療によってもたらされる疼痛緩和を損なわなかったことである。実際に、新サービスモデルで疼痛の改善が報告された患者の割合(80%対74%)が、(統計学的な有意差はなかったが)わずかに増大した。

アブストラクトの全文はこちらを参照のこと。

読者のために:

  • 緩和ケア
  • がん治療チーム
  • 進行性がん治療計画
  • 患者および友人との対話
  • 双方向的ながん研究進歩の歴史

2015年度臨床腫瘍緩和ケアシンポジウムのニュース計画チーム

Don S. Dizon医師(米国臨床腫瘍学会[ASCO])、Joseph Rotella医師、MBA、HMDC、FAAHPM(米国ホスピス・緩和医療学会[AAHPM])、Joshua Jones医師、MA(米国放射線腫瘍学会[ASTRO])、Dorothy Keefe医師、MBBS、FRACP、FRCP(国際がんサポーティブケア学会[MASCC])

ニュース計画チームについてはこちらで公開されている。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 河村光栄(放射線腫瘍学・画像応用治療学/京都大学大学院医学研究科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

がん緩和ケアに関連する記事

遠隔医療によるがん緩和ケアは患者のニーズに合うの画像

遠隔医療によるがん緩和ケアは患者のニーズに合う

COVID-19パンデミック中、がん治療における遠隔医療の利用が急増した。この期間中、一時期、対面での医療が制限され、医師の診察の多くがオンラインで行われていた。最近は遠隔医療の柔軟性...
がん患者による医療用大麻の使用増加に対応を迫られる腫瘍医たちの画像

がん患者による医療用大麻の使用増加に対応を迫られる腫瘍医たち

一連の新たな研究により、がん患者におけるカンナビノイド使用の増加と、その傾向が及ぼす影響の一部に焦点が当てられている。 

複数の研究結果によると、がん治療を受けている人の約20%から40...
ポンセグロマブはがん悪液質治療に大変革をもたらすか?の画像

ポンセグロマブはがん悪液質治療に大変革をもたらすか?

治験薬であるポンセグロマブが、がん患者に影響を及ぼすことが多い衰弱症候群である悪液質に対して有効な治療薬になる可能性があることが、臨床試験結果から明らかになった。

悪液質の特徴的な徴候は...
オランザピンは化学療法中の吐き気を軽減しQOLを改善の画像

オランザピンは化学療法中の吐き気を軽減しQOLを改善

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究ASCOの見解「化学療法誘発性悪心(嘔気、吐き気)は、化学療法で非常に多くみられる辛い症状で、患者のQOLが...