OncoLog 2015年3月号◆House Call「病院チャプレンの役割」

MDアンダーソン OncoLog 2015年3月号(Volume 60 / Number 3)

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House Call「病院チャプレンの役割」

重い病気で入院したことがある人なら誰しも、身体のこと以外にも、立ち向かわなければならないことがたくさんあることを知っている。健康問題にともないがちな感情面や精神面、スピリチュアルな問題に、患者が取り組む手助けをするのが病院チャプレン(牧師)である。

スピリチュアル信仰と病気

病院チャプレンは、特定の宗教に傾倒する信仰だけでなく、あらゆる患者と家族のスピリチュアル(霊的)信仰を尊重する。

スピリチュアリティとは特定の宗教以上のものである、とテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのチャプレンであるCarol Dimmett牧師は説明する。宗教というより、「スピリチュアリティとは、私たちの人生に究極の意味を与える助けとなるものであり、そこから慰めや生きる意味、希望や強さを引き出すことのできる、自分自身よりも大きな存在があることを意識させてくれるものです」。

スピリチュアル信仰をもつことによって、患者が病気にうまく立ち向かうことができることもありますが、さらに重荷になることもあります、とDimmett氏は話す。「チャプレンは、壊れてしまったものに患者が目をやるのではなく、全体像を眺め、それを育もうという気持ちになるように励まします。われわれは、人が自分自身の信仰体系と再びつながり、その信仰を深め、広げるお手伝いをします。それは、つながりと安らぎの感覚を取り戻すのに役立ちます」と同氏は加えた。

チャプレンの仕事

チャプレンの仕事は患者の希望によってさまざまである。チャプレンが病室を訪問して患者を励ますこともあれば、病院スタッフと患者の家族との間の調整役になることもある。

チャプレンは、牧師としてのカウンセリング、支援グループ、危機介入および祈祷の支援をとおして、患者とその家族がスピリチュアルな悩みや精神的苦痛、悲しみ、終末期の問題に立ち向えるように手助けをする。

親身になって聞くことは、チャプレンが患者のためにできる大切なことのひとつであり、それによって患者は辛い経験を聞いてもらい、認識してもらうことができる。Dimmett氏は次のように話す。「苦しい努力、悲しみ、そして喜びを分かち合うことによって親密な関係が生まれ、癒されるようになります。この過程で、患者は自己意識や神仏、病気になる前に自分にとって大切であったものとのつながりを再び取り戻すことができるようになります」。

病院チャプレンは患者の家族にも手を差し伸べる。それは患者が末期であったり、亡くなった時に特に役に立つことがある。チャプレンは、患者との思い出話を聞いたり、一緒に祈ったりして家族を励ます。「祈りの言葉に促され、人は感情を解き放つようになるのです」とDimmett氏は言う。「ベッドのまわりに家族や友人が集まり、時に手を取りあい、心を合わせて祈ることによって、深い悲しみ、寂しさ、怒りを解き放つことができるようになります。家族が加わると、感情を共有して隠すことなく涙を流す場になるのです」。

ほとんどの病院チャプレンが、宗派や宗教を問わず定期的に礼拝も行っており、結婚式、葬式、聖餐式をとり行うこともできる。

チャプレンとその訓練

多くの病院チャプレンと同じく、Dimmett氏は認定を受けたチャプレンである。その資格を得るには、大学院の神学専攻の学位のほか、宗教団体による臨床牧師教育の研修を修了するか、聖職位の授与または任命を受けたあと、仮資格または準資格のあるチャプレンとして2000時間の実務経験を積む必要がある。同氏によれば、MDアンダーソンのチャプレン全員が有資格者である。

病院チャプレンとは、患者やその家族にとって、重い病気にともなうスピリチュアルな苦しみを和らげる手助けをしてくれる人である。

— K. Stuyck

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翻訳担当者 ギボンズ京子

監修 吉松由貴(呼吸器内科/淀川キリスト教病院)

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