終末期患者を見極める方法に関する新たな根拠
この要約には抄録にない最新のデータが記載されています。
ASCOの見解
「どの患者に対し、終末期に関する選択について話し合いを始めればいのかを見極めることは、臨床医にとって難題といえるかもしれません。今回の研究では、ある1つの問への回答が予後予測の重要な指標となり得ることが示唆されています。医師はこの方法を用いることにより、臨床所見を活かし、個々の患者にとって最適なケアを計画することが可能となるでしょう」とASCOの専門家で、本日の報道会見の司会を務めたDon S. Dizon医師は述べる。
新たな研究により、余命1年のがんの患者を見極める簡単な方法について説得力のある根拠が示された。その方法とは「サプライズ質問(Surprise Question)」として知られている方法で、がん種や病期といった因子のみに基づくよりもこの方法を合わせて用いることにより、1年以内にがんで死亡するリスクをより的確に予測できることが判明した。今回の研究はボストンで開催される「ASCO臨床腫瘍緩和ケアシンポジウム2015(2015 Palliative Care in Oncology Symposium)」で発表される。
サプライズ質問は、本人の目標や価値観について話し合うことが有益と考えられる、重篤な患者を見定めるための手段である。患者と医師が、よりこまめに、より早期に話し合うことによってケアやサービスを患者の優先事項や意向に沿わせることが目的である。現在このような患者を見極める体系的な方法で一般的に認められているものはない。
「この患者がこの先1年以内に死亡するとしたら意外に思うか?」というサプライズ質問は1990年代に開発された。しかし現在に至るまで、がん医療の現場におけるサプライズ質問の有用性を裏付けるのに十分な根拠はなかった。
「どの医療領域においても患者が重篤となる可能性はあります。重篤患者の中には完治する患者もいれば不運にも治癒しない患者もいます。今回のわれわれの研究では、腫瘍臨床医がサプライズ質問を用いることで、その後1年以内に死亡した患者の60%に対し終末期であると見極められたことが示されました」とメリーランド州ボルチモアにあるジョンズホプキンス大学医学部の医学生である主研究著者Judith Vickは述べている。
本研究は、ボストンにあるアリアドネ研究所(Ariadne Labs)の研究者が中心となって行われており、ダナファーバー癌研究所の腫瘍医、診療看護師(nurse practitioner)、医師助手(physician assistant)などの腫瘍臨床医療従事者76人が登録されている。この76人は「アリアドネ研究所による包括的な患者中心の重篤疾患ケアプログラム(Ariadne Labs’ comprehensive, patient-centered Serious Illness Care rogram)」の第1段階として5000人近い患者に関するサプライズ質問に回答した。
彼らは最善の臨床的判断に基づいて答えを導き出し、約85%の患者に関して「はい、意外に思うでしょう」と回答し、約15%の患者に関して「いいえ、意外に思わないでしょう」と回答した。
サプライズ質問への回答が「はい」とされた患者の95%、「いいえ」とされた患者の62%が実際に1年後も生存していた。2年目に死亡した患者では、サプライズ質問で見極められなかった割合が約40%であった。
サプライズ質問を用いることで1年以内の死亡が予測される多くの患者を見極め、その結果患者と医師は死亡の可能性を見据えた計画を立てることが可能となる。とはいえ、相当多くの患者について見極めに失敗したことから、その要因を知り、より正確な死亡予測手段を開発するために更なる研究が必要である。
そこで、サプライズ質問へどれだけ正確に回答するかについて影響を与える医療者側の特徴、および回答が正確でなかった場合、つまり患者が予測に反して死亡したり生存したりした場合における患者側の特徴を探ろうと研究者たちは計画している。
抄録はfull abstractから参照してください。
参考サイト
- 「緩和ケア」についてはPalliative Care
- 「がんのケアチーム」についてはThe Cancer Care Team
- 「終末期ケア」についてはEnd-of-Life Care
- 「相互に影響し合いながら進展してきたがん研究の歴史」についてはInteractive History of Cancer Research Advances
全ての報道において、ASCO臨床腫瘍緩和ケアシンポジウム2015(THE 2015 PALLIATIVE CARE IN ONCOLOGY SYMPOSIUM)が典拠である旨の表示を要求します。
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